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嫁の貰い手がなくなる
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王都に来た翌日、お父様が陛下に報告に行っている間、わたくしは兄達と不安を隠せないまま屋敷で過ごしていた。
お父様がいざとなったら魔の森を抜けて他国へ、なんて言うから、妙に緊張しちゃうわ。
大丈夫かしら? お父様、ちゃんと帰ってくるわよね?
乙女ゲームにはデュランバル辺境侯爵家なんて出てこなかったけど、まさかこの時点でお家おとりつぶしになったりしないわよね?
わたくしのせいでお父様達に迷惑をかけるとか、絶対に嫌よ。
「ツェツィ、大丈夫だよ」
「でも、ハン兄さま。おとうさまの帰りがおそいわ」
「陛下ときっと色々話しているんだよ」
「も、もしわたくしのせいで、何かあったら、皆にもうしわけないわ」
エグエグと涙が出てくるわたくしを、兄達が頭を撫でて慰めてくれる。
そんな状態で過ごす事、数時間。
玄関先が騒がしくなってきたと思い、わたくしはダッシュで自室を出て玄関に向かった。
「おとうさまっ」
そこには疲れた顔をしているけれども、怪我なんかをした様子はないお父様が居て、ほっと一息吐き出す。
「おかえりなさい!」
階段を一気に駆け下りて、ぎゅぅっとお父様に抱き着くと、頭を撫でてくれる感触がして、よかったと涙が出てきた。
後ろから追いかけて来た兄達が、「お帰りなさい」と言いかけて、「ヒュッ」と息をのんだ声に、なんだろうと振り返ると、二人は深々と頭を下げていて、思わず出ていた涙が引っ込んだ。
なんぞ!?
「ああ、そんな堅苦しい出迎えはいらない。今日はお忍び訪問という物だ」
聞こえて来たイケボに、聞き覚えがあるな、と思いつつ、お父様の体から少し離れて、見えなかったお父様の後ろを覗き込むと、どえらい美少年が居た。
いやまて、この顔にはどこかで見覚えがあるような?
「やあ、ご令嬢。私はグレイバール=ジャンビュレング。この国の国王をしている」
隠しキャラキターーーーーー!!!!
いや、なんでいるの? 何しに来たの?
って、自己紹介しなくちゃ。
「デュランバルへんきょう侯爵家が長女、ツェツゥーリア=デュランバルです。初めまして、へいか」
うわぁ、何を考えているかわからない微笑が怖いよぉ。
もしかして、お父様に言ってもらちが明かないから、直接家に乗り込んで来たとか?
ナニソレコワイ。
「陛下、とにかくここではなんですし。応接室にどうぞ」
「そうだな」
お父様がそう言ってわたくしの手を引いて歩いていくから、必然的に一緒に行くことになってるけど、わたくし四歳よ?
陛下と同席しちゃだめでしょ。
それは兄達も思ったのか、心配そうにわたくしとお父様、そして陛下をチラチラと見ながらついてくる。
応接室に入ると、陛下がまず座って、お父様がその正面に、わたくしはお父様の隣に座るように言われたけど、兄達はちょっと所在なさげにソファーの後ろに立っている。
ああああ、兄達を差し置いてわたくしがソファーに座るとか、いくら溺愛されているからって陛下の前ではマナー違反っ。
「さて、私もそんなに時間が取れるわけではないから単刀直入に言う。ツェツゥーリア嬢」
「は、はい」
「君はこの国を滅ぼしたいと思うか?」
「へ?」
何言ってんの、この人。
思わずポカーンと陛下をガン見してしまう。
「えっと、そんなことは、思ってません」
「デュランバル辺境侯爵から話は聞いた。聖王と魔王の加護を受けるなんて、前代未聞。君が少しでもその気になれば、この国なんてあっという間に滅ぼすことが出来る。その自覚はあるか?」
その言葉にブンブンと首を横に振る。
いや、言い過ぎじゃない? 確かにモブにはふさわしくないラスボス的力を貰っちゃったけど、わたくしは単なるモブだし。
「では自覚して欲しい。君が受けた加護とは、そういう物だ。聞いた話によれば、守護者としてつけられた聖獣と魔獣だけでも、王都は一夜で滅ぼされるかもしれない」
「ヴェルとルジャはそんなことしません」
「守護者とは、時として守護対象の意思よりも、護ることに重点を置くこともある」
まあ、守護者だしね。陛下の言う事もわからないでもない。
「……ツェツゥーリア嬢はまだ幼い。感情に任せて動いてしまう時だってあるだろう。だが、そのような力を持ってしまったからには、どうか意志を強く持って過ごしてほしい」
そうだよね。四歳なんて感情持て余す時期だよね。
これから成長して、反抗期だって迎えるかもしれないし。
普通ならな! だがわたくしの精神年齢はアラフィフだ!
モラハラパワハラセクハラに耐えきった、アラフィフの喪女だ!
「えっと、がんばります?」
コテリ、と首を傾げて言うけれど、陛下は微笑を消して一瞬真顔になる。
こ、こわぁ……。美少年の真顔こわぁ。
でも、すぐに微笑を浮かべ直すと、「よかった」と頷いてくれた。
なんかよくわからないけど、大丈夫っぽい?
「本来なら、このように私が君の元に訪ねて来て、君に不自由がないか確認すべきなんだが、生憎これでも忙しい身なんだ」
そりゃあ、国王だもんね。むしろ、なんで今日ここに来たのかの方が気になるよ。
「そこで一つ提案なんだが、定期的に王宮に、私の所に会いに来てくれないだろうか?」
「陛下!? どういうことです!」
「デュランバル辺境侯爵。私にはこの国を守る義務がある。今は心身ともに健やかでいるツェツゥーリア嬢だが、心とは移ろいやすい物。様子を見ておく必要があるだろう?」
「それでしたら、報告をお聞きになればいいではありませんか。陛下の影をつける事も私は承諾しました」
え、わたくしは今初めて聞いたんだけど?
「ああ、その事も話さなければいけないな。ツェツゥーリア嬢、君の護衛として、私の影をつけさせてもらう」
あ、拒否権はないんですね。わかりました。
わたくしがコクリと頷いたのを確認して、陛下の視線がお父様に向かった。
「何も毎日通えと言うわけじゃない」
「当たり前です」
「だが、王都に居る間は……。そうだな、週に一度ぐらいは顔を出してほしい」
陛下の言葉に、お父様が眉間にしわを寄せる。
監視だけならその影とやらで十分よね? 陛下がわたくしを王宮に呼び出す意味ってなにがあるんだろう。
自分の目で確認しないと気が済まないタイプ?
「わ、わたくしは、この国をほろぼしたいなんて思わないし、悪いことも考えません」
「そうであって欲しいと願っているよ」
「……も、もしもわたくしが、その、へいかの所に行くのを嫌がったら、おとうさま達は、ばっせられてしまいますか?」
必死に尋ねるわたくしに、陛下はきょとんとした顔をして、ふっと苦笑した。
「そんな事をするわけがない。まあ、君という存在を得て、デュランバル辺境侯爵家がどう動くかは監視させてもらう事にはなるが」
「わたくしのせいで、皆に迷惑が掛かってしまうのですね」
「「「そんな事はない!」」」
しょんぼりとしたわたくしの声に、お父様と兄達が声を揃えて否定する。
「ツェツィが責任を感じることはない。父として、このような娘を持てたことは誇りなのだから」
「父上の言う通りだよ。ツェツィは何も悪くないよ」
「うんうん。僕達の事よりも自分の心配をするべきだよ」
「でも、わたくしが居なければ、余計な心配をかけることはなかったわ」
「このぐらいどうという事はない」
お父様が務めて明るくそう言ってくれるけど、絶対に嘘だ。
ここ最近、色々駆けずり回ってるのを知っているんだからね。
「……へいか」
「なにかな?」
「言われた通りにします。だから、おとうさま達にはなにもしないでください」
そう言って深々と頭を下げる。
しばらくその体勢でいると、「ふふ」と笑い声が聞こえた。
「君は、年齢の割に物分かりが随分いいね。流石は聖王と魔王に気に入られているだけの事はある」
その声にそろそろと顔を上げると、優しい眼差しがわたくしに向けられていた。
「じゃあ、君の負担が軽くなるように、もう少し条件をだそう。君はどうやら無条件より条件があったほうが安心しそうだ」
「は、はい」
「じゃあまず、私の事はグレイと呼ぶように。私は君の事をツェツィと呼ぶから」
「は?」
「ああ、あとさっきロブルツィア達に砕けた口調で話していたな。私にも今後はその口調を使うように」
「はへ?」
「いいね?」
にっこりと微笑まれたけど、よくないよね?
わたくしはただのモブなのに、陛下を愛称で呼ぶとか何様なの!?
しかも敬語抜きとか、どこまで偉いのよ!
嫁の貰い手がなくなるっ。
「そ、そんなの恐れ多いです」
「私が問題ないと言っているんだ。大丈夫だ」
「へいかにそんな態度を取っているなど知られたら、わたくしのとつぎさきがなくなってしまいます」
「……それに関しては、気にしなくていい」
いや、気にするだろう。
「もし、……君がこの条件を呑んでくれないのなら、そうだな、私が無理にでも時間を取ってこちらに赴こう」
「んなっ」
「そうしたら、ただでさえ苦労を掛けている宰相にさらに苦労を掛けることになるかもしれないな」
腹黒い。幼女相手に腹黒いよこのイケメンっ。
この短時間で、わたくしが人に迷惑をかける事を気にしているって理解したな?
これだから頭のいい奴は嫌なんだよ。
「それで、どうする? ツェツィ」
「ぅ……ぐっ」
「私はツェツィのご機嫌を取らなければいけない立場だからな。ツェツィの自由意思に任せる」
そこで、じゃあ、こっちに通えなんて言えるか。
そもそもどうしてその二択なんだよ。
「ぐ、……グレイ、さまの、ところに、おうとに居る間通います」
「言葉遣い」
「か、かよう、わ」
「よくできました」
ご満悦そうだなっ。わたくしは全然ご満悦じゃないぞ。
「で、でも。およめのもらいてがなくなるから、人前では、ちゃんとけいごで話します、……話すわ」
「……まあ、淑女教育も必要だからな。そこは妥協しよう」
将来の為にも、なんて聞こえたけど、わたくしの将来を心配するのなら、モブのわたくしにこれ以上変な設定を付与しないでっ!
お父様がいざとなったら魔の森を抜けて他国へ、なんて言うから、妙に緊張しちゃうわ。
大丈夫かしら? お父様、ちゃんと帰ってくるわよね?
乙女ゲームにはデュランバル辺境侯爵家なんて出てこなかったけど、まさかこの時点でお家おとりつぶしになったりしないわよね?
わたくしのせいでお父様達に迷惑をかけるとか、絶対に嫌よ。
「ツェツィ、大丈夫だよ」
「でも、ハン兄さま。おとうさまの帰りがおそいわ」
「陛下ときっと色々話しているんだよ」
「も、もしわたくしのせいで、何かあったら、皆にもうしわけないわ」
エグエグと涙が出てくるわたくしを、兄達が頭を撫でて慰めてくれる。
そんな状態で過ごす事、数時間。
玄関先が騒がしくなってきたと思い、わたくしはダッシュで自室を出て玄関に向かった。
「おとうさまっ」
そこには疲れた顔をしているけれども、怪我なんかをした様子はないお父様が居て、ほっと一息吐き出す。
「おかえりなさい!」
階段を一気に駆け下りて、ぎゅぅっとお父様に抱き着くと、頭を撫でてくれる感触がして、よかったと涙が出てきた。
後ろから追いかけて来た兄達が、「お帰りなさい」と言いかけて、「ヒュッ」と息をのんだ声に、なんだろうと振り返ると、二人は深々と頭を下げていて、思わず出ていた涙が引っ込んだ。
なんぞ!?
「ああ、そんな堅苦しい出迎えはいらない。今日はお忍び訪問という物だ」
聞こえて来たイケボに、聞き覚えがあるな、と思いつつ、お父様の体から少し離れて、見えなかったお父様の後ろを覗き込むと、どえらい美少年が居た。
いやまて、この顔にはどこかで見覚えがあるような?
「やあ、ご令嬢。私はグレイバール=ジャンビュレング。この国の国王をしている」
隠しキャラキターーーーーー!!!!
いや、なんでいるの? 何しに来たの?
って、自己紹介しなくちゃ。
「デュランバルへんきょう侯爵家が長女、ツェツゥーリア=デュランバルです。初めまして、へいか」
うわぁ、何を考えているかわからない微笑が怖いよぉ。
もしかして、お父様に言ってもらちが明かないから、直接家に乗り込んで来たとか?
ナニソレコワイ。
「陛下、とにかくここではなんですし。応接室にどうぞ」
「そうだな」
お父様がそう言ってわたくしの手を引いて歩いていくから、必然的に一緒に行くことになってるけど、わたくし四歳よ?
陛下と同席しちゃだめでしょ。
それは兄達も思ったのか、心配そうにわたくしとお父様、そして陛下をチラチラと見ながらついてくる。
応接室に入ると、陛下がまず座って、お父様がその正面に、わたくしはお父様の隣に座るように言われたけど、兄達はちょっと所在なさげにソファーの後ろに立っている。
ああああ、兄達を差し置いてわたくしがソファーに座るとか、いくら溺愛されているからって陛下の前ではマナー違反っ。
「さて、私もそんなに時間が取れるわけではないから単刀直入に言う。ツェツゥーリア嬢」
「は、はい」
「君はこの国を滅ぼしたいと思うか?」
「へ?」
何言ってんの、この人。
思わずポカーンと陛下をガン見してしまう。
「えっと、そんなことは、思ってません」
「デュランバル辺境侯爵から話は聞いた。聖王と魔王の加護を受けるなんて、前代未聞。君が少しでもその気になれば、この国なんてあっという間に滅ぼすことが出来る。その自覚はあるか?」
その言葉にブンブンと首を横に振る。
いや、言い過ぎじゃない? 確かにモブにはふさわしくないラスボス的力を貰っちゃったけど、わたくしは単なるモブだし。
「では自覚して欲しい。君が受けた加護とは、そういう物だ。聞いた話によれば、守護者としてつけられた聖獣と魔獣だけでも、王都は一夜で滅ぼされるかもしれない」
「ヴェルとルジャはそんなことしません」
「守護者とは、時として守護対象の意思よりも、護ることに重点を置くこともある」
まあ、守護者だしね。陛下の言う事もわからないでもない。
「……ツェツゥーリア嬢はまだ幼い。感情に任せて動いてしまう時だってあるだろう。だが、そのような力を持ってしまったからには、どうか意志を強く持って過ごしてほしい」
そうだよね。四歳なんて感情持て余す時期だよね。
これから成長して、反抗期だって迎えるかもしれないし。
普通ならな! だがわたくしの精神年齢はアラフィフだ!
モラハラパワハラセクハラに耐えきった、アラフィフの喪女だ!
「えっと、がんばります?」
コテリ、と首を傾げて言うけれど、陛下は微笑を消して一瞬真顔になる。
こ、こわぁ……。美少年の真顔こわぁ。
でも、すぐに微笑を浮かべ直すと、「よかった」と頷いてくれた。
なんかよくわからないけど、大丈夫っぽい?
「本来なら、このように私が君の元に訪ねて来て、君に不自由がないか確認すべきなんだが、生憎これでも忙しい身なんだ」
そりゃあ、国王だもんね。むしろ、なんで今日ここに来たのかの方が気になるよ。
「そこで一つ提案なんだが、定期的に王宮に、私の所に会いに来てくれないだろうか?」
「陛下!? どういうことです!」
「デュランバル辺境侯爵。私にはこの国を守る義務がある。今は心身ともに健やかでいるツェツゥーリア嬢だが、心とは移ろいやすい物。様子を見ておく必要があるだろう?」
「それでしたら、報告をお聞きになればいいではありませんか。陛下の影をつける事も私は承諾しました」
え、わたくしは今初めて聞いたんだけど?
「ああ、その事も話さなければいけないな。ツェツゥーリア嬢、君の護衛として、私の影をつけさせてもらう」
あ、拒否権はないんですね。わかりました。
わたくしがコクリと頷いたのを確認して、陛下の視線がお父様に向かった。
「何も毎日通えと言うわけじゃない」
「当たり前です」
「だが、王都に居る間は……。そうだな、週に一度ぐらいは顔を出してほしい」
陛下の言葉に、お父様が眉間にしわを寄せる。
監視だけならその影とやらで十分よね? 陛下がわたくしを王宮に呼び出す意味ってなにがあるんだろう。
自分の目で確認しないと気が済まないタイプ?
「わ、わたくしは、この国をほろぼしたいなんて思わないし、悪いことも考えません」
「そうであって欲しいと願っているよ」
「……も、もしもわたくしが、その、へいかの所に行くのを嫌がったら、おとうさま達は、ばっせられてしまいますか?」
必死に尋ねるわたくしに、陛下はきょとんとした顔をして、ふっと苦笑した。
「そんな事をするわけがない。まあ、君という存在を得て、デュランバル辺境侯爵家がどう動くかは監視させてもらう事にはなるが」
「わたくしのせいで、皆に迷惑が掛かってしまうのですね」
「「「そんな事はない!」」」
しょんぼりとしたわたくしの声に、お父様と兄達が声を揃えて否定する。
「ツェツィが責任を感じることはない。父として、このような娘を持てたことは誇りなのだから」
「父上の言う通りだよ。ツェツィは何も悪くないよ」
「うんうん。僕達の事よりも自分の心配をするべきだよ」
「でも、わたくしが居なければ、余計な心配をかけることはなかったわ」
「このぐらいどうという事はない」
お父様が務めて明るくそう言ってくれるけど、絶対に嘘だ。
ここ最近、色々駆けずり回ってるのを知っているんだからね。
「……へいか」
「なにかな?」
「言われた通りにします。だから、おとうさま達にはなにもしないでください」
そう言って深々と頭を下げる。
しばらくその体勢でいると、「ふふ」と笑い声が聞こえた。
「君は、年齢の割に物分かりが随分いいね。流石は聖王と魔王に気に入られているだけの事はある」
その声にそろそろと顔を上げると、優しい眼差しがわたくしに向けられていた。
「じゃあ、君の負担が軽くなるように、もう少し条件をだそう。君はどうやら無条件より条件があったほうが安心しそうだ」
「は、はい」
「じゃあまず、私の事はグレイと呼ぶように。私は君の事をツェツィと呼ぶから」
「は?」
「ああ、あとさっきロブルツィア達に砕けた口調で話していたな。私にも今後はその口調を使うように」
「はへ?」
「いいね?」
にっこりと微笑まれたけど、よくないよね?
わたくしはただのモブなのに、陛下を愛称で呼ぶとか何様なの!?
しかも敬語抜きとか、どこまで偉いのよ!
嫁の貰い手がなくなるっ。
「そ、そんなの恐れ多いです」
「私が問題ないと言っているんだ。大丈夫だ」
「へいかにそんな態度を取っているなど知られたら、わたくしのとつぎさきがなくなってしまいます」
「……それに関しては、気にしなくていい」
いや、気にするだろう。
「もし、……君がこの条件を呑んでくれないのなら、そうだな、私が無理にでも時間を取ってこちらに赴こう」
「んなっ」
「そうしたら、ただでさえ苦労を掛けている宰相にさらに苦労を掛けることになるかもしれないな」
腹黒い。幼女相手に腹黒いよこのイケメンっ。
この短時間で、わたくしが人に迷惑をかける事を気にしているって理解したな?
これだから頭のいい奴は嫌なんだよ。
「それで、どうする? ツェツィ」
「ぅ……ぐっ」
「私はツェツィのご機嫌を取らなければいけない立場だからな。ツェツィの自由意思に任せる」
そこで、じゃあ、こっちに通えなんて言えるか。
そもそもどうしてその二択なんだよ。
「ぐ、……グレイ、さまの、ところに、おうとに居る間通います」
「言葉遣い」
「か、かよう、わ」
「よくできました」
ご満悦そうだなっ。わたくしは全然ご満悦じゃないぞ。
「で、でも。およめのもらいてがなくなるから、人前では、ちゃんとけいごで話します、……話すわ」
「……まあ、淑女教育も必要だからな。そこは妥協しよう」
将来の為にも、なんて聞こえたけど、わたくしの将来を心配するのなら、モブのわたくしにこれ以上変な設定を付与しないでっ!
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