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少女の正体

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 俺はアルテナ様に言われた通りルナさんの鑑定結果を見てみる。

 名前:ルナ
 性別:女
 種族:人間
 レベル:22/100
 称号:商会の代表者・ズーリエの街の代表者・異世界転生者・むっつりスケベ・聖女
 好感度:A+ 
 力:58
 素早さ:102
 耐久力:67
 魔力:1232
 HP:101
 MP:302
 スキル:魔力強化C・簿記・料理・掃除・神降ろし
 魔法:神聖魔法クラス4

 前回鑑定で見た時は称号で【???】があったけど異世界転生者に変わっている。そしてアルテナ様がルナさんの身体を使って話すことが出来たのは聖女の称号とスキルの神降ろしがあったからだろう。
 神様をその身に宿らせる神降ろしを使えるなんてこれはルナさんが異世界転生者だからなのか?
 それと俺とは違って女神の祝福を受けし者がない。アルテナ様はルナさんの異世界転生には関与していないのか? それについてはまたアルテナ様に会った時に聞いてみるとしよう。

 そして俺は次に少女に向かって鑑定のスキルを使用する。

 名前:リリナディア
 性別:女
 種族:魔族
 レベル:38/350
 称号:魔王の卵・アンラッキー・不幸の招き手
 好感度:E  
 力:128
 素早さ:201
 耐久力:562
 魔力:2321
 HP:1032
 MP:1321
 スキル:魔力強化B・轗軻数奇かんかすうき(常時発動)
 魔法:暗黒魔法クラス3

「ま、魔王の卵」

 俺はリリナディアのステータスを視て思わず声をあげてしまう。一応声は抑えたけど外に聞こえてないよな。
 俺は探知スキルで外にいるラフィーネさん達を視てみるが特に驚いている様子はなかったから俺の声は外に漏れていないのだろう。

 魔王って確か過去にこの世界を滅ぼしかけた存在だよな!
 可愛らしい顔でベッドで寝ているがこの子は魔王⋯⋯今はまだ卵と記載されているから脅威ではないかもしれないけど成長すればいずれこの世界を⋯⋯。

 今この子は寝ているため無防備だ。後に災いの種となるならいっその事⋯⋯。

 俺はベッドの側に近づきリリナディアを見下ろす。
 リリナディアは額に汗を浮かべているが呼吸は整っており、スヤスヤと眠っていた。
 今なら簡単には命を奪うことができる。

 出会った時の傷の多さからリリナディアはけして幸せな人生を送っていたわけじゃないだろう。

 だが⋯⋯。

 俺は眠っているリリナディアに手を伸ばす。

 そして乱れている髪の毛を直し、頭を撫でる。

 いくらこの子が魔王の卵だとしても、将来俺の敵になるかもしれないとわかっていても、まだこの子のことを何も知らないのに手にかけることなどできない。

 それにアルテナ様から必ず護ってあげてって言われているしな。だけどもしアルテナ様が悪い女神だったとしたら俺は悪に加担することになってしまう。

「失礼なことを考えるな」

 突然背後から声が聞こえ、枕が飛んで来たので俺は手で受け止める。

「ルナさん?」

 しかしルナさんの方を見るとまだ目を覚ましておらず、ベッドの枕だけがなくなっていた。

 まさかとは思うけど俺が悪に加担することになるって考えたことを読んでルナさんに乗り移り枕を投げてきたのか? そんなどうでもいいことに力を使うくらいならもう少し色々聞きたいことがあるんだが。

 俺はアルテナ様のしょうもない行動にあきれるしかない。

 とにかく今はルナさんとリリナディアが起きるのを待つしかないな。そうと決まればリリナディアを医者にみせたい所だけど魔族ってバレたら大変なことになってしまう。ここは1度ラフィーネさんに相談するか。ちょうど部屋の外で待っているしな。

 俺は部屋の外へ行きドアの前にいるラフィーネさんに声をかける。

「ラフィーネさんちょっといいですか?」
「ルナさんは大丈夫なの?」
「今は寝ています。それでラフィーネさんと2人で話したいことが⋯⋯」
「いいわ。中で話しましょ。2人はここで待っていて」

 ラフィーネさんは話が早くて助かるな。
 シオンさんとテッドを信用していない訳じゃないけどリリナディアについて知っている人は少ない方がいいだろう。
 ただルナさんに余計な負担をかけないためにも異世界転生者については黙っていよう。まあ言っても信じてもらえない可能性の方が高いと思うけど話すにしてももう少し落ち着いてからにするべきだな。

 俺はラフィーネさんを部屋の中へと招き入れるとさっそく本題について話をする。
 だがその前に⋯⋯。

「ラフィーネさん、これから俺が何を言っても大きな声をあげないで下さいね」
「それは声を出せっていう振りかしら?」
「違いますから」

 芸人か! と突っ込みたい所だけどリリナディアの状態が気になるので黙っておく。

「怖い顔しないで。良い男が台無しよ。それで何かしら?」
「実はこの子なんですけど⋯⋯魔族みたいです」
「魔族? 初めて見たわ。昔魔王が勇者様に破れたことによって魔族は辺境に追いやられたって聞いたことがあるけど⋯⋯人とあまり変わらないのね」

 確かに禍々しい感じがリリナディアからは感じられない。むしろ魔王化したハインツの方が魔族っぽい気がする。

「それがリックさんが伝えたかったこと? そのくらいのことで冷静沈着な私を驚かすことは出来ないわよ」
「いえ、本題はこれからでして⋯⋯」
「魔族より驚く情報を聞かせてもらえるのかしら」

 魔族と聞いて狼狽えないなんてさすが元勇者パーティーだな。これなら魔王と伝えても大丈夫そうだ。

「この子は魔族の中でもその⋯⋯王様というか⋯⋯」
「えっ! そ、それってまさか⋯⋯」
「はい。魔王みたいです」
「ま、まお! もごもご」

 ラフィーネさんは約束を破って声を上げたため、俺は急いで右手で口を塞ぐ。
 何が冷静沈着だよ! 滅茶苦茶大声を上げているじゃないか!

「ラフィーネ様!」

 そして主の叫び声を聞いてシオンさんとテッドが部屋に乱入してくる。

「リ、リックお前まさか⋯⋯」

 2人に会話を聞かれたか! それならもう素直にシオンさんとテッドにもリリナディアのことを話した方がいいかもしれない。
 だがこの時テッドはとんでもない勘違いをし始めだ。

「リック⋯⋯ラフィーネ様だけを部屋に入れて怪しいと思ったけどまさかお前⋯⋯」

 ん? 何か変な風に話がそれていないか?

「襲うつもりだったのか!」
「どうしてそうなる!」

 こいつは何を言っているんだ! 確かにラフィーネさんは綺麗だけど横に女の子が2人寝ているのにそんなことするか!

「いえ、私にもそう見えます。リックくんがラフィーネ様の口を塞ぎそして⋯⋯」
「ち、違いますから!」

 確かに客観的に見るとそのような体勢になっているけど濡れ衣だ。

「だが一時の感情に任せて行動するのは良くないと思うぜ。ラフィーネ様は行き遅れだしお転婆だからお前に乗りこなせるか怪しいものだ」

 おいおい、主に向かってそんなことを言っていいのか? どうなってもしらないぞ。

「テッ~ドさ~ん⋯⋯行き遅れ? お転婆? 誰のことを言っているのかしら?」

  ひぃっ! ラフィーネさんから太陽のようなまぶしい笑顔が消え、鬼の形相となってテッドに詰め寄っている。

「えっ、いや、その⋯⋯」

 さすがに今のラフィーネさんの状態を見てテッドは恐れをなし、まともに喋ることが出来なくなっていた。

「少しお仕置きが必要のようね。いっぺん、死んでみる?」

 そしてラフィーネさんから放たれた右のストレートがテッドの顔面に突き刺さり、テッドは地獄へと落ちるのであった。

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