22 / 46
22話 話し合い その2
しおりを挟む
ハルト様は穏便に解決する旨をおっしゃっているのだと思う。貴族連合など造られた場合、それは最早クーデターのようなものだし……最悪の場合、国家が分断される可能性もあるのだから……。
民への弊害も考えた場合、ハルト様はなるべく貴族連合への対抗という形にはしたくないのだとわかった。ハルト様の護衛の方々……公爵レベルの方々を使って力で押さえつけることは可能なのかもしれないけれど……。
「王家としての謝罪……それをすることはできない。また、シグマ・ブリーテンの謹慎解除も無理だ。彼は我が婚約者のシエルに無礼を働いたのだからな」
「……ハルト王太子殿下、それでは私の要求は全て否定される、ということでしょうか?」
メリアーナ夫人の眉間には大きくしわが寄っている。ハルト王子殿下に要求を却下された形で相当に苛立っているみたい。このままだと、ハルト様が言った建設的な話し合いはとても無理だと思うけれど……。
「結果的にはそうなるな」
「では、私達は貴族連合を結成いたします。今の王族に断固として対抗させてもらいますわ」
うわ……時期国王であるハルト様の前でなんて大胆な……。これって、下手をすればブリーテン家自体が没落しかねない発言なんじゃないの?
「お待ちください、メリアーナ夫人」
「……あなたは?」
「はい、ハルト王太子殿下の護衛の一人で、シエルお嬢様のメイドをさせていただいております。名をメルレーンと申します」
「メルレーン……」
メリアーナ夫人はメイドのメルレーンの名前を何度か反復していた。多分だけど、自分の記憶上にその名前があるかを確認していたんだと思う。でも夫人の記憶にはなかったみたい、それは彼女の表情が物語っていた。まあ、超有名な貴族ってわけでもないしね、メルレーンは。
「そして……シエル様の身の回りの世話をなんでも行う者にございます」
「ん? なんでも?」
これはメルレーンの冗談なんだろうけど……夫人は真面目に受け取ったようで、顔を赤くしていた。意外と純情なんだこの人。とりあえず私はメルレーンを睨んでおいた。彼女は軽く舌を出しながらスルーしていたけれど。
「ハルト王太子殿下は和解案も考えておられます……ですが、まずは現状をお考えいただきたいのです」
「現状を……? どういうことかしら?」
「はい、夫人は由緒あるブリーテン家に属するお方のはず。シグマ・ブリーテン様が身勝手な理由でシエル様との婚約を破棄されたことは事実にございます。そのことについて、本当に何も感じられないのですか?」
「……それは……」
ああ、なるほど……メルレーンが語る意味は理解できなかったけれど、ハルト王太子殿下の解決案はなんとなく理解できた。泣き落とし、みたいなものかしら? こちらが優しく順序立てて説明することで、相手に罪を理解してもらう作戦というわけね。
そういう意味では、メルレーンが語り掛ける方が有効だったのかしら?
民への弊害も考えた場合、ハルト様はなるべく貴族連合への対抗という形にはしたくないのだとわかった。ハルト様の護衛の方々……公爵レベルの方々を使って力で押さえつけることは可能なのかもしれないけれど……。
「王家としての謝罪……それをすることはできない。また、シグマ・ブリーテンの謹慎解除も無理だ。彼は我が婚約者のシエルに無礼を働いたのだからな」
「……ハルト王太子殿下、それでは私の要求は全て否定される、ということでしょうか?」
メリアーナ夫人の眉間には大きくしわが寄っている。ハルト王子殿下に要求を却下された形で相当に苛立っているみたい。このままだと、ハルト様が言った建設的な話し合いはとても無理だと思うけれど……。
「結果的にはそうなるな」
「では、私達は貴族連合を結成いたします。今の王族に断固として対抗させてもらいますわ」
うわ……時期国王であるハルト様の前でなんて大胆な……。これって、下手をすればブリーテン家自体が没落しかねない発言なんじゃないの?
「お待ちください、メリアーナ夫人」
「……あなたは?」
「はい、ハルト王太子殿下の護衛の一人で、シエルお嬢様のメイドをさせていただいております。名をメルレーンと申します」
「メルレーン……」
メリアーナ夫人はメイドのメルレーンの名前を何度か反復していた。多分だけど、自分の記憶上にその名前があるかを確認していたんだと思う。でも夫人の記憶にはなかったみたい、それは彼女の表情が物語っていた。まあ、超有名な貴族ってわけでもないしね、メルレーンは。
「そして……シエル様の身の回りの世話をなんでも行う者にございます」
「ん? なんでも?」
これはメルレーンの冗談なんだろうけど……夫人は真面目に受け取ったようで、顔を赤くしていた。意外と純情なんだこの人。とりあえず私はメルレーンを睨んでおいた。彼女は軽く舌を出しながらスルーしていたけれど。
「ハルト王太子殿下は和解案も考えておられます……ですが、まずは現状をお考えいただきたいのです」
「現状を……? どういうことかしら?」
「はい、夫人は由緒あるブリーテン家に属するお方のはず。シグマ・ブリーテン様が身勝手な理由でシエル様との婚約を破棄されたことは事実にございます。そのことについて、本当に何も感じられないのですか?」
「……それは……」
ああ、なるほど……メルレーンが語る意味は理解できなかったけれど、ハルト王太子殿下の解決案はなんとなく理解できた。泣き落とし、みたいなものかしら? こちらが優しく順序立てて説明することで、相手に罪を理解してもらう作戦というわけね。
そういう意味では、メルレーンが語り掛ける方が有効だったのかしら?
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
婚約破棄したので、元の自分に戻ります
しあ
恋愛
この国の王子の誕生日パーティで、私の婚約者であるショーン=ブリガルドは見知らぬ女の子をパートナーにしていた。
そして、ショーンはこう言った。
「可愛げのないお前が悪いんだから!お前みたいな地味で不細工なやつと結婚なんて悪夢だ!今すぐ婚約を破棄してくれ!」
王子の誕生日パーティで何してるんだ…。と呆れるけど、こんな大勢の前で婚約破棄を要求してくれてありがとうございます。
今すぐ婚約破棄して本来の自分の姿に戻ります!
白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」
そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。
――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで
「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」
と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。
むしろ彼女の目的はただ一つ。
面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。
そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの
「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。
――のはずが。
純潔アピール(本人は無自覚)、
排他的な“管理”(本人は合理的判断)、
堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。
すべてが「戦略」に見えてしまい、
気づけば周囲は完全包囲。
逃げ道は一つずつ消滅していきます。
本人だけが最後まで言い張ります。
「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」
理屈で抗い、理屈で自滅し、
最終的に理屈ごと恋に敗北する――
無自覚戦略無双ヒロインの、
白い結婚(予定)ラブコメディ。
婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。
最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。
-
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる