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四人での生活
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「二、ニナさん!? 何でここにいるんですか!」
そう。鏡に写っていたのはニナさんだった。ルリシアさんならともかくニナさんがここにいるなんておかしくないか?
「何故? 浴室にいるのはお風呂に入るためと決まっているじゃないですか」
「そんな当たり前のことを聞いているんじゃなくて! し、しかも裸で!」
「これはおかしなことを仰いますね。お風呂に裸で入らない人がいるんですか?」
「いや、いないけど⋯⋯でもここは僕の部屋のお風呂だよ」
「えっ?」
えじゃないよ。俺の方がえっ? って言いたいよ。
「そのようなことよりお背中を流しましょうか? それとも前の方が⋯⋯エッチですね」
「ど、どっちがエッチですか! いきなりお風呂に入ってきて非常識ですよ!」
「非常識ですか⋯⋯二国の姫を非常識と呼ぶとはユート様は凄い人ですね」
「えっ?」
そしてこの時、背後にニナさん以外の気配を感じた。
「ちょっと狭くありませんか」
「そんなことないよ。四人くらいなら普通に入れると思うけど」
鏡越しに後ろを確認すると、ルリシアさんとカレンさんまで浴室に乱入してきたのだ。
「二人ともなんでお風呂に入ってきてるの!」
「もしかしてニナと二人っきりが良いのでしょうか」
「しばらくの間同じ部屋で暮らすから、仲良くなるために裸の付き合いがいいなって思って」
何でカレンさんまで浴室に!
ん? ちょっと待てよ。今ルリシアさんがとんでもないことを口にしたような⋯⋯
「同じ部屋で暮らすってどういうこと?」
いつそんな話が決まったんだ。俺が風呂に入っている時か。
「えっ? お店の裏でこれから一緒にいるって話したと思うけど。ユートくんも頷いてだよね」
た、確かにそうだけど。そういう意味じゃなかった。
「あれはその⋯⋯学園ではなるべく一緒にいるって意味で⋯⋯同じ部屋で暮らすという意味ではなくて⋯⋯」
「うぅ⋯⋯女二人で、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えろと。ユート様は私とお嬢様が仮面の者達に襲われてもいいというのですね」
ニナさんが顔を両手で覆い、涙を流している。
いや、これ絶対に泣いてないだろ。
「わたくしはどちらでもいいですけど、ユートがどうしても仰るなら」
「ユートくんは優しいから二人に出ていけなんて言わないよね?」
どうやら俺の味方はいないようだ。
正直ノーと言いたいけど、お姫様二人が決めたことに反論出来るわけがない。
俺は渋々一緒に住むことは認める。
だが⋯⋯
「わかりました。だけどお風呂は一人で入らせて下さい!」
「え~⋯⋯いつも一緒に入ってるじゃない。ほら、私が頭と背中を洗ってあげる」
「では私は右足と右手を」
「仕方ないですわね。わたくしは左足と左手を洗って差し上げますわ」
「じ、自分でできるよ」
「遠慮しないでいいから」
俺の言葉は三人に届かず、身体が泡立てられていく。
そして十分後には、俺の身体は隅々まで洗われてしまうのであった。
俺は心の中で、悲しみの涙を流しながらお風呂から出る。
目を閉じていたこともあり、逃げ出すことも出来なかった。
十歳の子供とはいえ、三人は裸を見られることに抵抗はないのだろうか。
前の世界なら女湯は小学生から入ってはいけないと、条例があったのに。この世界の倫理観は俺が思っているものとは違うようだ。
ともかくこれでお風呂の時間は終わった。欲望に負けず堪えた自分を褒めてあげたい。
「それじゃあ部屋割りだけど、ユートくんの部屋は私とユートくんが。私の部屋はカレンちゃんとニナさんが使うってことでいいかな?」
「それが無難ですわね」
「何かあった時に駆けつけることが出来るように、二つの部屋を分けるドアは開けておくけどいい?」
「いいですわ」
本当はルリシアさんの部屋に三人で泊まってほしいけど、俺の意見は通らないだろうな。
「後は必要な荷物を運ぶだけですわ。ユートも手伝って頂いけませんか?」
「いいよ」
「私も手伝う」
こうして俺とルリシアさんはカレンさんとニナさんの引っ越しを手伝い、奇妙な四人での生活が始まるのであった。
そう。鏡に写っていたのはニナさんだった。ルリシアさんならともかくニナさんがここにいるなんておかしくないか?
「何故? 浴室にいるのはお風呂に入るためと決まっているじゃないですか」
「そんな当たり前のことを聞いているんじゃなくて! し、しかも裸で!」
「これはおかしなことを仰いますね。お風呂に裸で入らない人がいるんですか?」
「いや、いないけど⋯⋯でもここは僕の部屋のお風呂だよ」
「えっ?」
えじゃないよ。俺の方がえっ? って言いたいよ。
「そのようなことよりお背中を流しましょうか? それとも前の方が⋯⋯エッチですね」
「ど、どっちがエッチですか! いきなりお風呂に入ってきて非常識ですよ!」
「非常識ですか⋯⋯二国の姫を非常識と呼ぶとはユート様は凄い人ですね」
「えっ?」
そしてこの時、背後にニナさん以外の気配を感じた。
「ちょっと狭くありませんか」
「そんなことないよ。四人くらいなら普通に入れると思うけど」
鏡越しに後ろを確認すると、ルリシアさんとカレンさんまで浴室に乱入してきたのだ。
「二人ともなんでお風呂に入ってきてるの!」
「もしかしてニナと二人っきりが良いのでしょうか」
「しばらくの間同じ部屋で暮らすから、仲良くなるために裸の付き合いがいいなって思って」
何でカレンさんまで浴室に!
ん? ちょっと待てよ。今ルリシアさんがとんでもないことを口にしたような⋯⋯
「同じ部屋で暮らすってどういうこと?」
いつそんな話が決まったんだ。俺が風呂に入っている時か。
「えっ? お店の裏でこれから一緒にいるって話したと思うけど。ユートくんも頷いてだよね」
た、確かにそうだけど。そういう意味じゃなかった。
「あれはその⋯⋯学園ではなるべく一緒にいるって意味で⋯⋯同じ部屋で暮らすという意味ではなくて⋯⋯」
「うぅ⋯⋯女二人で、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えろと。ユート様は私とお嬢様が仮面の者達に襲われてもいいというのですね」
ニナさんが顔を両手で覆い、涙を流している。
いや、これ絶対に泣いてないだろ。
「わたくしはどちらでもいいですけど、ユートがどうしても仰るなら」
「ユートくんは優しいから二人に出ていけなんて言わないよね?」
どうやら俺の味方はいないようだ。
正直ノーと言いたいけど、お姫様二人が決めたことに反論出来るわけがない。
俺は渋々一緒に住むことは認める。
だが⋯⋯
「わかりました。だけどお風呂は一人で入らせて下さい!」
「え~⋯⋯いつも一緒に入ってるじゃない。ほら、私が頭と背中を洗ってあげる」
「では私は右足と右手を」
「仕方ないですわね。わたくしは左足と左手を洗って差し上げますわ」
「じ、自分でできるよ」
「遠慮しないでいいから」
俺の言葉は三人に届かず、身体が泡立てられていく。
そして十分後には、俺の身体は隅々まで洗われてしまうのであった。
俺は心の中で、悲しみの涙を流しながらお風呂から出る。
目を閉じていたこともあり、逃げ出すことも出来なかった。
十歳の子供とはいえ、三人は裸を見られることに抵抗はないのだろうか。
前の世界なら女湯は小学生から入ってはいけないと、条例があったのに。この世界の倫理観は俺が思っているものとは違うようだ。
ともかくこれでお風呂の時間は終わった。欲望に負けず堪えた自分を褒めてあげたい。
「それじゃあ部屋割りだけど、ユートくんの部屋は私とユートくんが。私の部屋はカレンちゃんとニナさんが使うってことでいいかな?」
「それが無難ですわね」
「何かあった時に駆けつけることが出来るように、二つの部屋を分けるドアは開けておくけどいい?」
「いいですわ」
本当はルリシアさんの部屋に三人で泊まってほしいけど、俺の意見は通らないだろうな。
「後は必要な荷物を運ぶだけですわ。ユートも手伝って頂いけませんか?」
「いいよ」
「私も手伝う」
こうして俺とルリシアさんはカレンさんとニナさんの引っ越しを手伝い、奇妙な四人での生活が始まるのであった。
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