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17話

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「ゾル──そこら辺でいいでしょ?」

「ユラ、そんな急かすなよ……まだ教えてない事もあるんだぞ?」

「……後で隊長に個別訓練受けたいの? 凄く睨んでるわよ?」

 確かに母さんは先程から射殺すぐらい見詰めているな……。これはさっさとやれという事だろう……。

「──!? それは拙いな……ロイ、訓練を開始しよう」

「あっ、その前に──気になってた事があるんで聞いて良いですか?」

「ん? あぁ、良いぞ。何だ?」

「2人はどこで知り合って、何故結婚したんですか?」

 聖騎士という危険な職業に夫婦2人共がしているのはまだ良い。冒険者も危険な事に変わりは無いし、母さん逹もそうだしね。

 だけどその出会いと結婚に至った過程が気になった。

 是非、今後の愛する人を探す為の参考にしたい。

「俺達は元々同僚だったんだ。確か──俺が守ってる内にユラが惚れて、俺も好きになってプロポーズしたんだったかな……」

「そうなんですね! 盾役でもモテるんですか!?」

 実は盾使いってモテるのか!? 

「モテないぞ? 盾役は地味だからな。剣士とかの方がモテる……だが──仲間を守り通すとな? こうやって美人な嫁さんが惚れてくれる事もあるんだ。本当、俺には勿体ない嫁さんだ」

 そうか守ってる内に育む愛もあるのか……僕もそんな風になれるかな?

「おぉ! なるほど! 知らない人にモテるより、そっちの方が良いですねっ!」

「……全く……何を惚気てるのよ! 早くしないと──ほら来たわよ! が!」

 催促? ──って飛ぶ斬撃!? 母さん、しかも規模が大きいよ!?

「あちゃー、隊長は相変わらず短期だな……。よっと──」

 師匠はいとも簡単に無力化する。

「凄いっ!」

 僕なら受けたら吹っ飛ばされるし、大怪我しかしないから避けるぐらいしか選択肢が無いけど、真っ向から防ぐ事が出来るなんて信じられないっ!

「そうだろ? 伊達に『聖天』で守り手をしているわけじゃないんだぜ?」

「ゾル……次のは死ぬ気で避けるか防がないと死ぬわよ?」

「ははは、ユラ──俺は簡単には死なないぜ? ──げっ、マジか……」

「ほら、隊長の聖十字グランドクロスが来るわよ? ちゃんと守ってよね?」

 僕は母さんを見ると──

 光輝いていた。

 ……あれは見覚えがあるぞ?

 ……母さん……それは昔、ワイバーンを倒した技じゃ……そんなもの人に撃っていいのか!?

「し、師匠……あれ防げるんですか?」

「……本気を出せばな……たぶん……」

「なら、僕に見せて下さいっ!」

 あれを防げるなら是非見たいっ!

「ふっ、仕方ねぇな……ロイ──俺が盾の真髄を見せてやるっ! しかと目に焼き付けろっ!」

 俺の言葉に調子に乗った師匠はサムズアップする。

「はいっ!」

 師匠は大盾に替えて、集中する──

【直感】先生と『危機察知』先生は警鐘を鳴らしまくっているが、避ける素振りをしない師匠は防ぐ事が出来るのだろう!

 僕に盾の可能性を見せて欲しい!

「早く──始めなさいっ! 聖十字グランドクロス──」

 母さんはそう言いながら攻撃を放つ──


「……大丈夫なんでしょうね?」

「大丈夫なはず……隊長はまだ本調子じゃないはずだ……それに最愛の息子が近くにいるから──さすがに本気じゃないだろ……」

「逆にゾルを信頼してリハビリがてら本気出してたりは?」

「……あり得る……」

 そんな会話が聞こえてきた……。

 なるほど……先生達が警鐘鳴らしてるのはその為か……拙いかも?

 息を吸い込む師匠──

 すると先生達の警鐘が少しマシになった。

「ロイ──見ておけ。これがお前の父親と俺の流派──【ガスタール流盾術】だ──」

 母さんの聖十字グランドクロスが前にいる師匠に直撃する──

 凄い衝撃波がこっちにも来る。

 なんとか踏み止まるのが精一杯だ。

 師匠もなんとか止めるので精一杯そうだ。

「ぐぅぅ──これほぼ全盛期だろ……──ユラっ!」

「はいはい。隊長舐めてるからそうなるのよ……──火の槍ファイヤーランス──『多重展開』」

 師匠の掛け声でユラさんが複数の火の槍ファイヤーランスを母さんの聖十字グランドクロスに当てる。

「──ぬおぉぉぉっ! おらぁぁぁっ!!!!」

 師匠は盾を上に逸らしながら打ち上げる──

 すると、聖十字グランドクロスは空高く打ち上がっていく──


「はぁ……はぁ……ロイ……見たか? これが盾だ。身を持って仲間を守る──パーティの要だ」

「す、凄いです! 尊敬します! さすが師匠です!」

 死しか予感がしない攻撃でも守りながら防ぐ事が出来るんだな!

 僕もやってみたいっ!

「……そんなぼろぼろになって言っても説得力ないわよ──『回復』──」

「はっはっはっ──確かにな! ユラがいなかったら使! ロイ──これが愛の成せる連携だぞ?」

「バカ……」

 2人でいちゃいちゃが始まった。

 でも聞きたい事があるから僕は話しかける。

 子供だから空気は読まない事にしよう。

「師匠、あれってスキルって使ってるんですか?」

「そうだな。『鉄壁』『物質硬化』『身体強化』『魔力操作』『魔力硬化』『見切り』『予測』『剛腕』『受け流し(極)』『攻撃挑発』『誘導』とかスキルを色々使っているな……。それでも死ぬかと思ったがな……ユラの援護攻撃なかったら奥義使わないとヤバかったぜ……」

 おぉ、そんなにスキルを一気に使っていたのか……凄いなぁ~。僕も早く色々とスキルを習得して同じ事がしてみたいな!

「なるほど! ガスタール流盾術は受け流すのに特化してたりするんですか?」

「ガスタール流盾術というか、他の流派もそうなんだが──そのスキルの組み合わせを駆使する。そこに特有の型からオリジナリティを出す事が多い。ガスタール流盾術は主に仲間の守りに特化した盾術だ。話を聞くにロイはどちらかと言えば──回避盾寄りだろう。しかし、それだけではいつか守りたいと思った時に守れないかもしれない。だから俺はお前にガスタール流盾術の基礎を叩き込む」

 なるほど……流派によってスキルの組み合わせだけじゃなくて、型やどういう立ち回りをするかが違うのか……。

「──!? わかりました! よろしくお願いします! 師匠や父さんみたいになれるかわかりませんが、皆で生き残れる為に頑張ります!」

「それで良い……お前は本当カイルそっくりだな……」

「ちなみに父さんてどんな感じだったんですか?」

「あいつは人懐っこくてな? すげぇ良い奴だったな。守りに関してもユニークスキルもあったから凄かったぜ? 俺はカイルの兄弟子だが、あいつには勝てなかったな。そんで、あいつが聖騎士になる時にここに誘われたんだよ。強敵ばっかと戦鬪する事が多くて大変だったが──今では誘われて良かったと思ってるぜ? なんせ美人な嫁さん貰えたしな! ロイも頑張ればいつか可愛い嫁さん貰えるかもな!」

「僕も師匠みたいになります! そして美人な嫁さん貰います!」

「なら、訓練を開始しよう──ユラ、頼む」

「はいはい、ロイ君──頑張って?」

 避ける?

「何をですか?」

「私のよ」

「何故??」

 意味がわからないんですけど!?

 師匠を見る。

「……まぁ、あれだ。盾って色んな攻撃を受けなきゃいけないだろ? 当然ながら魔法攻撃も含まれる。ユラはバリエーション豊かな攻撃魔法が放てる。斬撃、刺突、打撃、波状攻撃それらを一瞬で判断して避けて防ぐ訓練だ。俺やカイルも乗り越えてる」

 え?

 つまり、それらの攻撃をこれからユラさんから放たれるの?!

「ちょ、ちょっと待って下さい! 僕まだ話しか聞いてませんよ!?」

 さっき基礎を叩き込むって言ったけど!?

「ん? あぁ、男なら根性で防げっ! その内わかるようになる! 型とか後で良いだろ」

 僕は頬が引き攣る。

 まさかの脳筋訓練だった件について!

 しかも、手持ちの盾って……鍋の蓋なんですけど!?

「おっと、さすがにユラの魔法は鍋の蓋じゃ厳しいだろう。これをやる」

「ありがとうございます!」

 師匠! 信じてた!

 ラウンドシールドを手渡されたので装備する。


「準備は良さそうなので──隊長からの催促が怖いからいきますよー。えいっ」

 ユラさんの可愛い声とは裏腹に風刃、水弾、土槍、火の波状攻撃が一気に襲いかかってきた──


 その日の僕は防ぐ事は出来ずに絶叫しながら避けまくった──
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