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再び奇妙な依頼
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「まさか炊き出しってここだったのか」
バッツ達とボルゲーノさん、屋敷の人達数人で訪れた場所は孤児院だった。
そして何故かバッツ達は驚いた表情を浮かべている。
「どうしたの? 三人はここを知っているのかな?」
「知ってるも何も、ここは俺達が住んでいる所だ」
「そうなんだ」
バッツ達もまさか自分の住んでいる場所の炊き出しをするとは、思っても見なかったと言った所か。
「もしかしていつも炊き出しや、服とかの支援をしてくれてたのってボルゲーノさんだったんですか?」
カリンさんの問いに、ボルゲーノさんは顔を逸らしながら頷く。
表情は仏頂面だけどもしかして照れているのか。
「いつもありがとうございます。私達が生きていられるのはボルゲーノさんのおかげです」
「気にするな。私は私の思惑があってやっていることだ」
「それでもお礼は言わせて下さい」
カリンさんはほんとうにしっかりしているな。とても十歳には見えない。
「でもいつまてもお世話になる訳にはいきませんよね。私達は一流の冒険者になって、自分達で孤児院を支えられるがんばります」
もしかしてバッツ達がお金を稼ぎたい理由って、孤児院に寄付するためなのか? 俺は益々この子達が気に入ったぞ。
「そんなことより、子供達がお腹を空かせているんじゃないか? 早く炊き出しの手伝いを頼む」
「わ、わかりました」
カリンさん達は慌てた様子で炊き出しの手伝いに向かう。
さて、俺も行った方がいいよな。一応依頼としては荷物を運び終えたけど、やれることはあるだろう。
俺は炊き出しの手伝いをするため、カリンさん達の方へ向かう。
「待て」
しかし俺の足は、ボルゲーさんの言葉で止められた。
「僕ですか?」
「ああ。ちょっと話がしたい。来てくれるか」
「わかりました」
俺はボルゲーノさんの後についていく。すると人気のない孤児院の建物の裏まで連れて行かれた。
「先程も話したが、私は信頼でき優秀な者を探している。そして君はその条件を満たしている」
「評価してもらえて嬉しいですね」
わざわざここに来て言うことじゃないだろう。本題はこの後かな。
「今後私個人が君に依頼を出したいと思っている。受けてもらえないだろうか? もちろん報酬は弾ませてもらう」
「それは依頼内容によります」
違法な依頼はお断りしたいし、長期間拘束される依頼はごめんだ。俺の目的はあくまでトアの病を治すことだからな。
「依頼は⋯⋯主に護衛の任務だ」
「護衛⋯⋯ですか」
指名して依頼するってことは普通の一般人の護衛じゃないだろう。それならボルゲーノさんの護衛? それとも⋯⋯
「何か護衛に対して、求めているスキルや条件があるのか、もしくは⋯⋯護衛対象の人が高貴な人とか⋯⋯」
「なっ!」
どうやら今のボルゲーノさんの反応からして当りのようだ。おそらく貴族の護衛だと思う。だけど貴族には私設の兵とかいるようなイメージだけど。
「驚いたな。君はとても聡いようだ。子供だと思って話さない方がよさそうだ」
げっ! 余計なことを口にしてしまった。俺が異世界転生者とバレることはないとは思うけど、少し自重した方がよさそうだ。子供だと侮ってくれた方が相手は油断してくれるしな。
「聡い? 聡いってどういう意味?」
「賢いってことだ」
俺は中身が大人だとバレないように演技する。
アカデミー賞ものの演技に、ボルゲーノさんはきっと騙されてくれただろう。
「話が逸れたな。それで依頼を受けてくれるだろうか」
「護衛の対象って誰なんですか?」
「それは依頼を受けてくれないと言うことはできない」
言うことはできない?
貴族でも冒険者を雇うことは普通にある。だけど名前を出せないとなると、よほどの事情があるのかかなり高貴な人⋯⋯まさか皇族とか。
貴族の権力闘争や跡目争いに巻き込まれるのはごめんだ。依頼料はいいかもしれないけど、相手から恨みも買いそうだしな。
「申し訳あり⋯⋯」
「君に取っても悪い話ではないぞ」
俺は断るつもりでいたけど、ボルゲーノさんが気になる言葉を口にしてきた。
「どういうことでしょうか?」
「君の妹についてだ。不治の病にかかっているそうじゃないか」
まさか俺だけではなく、トアのことも調べたのか!
返答次第で、俺はこの人のことを許せなくなるぞ。
「勘違いしないでくれ。別に昨日今日で調べた訳ではない。さっきも話したように、私は信頼でき優秀な者を探すため、常にこの街で情報収集していた。その中で不治の病に犯されている、君の妹のことを知っただけだ」
本当に日頃から情報収集をしていたなら、トアのことを知っていてもおかしくはないけど、どこか釈然としない気持ちになる。
「それで僕がボルゲーノさんの依頼を受けると、何かメリットがあるということですか?」
「ハッキリと約束は出来ないが⋯⋯君の妹の病を治す方法がわかるかもしれない」
「本当ですか!」
俺はボルゲーノさんに詰め寄る。
まだトアの病を治す方法について、何の糸口も見つけられないでいた。
まさか冒険者になって、こんなに早く見つけられるとは思ってもみなかったぞ。
俺は嬉しさで思わずボルゲーノさんの手を握ってしまう。
「それでその方法はなんですか?」
「落ち着け。私が知ってる訳ではない。それに確実にわかる保証もないぞ」
「どんな小さな可能性でもいいです。教えて下さい」
「わかった。だがそのためには私の依頼を受けること、そして炊き出しが終わった後に少し時間をもらえないか」
「わかりました。よろしくお願いします」
こうして俺は、トアの病を治す方法がわかるかもしれないということで、気持ちが高揚しながら炊き出しの手伝いをするのであった。
バッツ達とボルゲーノさん、屋敷の人達数人で訪れた場所は孤児院だった。
そして何故かバッツ達は驚いた表情を浮かべている。
「どうしたの? 三人はここを知っているのかな?」
「知ってるも何も、ここは俺達が住んでいる所だ」
「そうなんだ」
バッツ達もまさか自分の住んでいる場所の炊き出しをするとは、思っても見なかったと言った所か。
「もしかしていつも炊き出しや、服とかの支援をしてくれてたのってボルゲーノさんだったんですか?」
カリンさんの問いに、ボルゲーノさんは顔を逸らしながら頷く。
表情は仏頂面だけどもしかして照れているのか。
「いつもありがとうございます。私達が生きていられるのはボルゲーノさんのおかげです」
「気にするな。私は私の思惑があってやっていることだ」
「それでもお礼は言わせて下さい」
カリンさんはほんとうにしっかりしているな。とても十歳には見えない。
「でもいつまてもお世話になる訳にはいきませんよね。私達は一流の冒険者になって、自分達で孤児院を支えられるがんばります」
もしかしてバッツ達がお金を稼ぎたい理由って、孤児院に寄付するためなのか? 俺は益々この子達が気に入ったぞ。
「そんなことより、子供達がお腹を空かせているんじゃないか? 早く炊き出しの手伝いを頼む」
「わ、わかりました」
カリンさん達は慌てた様子で炊き出しの手伝いに向かう。
さて、俺も行った方がいいよな。一応依頼としては荷物を運び終えたけど、やれることはあるだろう。
俺は炊き出しの手伝いをするため、カリンさん達の方へ向かう。
「待て」
しかし俺の足は、ボルゲーさんの言葉で止められた。
「僕ですか?」
「ああ。ちょっと話がしたい。来てくれるか」
「わかりました」
俺はボルゲーノさんの後についていく。すると人気のない孤児院の建物の裏まで連れて行かれた。
「先程も話したが、私は信頼でき優秀な者を探している。そして君はその条件を満たしている」
「評価してもらえて嬉しいですね」
わざわざここに来て言うことじゃないだろう。本題はこの後かな。
「今後私個人が君に依頼を出したいと思っている。受けてもらえないだろうか? もちろん報酬は弾ませてもらう」
「それは依頼内容によります」
違法な依頼はお断りしたいし、長期間拘束される依頼はごめんだ。俺の目的はあくまでトアの病を治すことだからな。
「依頼は⋯⋯主に護衛の任務だ」
「護衛⋯⋯ですか」
指名して依頼するってことは普通の一般人の護衛じゃないだろう。それならボルゲーノさんの護衛? それとも⋯⋯
「何か護衛に対して、求めているスキルや条件があるのか、もしくは⋯⋯護衛対象の人が高貴な人とか⋯⋯」
「なっ!」
どうやら今のボルゲーノさんの反応からして当りのようだ。おそらく貴族の護衛だと思う。だけど貴族には私設の兵とかいるようなイメージだけど。
「驚いたな。君はとても聡いようだ。子供だと思って話さない方がよさそうだ」
げっ! 余計なことを口にしてしまった。俺が異世界転生者とバレることはないとは思うけど、少し自重した方がよさそうだ。子供だと侮ってくれた方が相手は油断してくれるしな。
「聡い? 聡いってどういう意味?」
「賢いってことだ」
俺は中身が大人だとバレないように演技する。
アカデミー賞ものの演技に、ボルゲーノさんはきっと騙されてくれただろう。
「話が逸れたな。それで依頼を受けてくれるだろうか」
「護衛の対象って誰なんですか?」
「それは依頼を受けてくれないと言うことはできない」
言うことはできない?
貴族でも冒険者を雇うことは普通にある。だけど名前を出せないとなると、よほどの事情があるのかかなり高貴な人⋯⋯まさか皇族とか。
貴族の権力闘争や跡目争いに巻き込まれるのはごめんだ。依頼料はいいかもしれないけど、相手から恨みも買いそうだしな。
「申し訳あり⋯⋯」
「君に取っても悪い話ではないぞ」
俺は断るつもりでいたけど、ボルゲーノさんが気になる言葉を口にしてきた。
「どういうことでしょうか?」
「君の妹についてだ。不治の病にかかっているそうじゃないか」
まさか俺だけではなく、トアのことも調べたのか!
返答次第で、俺はこの人のことを許せなくなるぞ。
「勘違いしないでくれ。別に昨日今日で調べた訳ではない。さっきも話したように、私は信頼でき優秀な者を探すため、常にこの街で情報収集していた。その中で不治の病に犯されている、君の妹のことを知っただけだ」
本当に日頃から情報収集をしていたなら、トアのことを知っていてもおかしくはないけど、どこか釈然としない気持ちになる。
「それで僕がボルゲーノさんの依頼を受けると、何かメリットがあるということですか?」
「ハッキリと約束は出来ないが⋯⋯君の妹の病を治す方法がわかるかもしれない」
「本当ですか!」
俺はボルゲーノさんに詰め寄る。
まだトアの病を治す方法について、何の糸口も見つけられないでいた。
まさか冒険者になって、こんなに早く見つけられるとは思ってもみなかったぞ。
俺は嬉しさで思わずボルゲーノさんの手を握ってしまう。
「それでその方法はなんですか?」
「落ち着け。私が知ってる訳ではない。それに確実にわかる保証もないぞ」
「どんな小さな可能性でもいいです。教えて下さい」
「わかった。だがそのためには私の依頼を受けること、そして炊き出しが終わった後に少し時間をもらえないか」
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