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テンプレはどこの世界にもあるもの

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 皇帝陛下からの手紙を受け取った翌日。俺達はドルドランドに向かって出発していた。

「ノノ、ズーリエ以外の街に行くの初めてだからとっても楽しみ~。それにお兄ちゃんが生まれ育った街なんだよね」
「あんまり期待しないでほしいなあ。今は凄く荒れてるみたいだし」

 俺の左隣ではしゃいでいるノノちゃん。

「私はあまり出歩きたくない。私の護衛をしてもらわきゃいけないから仕方なくついて行くけど」

 右隣には少し不満気にしているリリナディア。

「確かドルドランドには歓楽街があるんだよな! 早く行こうぜ!」

 そして前にはテンション高めで馬車の御者をしていて子供がいるのに空気が読めない発言をしているテッド。

 俺達はこの4人のメンバーに加え、ズーリエまで皇帝陛下の手紙を届けにきた兵士、マークさんとドルドランドへと向かっていた。
 今回何故このメンバーになったかというとノノちゃんは悪夢の件があるので俺とは離れられず、リリナディアはいつシャドーに狙われるかわからないためこれまた俺とは離れられず、そしてテッドはラフィーネさんからリリナディアを護るように言われているためついてきたという訳だ。

「ルナも来れれば良かったのに⋯⋯」

 ルナさん推しであるリリナディアは残念そうな表情をしていた。ルナさんはズーリエの街の代表であるから公務でもない限り街を出るのは難しい。ましてや今回は他国であるからよほどのことがないとドルドランドに来ることは出来ないだろうな。

「でもほら、リリナディアやノノちゃんが楽に旅が出来るように馬車を貸してくれたじゃないか」
「それは⋯⋯そうだけど⋯⋯」

 理解はしても納得は出来ないと言った所か。

「ノノもルナお姉ちゃんが来れなくて残念だけどリリナディアお姉ちゃんが一緒にいてくれるから嬉しいよ」

 ここでノノちゃんがリリナディアを機嫌を良くするためにフォローをしてくれる。ほんとうちの妹は良い子だな。

「そうね。私もノノが一緒にいてくれて楽しいわ」

 ノノちゃんのお陰でリリナディアの笑顔を見ることができたので、これで安心してドルドランドへ向かうことができる。

 そして俺達はグランドダイン帝国の国境付近にある関所まで行き、マークさんが兵士達に「この方達はを皇帝陛下の勅命でドルドランドへお連れしている」と宣言していたため、特に身体検査等をすることなくVIP待遇で国境を越えることができた。
 これはけっこう楽な旅になるかもしれない⋯⋯だがそう思えたのはジルク商業国までだった。
 何故ならグランドダイン帝国のドルドランド領に入り、1キロメートル程馬車を走らせていると⋯⋯。

 やれやれ、さっそくお出迎えか。

 探知スキルを使うと不穏な集団が草木の影に隠れている様子が視えた。

「この先の林で盗賊らしき人達が15人程待ち伏せているから気をつけて」
「了解だ」
「うん。ノノの目にも見えたよ」
「わかりました」

 俺は必要ないとは思うけど念のために皆に注意喚起を促し、そしてそのまま馬車は進んでいく。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 15人も盗賊がいるんでしょ? このまま何も準備しなくて突撃していいんですか!? というか何で15人盗賊が待ち伏せていることがわかるんですか!」
「うるせえなあ。大丈夫だから見てろや。あんたは自分の身を護ることだけを考えてな」

 マークさんだけが俺の言葉を聞いて1人あたふたしていた。
 たぶんこの先もこういうことが多々ありそうなのでここはマークさんを安心させるために実力を見せておくか。

 俺は御者をしているテッドとマークさんの元へと移動する。

「俺1人でやるからみんなは馬車を頼む」
「ひ、1人!? せめてここはみんなで戦いましょうよ! もしリックさんに何かあったら皇帝陛下からの命令を遂行出来なくなってしまいます」
「大丈夫ですよ。安心して見てて下さい」
「これが安心できますか!」

 マークさんは色々叫んでいるようだがもう遅い。馬車は既に林まで来ており、探知スキルで視た通り15人の盗賊が俺達を待ち伏せしていた。

「止まれ!」

 左眼に眼帯をした盗賊らしき者が大きな声を上げて俺達の馬車を止める。

「金目の物を置いていけ。そうすれば命だけは助けてやるぞ」

 どこの世界でもこういう時は似たようなことを言うんだな。
 眼帯を着けた盗賊はテンプレ通りの言葉を述べてきたため、俺は心の中で苦笑してしまう。

「頭! 馬車には女も2人乗っていますぜ!」
「ほう⋯⋯それなら女も置いていってもらおう。俺達が可愛がってやるから安心しな」

 今の言葉を聞いて安心する奴がこの世にいるのだろうか? バカなのかこな盗賊達は。

「黙ってないで何とか言いやがれ! ビビってんのか!」
「リ、リックさん⋯⋯私も戦います。あなた達が逃げる時間くらい稼いで見せますよ」

 どうやらマークさんは職務を忠実に守る良い兵士さんのようだ。だがこれ以上怖がらせるのも忍びないのでとっとと蹴りをつけるか。

「おっと。逃げようったってそうは行かねえぜ。草木の影から20人の射手がお前らを狙っているんだ。逃げたら容赦なく射たせてもらうからな」
「に、20人!?」

 マークさんは盗賊のハッタリにビビっているがそんなものは初めからいない。

「どうぞ。射てるものなら射って下さい」

 俺はそう言って馬車から飛び降り盗賊達と対峙する。

「い、いいのか? 本当に射つぞ? 射たれた後に後悔してもしらないからな」

 このように緊迫した状況? でもノノちゃんは何が起きるのか楽しそうに見ているし、テッドは暇なのか欠伸をしており、リリナディアに至っては目を閉じて寝ていた。

「射たないならこっちから行かせてもらう!」

 俺は土を蹴り、一瞬で眼帯をつけた盗賊との距離を詰めると顔面に右拳を打ち込み林にある大木の所まで吹き飛ばす。

「は、速い!」
「一撃で頭がやられただと!」

 そして盗賊の頭が吹き飛ばされたことで浮き足だった残りの盗賊達にも次々と顔面に拳を繰り出し大木まで吹き飛ばす。

「ふ、ふざけるなてめえ!」

 残りの盗賊達は短剣やシミターなどを手に襲いかかってくるが目を閉じてもかわせるような攻撃だったため、俺はかわしながらカウンターで顔面に拳を叩き込み、他の奴らと同じ様に大木まで吹き飛ばした。

 するとものの十数秒で15人いた盗賊達は気絶して、大木の前で山となって積み重なっていたのだった。
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