15 / 46
15話 お出かけ その2
しおりを挟む
「お嬢様、東の森のなどに行かれてはいかがでございますか? 王太子殿下とお二人ならば……とても絵になるかと思われます」
私達の接吻を見ていたのか見ていないのか……何処からともなく現れたメルレーンの清き言葉。清き言葉のはずなんだけれど……なぜか、胡散臭い様子が見て取れた。
「……メルレーンさん、なにか邪な感情とか持ってない?」
「なにをおっしゃいますか、お嬢様。王太子殿下とお嬢様の前でそのようなこと……あろうはずがありませんわ」
「ははは、あなたには敵わないな」
ハルト王太子殿下もメルレーンに押されているような……。やっぱり直属の護衛の一人というのは間違いないみたいね。それはともかくとして、私達を森に行くように促すのが少しいやらしいというか……他の既成事実を作るように促しているように見えるし。
「もう一度聞くけれど、何も企んでいないのよね?」
「もちろんでございます、お嬢様。森の中にある小屋で……などとは一切考えておりませんよ」
「……もういいわ」
メルレーンの本音を垣間見れた気がする。というより、わざと露呈させたのよね、彼女。隣に立っているハルト様も笑っているし。でも、東の森へ行くのは結構良い提案の気がするわ、あそこなら人目にも付かないし。私はメルレーンの提案に乗ることにした。
「あれだけ人目に付くキスをしていらしていても、恥じらいはあるのですね、お嬢様。うふふふ」
「や、やめてよ……」
いたずらっぽく笑うメルレーンに私は終始頭が上がらなかった。
─────
「この森へ入るのも、実に10年振りか……懐かしいな」
「そうですね。また、こうやってハルト様と入ることが出来るなんて」
アクアマイト領内の東を覆う森……凶暴な野生動物は存在せず、小鳥たちや鹿の楽園とも呼ばれている、通称フラワーランド。どうしてそんな名称になったのかは不明だけれど、優しいネーミングにしたかったんでしょうね。私とハルト様は、実に10年振りに二人並んで入ることになった。
もちろんメルレーンを始めとして、護衛の人たちは居るんだろうけど。私とハルト様はこの場所で良く遊んだ記憶がある。とても楽しい日々……今日はそんな日々を思い出しながら、ハルト様と過ごすことができる。
「こんな幸せなことがあっていいのでしょうか……」
私はおもわず独り言を漏らしていた。そんな私の言葉にハルト様は間髪入れずに答えてくれる。
「もちろんさ。これからは、いつでも好きな時に呼んでくれて構わないよ」
ハルト様から行われるキス。私は自然と受け止めていた。実際は王太子殿下を呼び寄せるなんて恐れ多いけれど、彼とは婚約関係になる。今までよりも格段に会いやすくなるのは明白だわ。
私達の接吻を見ていたのか見ていないのか……何処からともなく現れたメルレーンの清き言葉。清き言葉のはずなんだけれど……なぜか、胡散臭い様子が見て取れた。
「……メルレーンさん、なにか邪な感情とか持ってない?」
「なにをおっしゃいますか、お嬢様。王太子殿下とお嬢様の前でそのようなこと……あろうはずがありませんわ」
「ははは、あなたには敵わないな」
ハルト王太子殿下もメルレーンに押されているような……。やっぱり直属の護衛の一人というのは間違いないみたいね。それはともかくとして、私達を森に行くように促すのが少しいやらしいというか……他の既成事実を作るように促しているように見えるし。
「もう一度聞くけれど、何も企んでいないのよね?」
「もちろんでございます、お嬢様。森の中にある小屋で……などとは一切考えておりませんよ」
「……もういいわ」
メルレーンの本音を垣間見れた気がする。というより、わざと露呈させたのよね、彼女。隣に立っているハルト様も笑っているし。でも、東の森へ行くのは結構良い提案の気がするわ、あそこなら人目にも付かないし。私はメルレーンの提案に乗ることにした。
「あれだけ人目に付くキスをしていらしていても、恥じらいはあるのですね、お嬢様。うふふふ」
「や、やめてよ……」
いたずらっぽく笑うメルレーンに私は終始頭が上がらなかった。
─────
「この森へ入るのも、実に10年振りか……懐かしいな」
「そうですね。また、こうやってハルト様と入ることが出来るなんて」
アクアマイト領内の東を覆う森……凶暴な野生動物は存在せず、小鳥たちや鹿の楽園とも呼ばれている、通称フラワーランド。どうしてそんな名称になったのかは不明だけれど、優しいネーミングにしたかったんでしょうね。私とハルト様は、実に10年振りに二人並んで入ることになった。
もちろんメルレーンを始めとして、護衛の人たちは居るんだろうけど。私とハルト様はこの場所で良く遊んだ記憶がある。とても楽しい日々……今日はそんな日々を思い出しながら、ハルト様と過ごすことができる。
「こんな幸せなことがあっていいのでしょうか……」
私はおもわず独り言を漏らしていた。そんな私の言葉にハルト様は間髪入れずに答えてくれる。
「もちろんさ。これからは、いつでも好きな時に呼んでくれて構わないよ」
ハルト様から行われるキス。私は自然と受け止めていた。実際は王太子殿下を呼び寄せるなんて恐れ多いけれど、彼とは婚約関係になる。今までよりも格段に会いやすくなるのは明白だわ。
0
あなたにおすすめの小説
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがて王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そして試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして、世界を救う少女の選択と成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー編 32話
第二章:討伐軍編 32話
第三章:魔王決戦編 36話
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」
婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。
罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。
それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。
しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。
「どんな場所でも、私は生きていける」
打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。
これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。
国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる