侯爵令息から婚約破棄されたけど、王太子殿下から婚約の申し出がありました!

安奈

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15話 お出かけ その2

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「お嬢様、東の森のなどに行かれてはいかがでございますか? 王太子殿下とお二人ならば……とても絵になるかと思われます」

 私達の接吻を見ていたのか見ていないのか……何処からともなく現れたメルレーンの清き言葉。清き言葉のはずなんだけれど……なぜか、胡散臭い様子が見て取れた。

「……メルレーンさん、なにか邪な感情とか持ってない?」

「なにをおっしゃいますか、お嬢様。王太子殿下とお嬢様の前でそのようなこと……あろうはずがありませんわ」

「ははは、あなたには敵わないな」


 ハルト王太子殿下もメルレーンに押されているような……。やっぱり直属の護衛の一人というのは間違いないみたいね。それはともかくとして、私達を森に行くように促すのが少しいやらしいというか……他の既成事実を作るように促しているように見えるし。


「もう一度聞くけれど、何も企んでいないのよね?」

「もちろんでございます、お嬢様。森の中にある小屋で……などとは一切考えておりませんよ」

「……もういいわ」


 メルレーンの本音を垣間見れた気がする。というより、わざと露呈させたのよね、彼女。隣に立っているハルト様も笑っているし。でも、東の森へ行くのは結構良い提案の気がするわ、あそこなら人目にも付かないし。私はメルレーンの提案に乗ることにした。

「あれだけ人目に付くキスをしていらしていても、恥じらいはあるのですね、お嬢様。うふふふ」

「や、やめてよ……」


 いたずらっぽく笑うメルレーンに私は終始頭が上がらなかった。


─────


「この森へ入るのも、実に10年振りか……懐かしいな」

「そうですね。また、こうやってハルト様と入ることが出来るなんて」


 アクアマイト領内の東を覆う森……凶暴な野生動物は存在せず、小鳥たちや鹿の楽園とも呼ばれている、通称フラワーランド。どうしてそんな名称になったのかは不明だけれど、優しいネーミングにしたかったんでしょうね。私とハルト様は、実に10年振りに二人並んで入ることになった。

 もちろんメルレーンを始めとして、護衛の人たちは居るんだろうけど。私とハルト様はこの場所で良く遊んだ記憶がある。とても楽しい日々……今日はそんな日々を思い出しながら、ハルト様と過ごすことができる。

「こんな幸せなことがあっていいのでしょうか……」

 私はおもわず独り言を漏らしていた。そんな私の言葉にハルト様は間髪入れずに答えてくれる。

「もちろんさ。これからは、いつでも好きな時に呼んでくれて構わないよ」


 ハルト様から行われるキス。私は自然と受け止めていた。実際は王太子殿下を呼び寄せるなんて恐れ多いけれど、彼とは婚約関係になる。今までよりも格段に会いやすくなるのは明白だわ。

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