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さらに暴走

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「リウトちゃんが汚されちゃったよぉ」

 まだ言うのかこの姉は。
 二人の美少女が現れた後、一度暴走するコト姉をなだめたのだが、羽ヶ鷺へと帰る電車でまた駄々をこね始めた。

「何でリウトちゃんはあの子のキスを避けなかったの? いつもお父さんの拳を避けてるのに」 
「あの時は不意をつかれて。俺だってもし気づいていたら⋯⋯」

 避けたのか? いや、避けなかった気がする。

「まさか本当はリウトちゃんもあの子のことが好きで⋯⋯せめてお姉ちゃんは正妻であの子は側室にして!」
「コト姉は何を言ってるんだ。勝手に人をハーレム願望があるように言わないでくれ」

 だがコト姉の言うことはある意味当たっている。男に生まれてハーレムを望まない奴はいるだろうか? いや、いない!

「ちょっとあそこの男の子ハーレムだって」
「最近の若い子の考えはすごいわ」
「私も後10年若ければそのハーレムに⋯⋯」

 帰りの電車は行きの時とは違い空いていたため、俺達の声は向かいに座っているおばちゃん達に⋯⋯というかこの車両の人達に筒抜けだった。

「コト姉、ちょっと声が大きいって。ほら、みんな見てるよ」
「だってリウトちゃんがあ⋯⋯」

 これは何を言ってもしばらく機嫌は治らなそうだ。だけど頼むから機嫌を悪くするなら誰もいない所でしてほしい。

「リウトちゃん、キスっていうのは恋人とか夫婦じゃなきゃしちゃいけないんだよ」

 あなたの妹は恋人でも夫婦でもないけどキスしてきたけどなと思ったが、そのことを言ってしまうとコト姉はさらに暴走してしまうから黙っている。

「それじゃあコト姉ともキスができないということだな」

 姉弟なんだからキスはできない。これは道理である。

「お姉ちゃんはリウトちゃんと結婚するからいいの!」
「姉弟は結婚できないぞ」
「そんなの知らないよ!」
「いや、それは知ってもらわないと困るんだが⋯⋯」

 コト姉がさっきから支離滅裂なことを口にして手に終えない。
 それともまさかこれまでのは演技で、本当は俺と姉弟じゃないことを知っているのか! 
 それならば弟と結婚と言い張るのも納得出来てしまう。

「えっ? まさか本当の姉弟なの?」
「禁断の恋ってやつね」
「危険だと思っていても愛してしまう⋯⋯その気持ちわかるわ」

 あれ? 何だがおばちゃん達は意外に好意的な意見? 俺の価値観がおかしいのか?

「と、とにかくそろそろ羽ヶ鷺に着くから降りるぞ」
「リウトちゃん待ってよ」

 ちょうどタイミング良く羽ヶ鷺に到着したので、俺は電車を降りるとコト姉も後を着いてきた。

「とにかくリウトちゃんはあの子と二人で会っちゃだめだからね。わかった?」
「わかったわかった」

 とりあえずコト姉がしつこく茶色の瞳の子のことを言うので、俺は適当に返事をするのであった。
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