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11 お友達……お友達?
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バロック様とフュレイル侯爵令息様にお手紙を出したところ、快く出席と、友人を連れて行く、というお返事をいただいた。
むしろ、デビュタントの時に目立ってしまった私と、一緒にいた天使のようなジャスミン様と話したいという人は多かったらしく、なるべく厳選するけれど、という一文を添えて、総勢で15名程になる予定になった。
お客様は10名を予定していたし、スペースは広くとってある。お菓子の量を増やして、侍女ももう2人程つけて貰えば問題なさそうだ。ソファも、その日は他の部屋からも運び込んでもらって、全員座っても大丈夫なように調整するつもりだ。
このくらいの誤差ならば対応できる。喜んで当日を楽しみにお待ちしています、と手紙を締めて、お返事を出した。
――そして当日。お母様の助言に従って、踝丈のワンピースの様なドレスを誂えておいてよかった、と思った。
もう少し年齢層が上がると皆さまちゃんとしたドレスを着るそうだが、未婚の、私たちくらいの年齢層の令嬢のお茶会はこのような軽めの盛装が主らしい。
今日の私はオレンジ色のドレスの上に白いボレロ姿、白い踵の高いローファーという出で立ちで、ジャスミン様はパステルイエローの可愛らしいドレスだった。私との初めてのお茶会だから、と仕立てたらしい。いつもの服装も可愛らしいが、こうしてオシャレをするとやっぱり余計に可愛らしく見える。というか、可愛い。
「今日もとっても素敵ですわ、フリージア様! お客様をお迎えするのが楽しみですね」
「ジャスミン様もとてもよくお似合いよ。それに、一緒に居てくれて心強いわ」
これは本心からの言葉だった。もっと幼い頃から社交に精を出すべきだったかもしれないが、先日のデビュタントを思えば、デビュタントまで箱入り娘で育てられたのも仕方が無いかもしれない。
かといって、デビュタントで出来た友達はバロック様だけ。私から知り合えるように頑張らないと、待っていても私の元にお茶会の招待状など一通も来ないだろう。
そして一緒にお客様をお迎えする時間になった。馬車を停めておく場所もちゃんと今日は空けておいてもらっている。従者の方も休めるようにと手配済みだ。
最初のお客様はフュレイル侯爵令息様とバロック様だ。直接お招きしたのがこの2人だったので、少しほっとして出迎える。
「本日はお招きありがとうございます、こちらの花をよろしければ」
「ありがとうございます、バロック様。ご紹介が遅れました、親友のジャスミン様です」
そういって手渡された大きな花束は、今の時期蕾が膨らみ始めた薔薇と霞草の花束だった。お母様の目は千里眼かしら、と思いながら、あけておいた花瓶に生けてもらうよう侍女にお願いする。
「こんにちは、レディアン公爵令息様。本日はご一緒できて光栄です」
「ありがとうございます、ジャスミン嬢。――お前も、いつまでも見惚れていないで挨拶をしろ」
バロック様の横でぽうっとジャスミン様を見詰めていたフュレイル侯爵令息様が、はっとして意識を取り戻す。分かります、とっても可愛いですよね、ジャスミン様。
「本日はお招きありがとうございます。ローラン・フュレイルです。ぜひ、ローラン、と」
「改めまして、フリージア・ドントベルンです。私のこともどうか、フリージアと」
そう私が自己紹介をすると、ジャスミン様が、そんな、というような顔で私を見ている。どうしたのかしら。
「レディアン公爵令息様、フュレイル侯爵令息様、私のこともジャスミンとお呼びください」
何か決意を新たにしたようなジャスミン様が改めて名乗る。名前呼びは親しい間柄の印だ。これで4人とも名前を呼ぶ間柄になった。
ローラン様などは、ジャスミン様に名前を呼ばれて目頭を押さえている。こんなにジャスミン様を思ってくださっているのに、ジャスミン様が気にしているのはやはりバロック様のようだ。私がバロック様と話していると、やはり刺さる程視線を送っている。
招待のお客様はもう少し遅れてくるらしい。サロンへの案内を執事に任せて、ひとまず先にサロンへ向かうことにした。エントランスからも近い場所なので、お部屋の入口で迎えても非礼には当たらないだろう。
「バロック様、今後とも『よろしくお願いします』わ」
「あぁ、こちらこそ『よろしくお願いする』ね、ジャスミン嬢」
サロンまでの道すがら、そんな会話をしている二人と、いつまでもジャスミン様に見惚れるローラン様を見て、私は誰をどう応援したものかを真剣に考えてしまった。
むしろ、デビュタントの時に目立ってしまった私と、一緒にいた天使のようなジャスミン様と話したいという人は多かったらしく、なるべく厳選するけれど、という一文を添えて、総勢で15名程になる予定になった。
お客様は10名を予定していたし、スペースは広くとってある。お菓子の量を増やして、侍女ももう2人程つけて貰えば問題なさそうだ。ソファも、その日は他の部屋からも運び込んでもらって、全員座っても大丈夫なように調整するつもりだ。
このくらいの誤差ならば対応できる。喜んで当日を楽しみにお待ちしています、と手紙を締めて、お返事を出した。
――そして当日。お母様の助言に従って、踝丈のワンピースの様なドレスを誂えておいてよかった、と思った。
もう少し年齢層が上がると皆さまちゃんとしたドレスを着るそうだが、未婚の、私たちくらいの年齢層の令嬢のお茶会はこのような軽めの盛装が主らしい。
今日の私はオレンジ色のドレスの上に白いボレロ姿、白い踵の高いローファーという出で立ちで、ジャスミン様はパステルイエローの可愛らしいドレスだった。私との初めてのお茶会だから、と仕立てたらしい。いつもの服装も可愛らしいが、こうしてオシャレをするとやっぱり余計に可愛らしく見える。というか、可愛い。
「今日もとっても素敵ですわ、フリージア様! お客様をお迎えするのが楽しみですね」
「ジャスミン様もとてもよくお似合いよ。それに、一緒に居てくれて心強いわ」
これは本心からの言葉だった。もっと幼い頃から社交に精を出すべきだったかもしれないが、先日のデビュタントを思えば、デビュタントまで箱入り娘で育てられたのも仕方が無いかもしれない。
かといって、デビュタントで出来た友達はバロック様だけ。私から知り合えるように頑張らないと、待っていても私の元にお茶会の招待状など一通も来ないだろう。
そして一緒にお客様をお迎えする時間になった。馬車を停めておく場所もちゃんと今日は空けておいてもらっている。従者の方も休めるようにと手配済みだ。
最初のお客様はフュレイル侯爵令息様とバロック様だ。直接お招きしたのがこの2人だったので、少しほっとして出迎える。
「本日はお招きありがとうございます、こちらの花をよろしければ」
「ありがとうございます、バロック様。ご紹介が遅れました、親友のジャスミン様です」
そういって手渡された大きな花束は、今の時期蕾が膨らみ始めた薔薇と霞草の花束だった。お母様の目は千里眼かしら、と思いながら、あけておいた花瓶に生けてもらうよう侍女にお願いする。
「こんにちは、レディアン公爵令息様。本日はご一緒できて光栄です」
「ありがとうございます、ジャスミン嬢。――お前も、いつまでも見惚れていないで挨拶をしろ」
バロック様の横でぽうっとジャスミン様を見詰めていたフュレイル侯爵令息様が、はっとして意識を取り戻す。分かります、とっても可愛いですよね、ジャスミン様。
「本日はお招きありがとうございます。ローラン・フュレイルです。ぜひ、ローラン、と」
「改めまして、フリージア・ドントベルンです。私のこともどうか、フリージアと」
そう私が自己紹介をすると、ジャスミン様が、そんな、というような顔で私を見ている。どうしたのかしら。
「レディアン公爵令息様、フュレイル侯爵令息様、私のこともジャスミンとお呼びください」
何か決意を新たにしたようなジャスミン様が改めて名乗る。名前呼びは親しい間柄の印だ。これで4人とも名前を呼ぶ間柄になった。
ローラン様などは、ジャスミン様に名前を呼ばれて目頭を押さえている。こんなにジャスミン様を思ってくださっているのに、ジャスミン様が気にしているのはやはりバロック様のようだ。私がバロック様と話していると、やはり刺さる程視線を送っている。
招待のお客様はもう少し遅れてくるらしい。サロンへの案内を執事に任せて、ひとまず先にサロンへ向かうことにした。エントランスからも近い場所なので、お部屋の入口で迎えても非礼には当たらないだろう。
「バロック様、今後とも『よろしくお願いします』わ」
「あぁ、こちらこそ『よろしくお願いする』ね、ジャスミン嬢」
サロンまでの道すがら、そんな会話をしている二人と、いつまでもジャスミン様に見惚れるローラン様を見て、私は誰をどう応援したものかを真剣に考えてしまった。
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