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私はむくりと起き上がると、ちょっとだけほつれた髪を手櫛で整えている間に、黒龍が私そっくりの人型人形を作ってくれる。
まじまじと自分そっくりの人形を見てみるが、マネキン、もしくはビスクドールを見ているような感じで、なんというか、ちょっとだけ不気味な気もしてしまう。
「少し、成長したか?」
「マジで!?」
「わずかだが、身長が伸びているように感じた」
「だったらいいんだけど、下垂体不全って治るものなの?」
「さてな。ホルモン障害の原因が譲羽の中にあった大量の霊力に関係しているのだとしたら、その霊力を外に出すようになって何かが変わったのかもしれないな」
「ホルモンに霊力が関係するものなの?」
「我にもよくわからないが、可能性はあるんじゃないか?」
黒龍の言葉にわずかながら希望が湧いて来る。
異世界に来て、もしホルモン障害が治って成長することができるのだとしたら、異世界に誘拐された甲斐もあるというものだ。
私は黒龍が作ってくれた器に、自分の霊力を流し込んで、それが定着するようにイメージする。
そうすると、ビスクドールのようだった器が、人のような質感を持ち始めて、先ほどよりも私に似ているように見え始めて来る。
触れてみると、硬質な感じは無く、ちゃんと頬もプニプニと柔らかい。
「動かすことは出来るか?」
言われて動かそうとして見るが、指先一つ動かすことが出来ず、ちょっとだけ込める霊力を強くしたら、今度はガクガクと震え始めて、そのすぐ後にピタリと停止してしまう。
その後はいくら霊力を込めても動くことがなく、頬や手に触れてみると、先ほどとは違う硬質的な触感が伝わって来た。
「なんで?」
「霊力を入れ過ぎたため、器が持たなかったのだろうな」
「むぅ」
リセットするために器に息を吹きかけて再び霊力を込めてみるが、変化は全くなく、どうしたものかと思い黒龍を見ると、黒龍は私を器の前からどけると、器に口づけて息を吹き込んだ。
これがリセット方法で、毎回こんなことを黒龍がすることになるのかと思うと、私そっくりの人形にキスをする姿を何度も見なくてはいけないのか、とちょっとだけ嫌な気分になってしまった。
人形にキスをする大人って、なんて言うか、いや、そういう趣味の人もいるから一概に否定するのは良くないとはわかっているのだけど、その対象が自分そっくりの人形だと思うと、なんというか、モニョっとする。
「それ、毎回するの?」
「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「問題というか、見ててモニョるんだけど」
「とはいえ、譲羽ではまだ出来ないだろう?」
「それはそうだけど……」
超絶美形が幼女の等身大人形に毎回キスするとか、やっぱりどうかと思う。
一日も早く自分でリセット出来るようにって、それもなんかやだな。
自分似の人形になんで毎回キスしなくちゃいけないのだろう、他に方法は無いのだろうか。
「他にリセットする方法ってないの?」
「消して作り直すのが一番手っ取り早いな」
「それって、黒龍に何か負担掛ける?」
「否、器を作る程度であればどうという事はない」
「じゃあ、これからはそれで」
「なんだ、そんなに口づけが嫌だったか?」
「ん」
コクリと頷くと、黒龍が「ふむ」と言ってから何を思ったのか私の顎に手を添えたかと思うと、いきなり私にキスをしてきた。
びっくりして目を見開いていると、黒龍の紅い目と目が合ってしまい、思わずバチバチと瞬きしてしまう。
私は一体何をされているのだろうか。
唇が離されて、そっと頬を撫でられ、微笑む黒龍を見て、思わずビンタしようと手が動くが、あっさりと掴まれてしまう。
「いきなり何すんの」
「器に嫉妬したのかと思ってな」
「んなわけないし、私のファーストキスがそんな理由でいきなり奪われるとか、最悪」
出来る限りきつく黒龍を睨みつけるが、黒龍は何ともないと言う感じに涼しい顔をしている。
うら若き乙女の唇を簡単に奪うとか、黒龍は一体何を考えているのだろうか。
右手を掴まれてしまったので、今度は左手でビンタしようと思って振り上げたが、こちらもあえなく掴まれてしまい、両手を拘束されてしまい、その体勢で黒龍を睨みつける。
「離して」
「暴れないと約束するのなら」
「無理」
「そうか」
黒龍はそう言うと、私を押し倒すように体重をかけて来て、私はあっさりと押し倒されてしまった。
「何?」
「暴れないようにしている」
「……暴れないから離して」
苦々しい顔でそう言うが、黒龍は体勢を変えることなく、むしろ更に私を押し倒すように体重をかけて来て、唇を私の首筋に落とすと、ベロリ、と舐めて来る。
その瞬間、ゾワリ、と背筋が粟立ち掴まれた手に力を入れて黒龍を叩こうとしたが、ピクリとも動かなかった。
理不尽だと思う。
いくら龍神の巫女になったところで、私は所詮八歳児程度の力しかないのだし、成人男性、しかも龍神そのものである黒龍に力で勝てるわけがない。
黒龍はそのまま私の首筋に唇を押し付け、くすぐるように息を吹きかけて来る。
「セクハラ」
「子ども扱いも大人扱いも気に入らないのか?」
「そう言う問題じゃないと思うんだけど」
そう言うと、黒龍は首元でクツリ、と笑うともう一度首筋を舐めてから体を起こし、私の手を離してきたので、思いっきり振り上げて黒龍をビンタしようとしたが、また手を掴まれてしまった。
まじまじと自分そっくりの人形を見てみるが、マネキン、もしくはビスクドールを見ているような感じで、なんというか、ちょっとだけ不気味な気もしてしまう。
「少し、成長したか?」
「マジで!?」
「わずかだが、身長が伸びているように感じた」
「だったらいいんだけど、下垂体不全って治るものなの?」
「さてな。ホルモン障害の原因が譲羽の中にあった大量の霊力に関係しているのだとしたら、その霊力を外に出すようになって何かが変わったのかもしれないな」
「ホルモンに霊力が関係するものなの?」
「我にもよくわからないが、可能性はあるんじゃないか?」
黒龍の言葉にわずかながら希望が湧いて来る。
異世界に来て、もしホルモン障害が治って成長することができるのだとしたら、異世界に誘拐された甲斐もあるというものだ。
私は黒龍が作ってくれた器に、自分の霊力を流し込んで、それが定着するようにイメージする。
そうすると、ビスクドールのようだった器が、人のような質感を持ち始めて、先ほどよりも私に似ているように見え始めて来る。
触れてみると、硬質な感じは無く、ちゃんと頬もプニプニと柔らかい。
「動かすことは出来るか?」
言われて動かそうとして見るが、指先一つ動かすことが出来ず、ちょっとだけ込める霊力を強くしたら、今度はガクガクと震え始めて、そのすぐ後にピタリと停止してしまう。
その後はいくら霊力を込めても動くことがなく、頬や手に触れてみると、先ほどとは違う硬質的な触感が伝わって来た。
「なんで?」
「霊力を入れ過ぎたため、器が持たなかったのだろうな」
「むぅ」
リセットするために器に息を吹きかけて再び霊力を込めてみるが、変化は全くなく、どうしたものかと思い黒龍を見ると、黒龍は私を器の前からどけると、器に口づけて息を吹き込んだ。
これがリセット方法で、毎回こんなことを黒龍がすることになるのかと思うと、私そっくりの人形にキスをする姿を何度も見なくてはいけないのか、とちょっとだけ嫌な気分になってしまった。
人形にキスをする大人って、なんて言うか、いや、そういう趣味の人もいるから一概に否定するのは良くないとはわかっているのだけど、その対象が自分そっくりの人形だと思うと、なんというか、モニョっとする。
「それ、毎回するの?」
「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「問題というか、見ててモニョるんだけど」
「とはいえ、譲羽ではまだ出来ないだろう?」
「それはそうだけど……」
超絶美形が幼女の等身大人形に毎回キスするとか、やっぱりどうかと思う。
一日も早く自分でリセット出来るようにって、それもなんかやだな。
自分似の人形になんで毎回キスしなくちゃいけないのだろう、他に方法は無いのだろうか。
「他にリセットする方法ってないの?」
「消して作り直すのが一番手っ取り早いな」
「それって、黒龍に何か負担掛ける?」
「否、器を作る程度であればどうという事はない」
「じゃあ、これからはそれで」
「なんだ、そんなに口づけが嫌だったか?」
「ん」
コクリと頷くと、黒龍が「ふむ」と言ってから何を思ったのか私の顎に手を添えたかと思うと、いきなり私にキスをしてきた。
びっくりして目を見開いていると、黒龍の紅い目と目が合ってしまい、思わずバチバチと瞬きしてしまう。
私は一体何をされているのだろうか。
唇が離されて、そっと頬を撫でられ、微笑む黒龍を見て、思わずビンタしようと手が動くが、あっさりと掴まれてしまう。
「いきなり何すんの」
「器に嫉妬したのかと思ってな」
「んなわけないし、私のファーストキスがそんな理由でいきなり奪われるとか、最悪」
出来る限りきつく黒龍を睨みつけるが、黒龍は何ともないと言う感じに涼しい顔をしている。
うら若き乙女の唇を簡単に奪うとか、黒龍は一体何を考えているのだろうか。
右手を掴まれてしまったので、今度は左手でビンタしようと思って振り上げたが、こちらもあえなく掴まれてしまい、両手を拘束されてしまい、その体勢で黒龍を睨みつける。
「離して」
「暴れないと約束するのなら」
「無理」
「そうか」
黒龍はそう言うと、私を押し倒すように体重をかけて来て、私はあっさりと押し倒されてしまった。
「何?」
「暴れないようにしている」
「……暴れないから離して」
苦々しい顔でそう言うが、黒龍は体勢を変えることなく、むしろ更に私を押し倒すように体重をかけて来て、唇を私の首筋に落とすと、ベロリ、と舐めて来る。
その瞬間、ゾワリ、と背筋が粟立ち掴まれた手に力を入れて黒龍を叩こうとしたが、ピクリとも動かなかった。
理不尽だと思う。
いくら龍神の巫女になったところで、私は所詮八歳児程度の力しかないのだし、成人男性、しかも龍神そのものである黒龍に力で勝てるわけがない。
黒龍はそのまま私の首筋に唇を押し付け、くすぐるように息を吹きかけて来る。
「セクハラ」
「子ども扱いも大人扱いも気に入らないのか?」
「そう言う問題じゃないと思うんだけど」
そう言うと、黒龍は首元でクツリ、と笑うともう一度首筋を舐めてから体を起こし、私の手を離してきたので、思いっきり振り上げて黒龍をビンタしようとしたが、また手を掴まれてしまった。
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