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23話 話し合い その3
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メイドのメルレーンの説得にも近い言葉は続いている。どうでもいいけど、メリアーナ夫人と名前が似ているわよね、彼女。……本当にどうでもいいことだったわ。
「あなたはシグマの行った行為が間違っているというわけね? たかだか、メイドの一人の分際で。いくら、王太子殿下の護衛でも許されることではなくてよ?」
メリアーナ夫人の言っていることは、ある意味では正しいのかもしれない。貴族の中でも上流階級……嫁ぐ前のメリアーナ夫人も確か、侯爵級の家柄だったと思うから……。
一応はただのメイドでしかないメルレーンに諭されたくはないんだと思う。でも、それは強がりもあるんじゃないかな。貴族として簡単には覆せないプライドみたいなものが邪魔している気がする。
なんとなくだけど、メリアーナ夫人も性根はそこまで悪人には見えなかったから。ブリーテン家へ嫁いだことによる重圧とか緊張で、今の性格になってしまったんじゃないかな……とか、思ってみたり。
「メリアーナ様……シグマ・ブリーテン様はシエル様に婚約破棄を言い渡しました。理由については再び申し上げることは控えますが……やはりこれは、ブリーテン家としては許されることではないはずです。誰が申し上げるかなど、この際関係はありません。それとも……あなた様はそれすらも忘れてしまったのですか?」
「……あなた……」
あれ? メルレーンの言葉が、なんだか感情的になっているような……。多分、気のせいではないと思う。ハルト王太子殿下はもしかしたら、その辺りもわかった上で、彼女に話させているのかもね。
「私がまだ、幼かった時のあなた様は……もっと正義感に満ちたお方だったと記憶しております」
「……会った記憶はないけれど」
「覚えてはいらっしゃらないと思います。私はその他大勢の一人でしかありませんでしたから……」
「……」
すごい……メルレーンの言葉で夫人は少し考え始めている。隣に座っているカニエル公爵の方が狼狽えているくらいね……。えっ? メルレーンって昔のメリアーナ夫人のことを知っているの? メルレーンって20代前半だったと思うけれど……。
その時、私はメルレーンと目が合った。簡単にウインクをしてくる彼女……なんとなくそれで、私は察してしまった。今までのは全て演技……メリアーナ夫人が改心するような話題を適当に話していただけなんじゃ……よく考えたら、都合が良すぎるし。
ハルト様にも目配せしてみたけど、彼もそのことは分かっているみたいな……ええ~~~?
「……私はシグマのことを少し、甘やかし過ぎていたのかもしれないわね……」
その時だった……。メリアーナ夫人が少しだけ意見を変えてくれるかもしれない発言をしたのは。
「あなたはシグマの行った行為が間違っているというわけね? たかだか、メイドの一人の分際で。いくら、王太子殿下の護衛でも許されることではなくてよ?」
メリアーナ夫人の言っていることは、ある意味では正しいのかもしれない。貴族の中でも上流階級……嫁ぐ前のメリアーナ夫人も確か、侯爵級の家柄だったと思うから……。
一応はただのメイドでしかないメルレーンに諭されたくはないんだと思う。でも、それは強がりもあるんじゃないかな。貴族として簡単には覆せないプライドみたいなものが邪魔している気がする。
なんとなくだけど、メリアーナ夫人も性根はそこまで悪人には見えなかったから。ブリーテン家へ嫁いだことによる重圧とか緊張で、今の性格になってしまったんじゃないかな……とか、思ってみたり。
「メリアーナ様……シグマ・ブリーテン様はシエル様に婚約破棄を言い渡しました。理由については再び申し上げることは控えますが……やはりこれは、ブリーテン家としては許されることではないはずです。誰が申し上げるかなど、この際関係はありません。それとも……あなた様はそれすらも忘れてしまったのですか?」
「……あなた……」
あれ? メルレーンの言葉が、なんだか感情的になっているような……。多分、気のせいではないと思う。ハルト王太子殿下はもしかしたら、その辺りもわかった上で、彼女に話させているのかもね。
「私がまだ、幼かった時のあなた様は……もっと正義感に満ちたお方だったと記憶しております」
「……会った記憶はないけれど」
「覚えてはいらっしゃらないと思います。私はその他大勢の一人でしかありませんでしたから……」
「……」
すごい……メルレーンの言葉で夫人は少し考え始めている。隣に座っているカニエル公爵の方が狼狽えているくらいね……。えっ? メルレーンって昔のメリアーナ夫人のことを知っているの? メルレーンって20代前半だったと思うけれど……。
その時、私はメルレーンと目が合った。簡単にウインクをしてくる彼女……なんとなくそれで、私は察してしまった。今までのは全て演技……メリアーナ夫人が改心するような話題を適当に話していただけなんじゃ……よく考えたら、都合が良すぎるし。
ハルト様にも目配せしてみたけど、彼もそのことは分かっているみたいな……ええ~~~?
「……私はシグマのことを少し、甘やかし過ぎていたのかもしれないわね……」
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