41 / 46
41話 王位継承権 その1
しおりを挟む
私とハルト様は後日、国王陛下の私室を訪れることになった。私一人ではとても会えないだろうけど、流石はハルト様……すぐに謁見可能にしたのが凄いわ。
「父上……お話がございます」
「ハルトか……それに、そちらはシエル嬢だな」
「お初にお目にかかります、国王陛下……」
初めてお会いするというわけではないけれど、ハルト様の婚約者になってからは初めてだったかしら? ろくな挨拶もできていなかったわね、そう言えば……。
「婚約後の挨拶回りに来た……ということでもなさそうだな」
「それについては、また落ち着いた時にでも。既にメルレーンからの報告が受けているかと思いますが……」
「ああ、報告は聞いている。どうやら、カニエル公爵が、前のブリーテン家の粗相を利用して台頭しているようだな」
既にメルレーンからの報告は上がっていたのね。1から説明する必要がないようで私は安心した。
「はい、その通りです。カニエル公爵の掲げる貴族連合の発足とリクイドの懐柔……再び、王位継承権を勃発させようとしていることからも、反逆の意志は明確です」
「少し落ち着くのだ、ハルトよ」
国王陛下は、私達二人を近くのソファに座るように促した。言葉通り、腰を掛ける。ハルト様のもどかしい気持ちは理解出来るわ……リクイド第三王子も向こう側に行ったのだし……絶対に、カニエル公爵を許せないと思う。
「父上、再びの王位継承権など前代未聞と言えるでしょう。カニエル公爵への厳罰も含め、お考えください」
「ハルトよ……この王国に於いて、国王陛下の一存で全てが決まらないというのは知っているだろう?」
「は、はい……それはもちろん存じてはおりますが……」
「何事も罰を与える権限は議会にあると言える。もちろん、私の権力を多少、議会に持ち込むなど、例外的な処置を行うことは不可能ではないが……」
我が国において、例外的に国王陛下や大臣の意志を通してしまう場合というのは確かに存在する。戦争時などがそうだけど、国王陛下は現在はそのようには考えていないみたいね。
なんだか、随分と呑気に見えてしまうけれど……大丈夫なのかしら?
「父上、カニエル公爵は私と伯爵令嬢であるシエルとの婚約が国家を衰退させるだろうということを理由に、リクイドを台頭させ、自らは裏の実権を握ろうとしています! ここで動かなければ、王家そのものが瓦解するかもしれません!」
「……お前たちも同意見か」
「もちろんです、陛下。カニエル公爵とハルト様のお話しは護衛の任務で聞いておりますので……」
いつの間にか、私達の背後にはハルト様の護衛の面々が並んでいた。どの方も私より上の人たちばかり……。いつ見ても壮観だわ……。
「わかった……私の方から議会に直接、話をしてみよう」
「ありがとうございます、父上!」
「過剰な期待はし過ぎるなよ? 国王陛下と言えども万全ではない。本当に国王陛下が何でも可能なら、カニエル公爵のような人物が生まれることなど、ないのだからな」
国王陛下はようやくその重い腰を上げたくださった。ハルト様もガッツポーズをしていらっしゃるわ。なんとか、上手い方向に転がっていければいいんだけど。果たしてどうなるかしら?
「父上……お話がございます」
「ハルトか……それに、そちらはシエル嬢だな」
「お初にお目にかかります、国王陛下……」
初めてお会いするというわけではないけれど、ハルト様の婚約者になってからは初めてだったかしら? ろくな挨拶もできていなかったわね、そう言えば……。
「婚約後の挨拶回りに来た……ということでもなさそうだな」
「それについては、また落ち着いた時にでも。既にメルレーンからの報告が受けているかと思いますが……」
「ああ、報告は聞いている。どうやら、カニエル公爵が、前のブリーテン家の粗相を利用して台頭しているようだな」
既にメルレーンからの報告は上がっていたのね。1から説明する必要がないようで私は安心した。
「はい、その通りです。カニエル公爵の掲げる貴族連合の発足とリクイドの懐柔……再び、王位継承権を勃発させようとしていることからも、反逆の意志は明確です」
「少し落ち着くのだ、ハルトよ」
国王陛下は、私達二人を近くのソファに座るように促した。言葉通り、腰を掛ける。ハルト様のもどかしい気持ちは理解出来るわ……リクイド第三王子も向こう側に行ったのだし……絶対に、カニエル公爵を許せないと思う。
「父上、再びの王位継承権など前代未聞と言えるでしょう。カニエル公爵への厳罰も含め、お考えください」
「ハルトよ……この王国に於いて、国王陛下の一存で全てが決まらないというのは知っているだろう?」
「は、はい……それはもちろん存じてはおりますが……」
「何事も罰を与える権限は議会にあると言える。もちろん、私の権力を多少、議会に持ち込むなど、例外的な処置を行うことは不可能ではないが……」
我が国において、例外的に国王陛下や大臣の意志を通してしまう場合というのは確かに存在する。戦争時などがそうだけど、国王陛下は現在はそのようには考えていないみたいね。
なんだか、随分と呑気に見えてしまうけれど……大丈夫なのかしら?
「父上、カニエル公爵は私と伯爵令嬢であるシエルとの婚約が国家を衰退させるだろうということを理由に、リクイドを台頭させ、自らは裏の実権を握ろうとしています! ここで動かなければ、王家そのものが瓦解するかもしれません!」
「……お前たちも同意見か」
「もちろんです、陛下。カニエル公爵とハルト様のお話しは護衛の任務で聞いておりますので……」
いつの間にか、私達の背後にはハルト様の護衛の面々が並んでいた。どの方も私より上の人たちばかり……。いつ見ても壮観だわ……。
「わかった……私の方から議会に直接、話をしてみよう」
「ありがとうございます、父上!」
「過剰な期待はし過ぎるなよ? 国王陛下と言えども万全ではない。本当に国王陛下が何でも可能なら、カニエル公爵のような人物が生まれることなど、ないのだからな」
国王陛下はようやくその重い腰を上げたくださった。ハルト様もガッツポーズをしていらっしゃるわ。なんとか、上手い方向に転がっていければいいんだけど。果たしてどうなるかしら?
0
あなたにおすすめの小説
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがて王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そして試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして、世界を救う少女の選択と成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー編 32話
第二章:討伐軍編 32話
第三章:魔王決戦編 36話
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる