侯爵令息から婚約破棄されたけど、王太子殿下から婚約の申し出がありました!

安奈

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17話 シグマのその後 その2

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 私はこの日、秘密裏にハルト様に会う手筈を整えてもらっていた。正確にはハルト様の護衛という裏の顔があるメルレーンに手伝ってもらい、私はハルト様と貴族街で会うことになった。流石に何度もアクアマイトの領地に来てもらうのは申し訳ないから。


「ハルト様、本当に申し訳ありません。いきなりこのような所に……」

「気にするなシエル。私は君の婚約者なんだから。なるべく君を優先するさ」

「ありがとうございます」


 本当にハルト様はお優しい……本当は一介の貴族が婚約者になったことで、立場的な問題でお忙しいはずなのに……。本来ならアクアマイトの屋敷にも嫌がらせの類が来てもおかしくないはずなんだけど。もしかしたら、ハルト様やメルレーンが守ってくれてるのかもしれないわ。


「それで……話というのは、どういう内容だい? 婚約の話であれば……すまないが、今は我慢してほしい。色々と聞きたくない噂を聞いてしまうかもしれないが……」

「あ、いえ……そちらの件も気にはなっているんですが、今回は違います。あの……シグマとアンナの処遇はどのようになるんでしょうか?」


 以前のお怒りのハルト様が、しばらくの間、領地から出ることを禁じたところまでは分かっている。私が知りたいのはその後だ。


「ああ、あの二人か。謹慎処分については本人達は素直に聞いているらしい。だが、シグマ・ブリーテンの母親にあたる、メリアーナが相当に怒っているということだ」


 メリアーナ・ブリーテン侯爵夫人……アグマ・ブリーテン侯爵の奥様にあたる人だけど……確かあの家系の実権を握ってるのはメリアーナ様だっけ?

「具体的には……シグマの謹慎処分の撤回と私が独断で行ったことへの王家からの謝罪を要求している」

「そ、そんなことを……!?」


 私は思っていたよりも事が大きくなっていることに驚いて、声が大きくなっていた。周囲に人の気配はないが、護衛の方がいるのか、少しだけ草木が揺れる音も響く。


「ブリーテン家は古来より、大貴族であるカニエル公爵家とのパイプラインも確立している。王家が今回の件について何もしなかった場合、貴族連合を組んでくる可能性もあるか……」


 私は王子殿下の言葉を信じることができなかった。只でさえ王子は婚約の件で忙しいはずなのに……シグマの件が大事件に発展しかねない状況になっていたなんて。


「ああ、心配することはないさ、シエル。私を誰だと思っているんだ? 次期国王の名は伊達ではないぞ?」

「ハルト様……?」


 そう言いながら、彼は指を勢いよく鳴らしてみせた。すると、周囲の草木が明らかに大きく揺らぎ出す。

「シエルには紹介していた方がいいか。私の護衛をしてくれている、各方面の者達だ」


 ハルト王太子殿下の前に現れた人影……それは、私よりもはるかに位が高い人達で構成されていた……。ウソでしょ……こんなことってあるの……。
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