姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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お嬢様はただ者じゃない

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「天城様、どうぞお乗り下さい」

 玄関から外へ出ると、そこには黒塗りの車があり、ソフィアさんがドアを開け俺を待ち構えていた。

「こ、これはまさか!」
「はい。ロールスロイスというやつです。庶民には一生乗れない車なので、幸運を使い果たした天城様はこれから転げ落ちる人生になると思いますが、どうか諦めずに頑張って生きてください」
「俺はそこまで運を使っちゃうの!」

 ソフィアさんは俺を様付けで呼んでくれるが、滅茶苦茶辛辣なことを言っている。 

「もしかしてだけどソフィアさんって俺のこと嫌い?」
「私はアリアお嬢様の御命令に従うだけなので、誰かを好きとか嫌いとかそういう概念はありません。例え相手が虫けら以下の存在であったとしても感情を殺して仕事をするだけです」
「そ、そうなんだ」

 それは遠回しに俺のことを虫けら以下と言っているのだろうか。だが本当だったら怖いので俺は金髪メイドに真意を聞くことができない。

「それじゃあ失礼しま~す」

 俺はロールスロイスの後部座席に入ると、そこは俺の知っている車内の空間ではなかった。
 車の全長が長いこともあり、車内は広々としていて金持ちが優雅に過ごせる車だということに納得した。

「それでは羽ヶ鷺学園までお願いします」

 ソフィアさんは助手席に座り、運転手さんに行き先を告げると車はゆっくりと動き出す。

「西条さんって今日が転校初日だよね? クラスは決まってるの?」

 俺は高級車の車内で落ち着かないため、まずは西条さんに当たり障りのないことを質問してみる。

「私とソフィアはDクラスよ。残念ながらリウトとはクラスが違うみたい。後私のことは⋯⋯アリ⋯⋯アリアで良いわよ。こっちもリウトって呼んでるし」
「わかった。これからはアリアって呼ばせてもらうよ」

 今、アリアは何か言い淀んだのは気のせいか?
 それとソフィアさんは年上に見えたけどどうやら俺と同じ年のようだ。だがそれより俺がAクラスだとアリアは知っているんだな。
 どうやらこのお嬢様は俺の情報を色々と持っているようだ。それなら一番気になることを聞いてみるか。

「アリアは俺と以前会ったことがあるのか?」
「どうしてそう思うの?」
「昨日悪漢から助けた時、昔と変わってないって言ってたから」

 だけど俺はこの子と会った記憶はない。もしかしたら俺が忘れているだけかもしれないから、知っているのなら教えてほしい。

「そんなこと言った? もう忘れてしまったわ」

 昨日の出来事なのに忘れたって⋯⋯何か俺に隠したいことでもあるのか?

 俺はアリアの真意を確かめるため、瞳に視線を送るが表情に変化はなく、平然と俺の視線を受け止めていた。
 普通なら付き合ってもいない同学年の異性から近くで視線を送られたら、照れるなり、目を反らすなりするはずだが、どうやらこのお嬢様は見た目どうり普通じゃないようだ。油断するといつのまにか手玉に取られていそうで怖い。

「それより羽ヶ鷺高校ハイスクールのことが聞きたいわ。何か面白い試験テストがあるんでしょ」

 話題を代えるということは俺とのことを話す気はないということか。
 ならば今はそれでいい。俺は調べるのも好きだが謎を解くことも好きなんだ。

「ああ、この間は封鎖サッカーというのを行って――」

 俺は軽い気持ちでアリアに前回のエクセプション試験のルールを説明すると⋯⋯。

「なるほど⋯⋯オフサイドがないなら女子をゴール前に置いてシュートを決めて、相手ゴールキーパーの首に3つリングを着ければ勝てるビクトリーできる試験ね」

 驚いた。アリアは少し説明を聞いただけで俺達がCクラスに勝った方法を導きだした。
 お嬢様らしく英才教育をしているのか、この子は滅茶苦茶知力が高そうだ。

「確かに俺達はその方法で相手のクラスに勝ったけど⋯⋯すごいな。すぐにその考えが出せるなんて」
「⋯⋯昔教えてもらったの。作戦を立てる時は相手を調べて、あらゆる方向から考えを導き出せって」

 全くもって同意だ。その人は俺と同じような考えをする奴だな。

「お嬢様⋯⋯そろそろ学園に到着致します」
「わかったわ」

 ロールスロイスは羽ヶ鷺学園の校門前へと止められ、俺達は車を降りる。
 この時俺は突然現れたアリアとソフィアさん、そして高級車のロールスロイスに頭を奪われていたため、大きな失念をしていたことに気づく⋯⋯目の前にいる笑顔をした鬼によって。
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