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直訴

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「そう……だった……ここは……」
「あほ」
ガックリと項垂れるも、シーナ以外にはリオンに対してツッコんでくる者はいない。
当然である。
「まーしゃーないよねー。アタシたちは記憶が薄れたり融合するわけじゃなく、元々こっちの世界で産まれて思い出しちゃった…っていうだけだから。憑依的な案件でもないしさ」
「そうなんだよなぁ……しかも『よく似ている世界』でもあるし、『まったく同じイベントが起きる』っていうおまけ付きのせいで、ゲーム攻略から分析する断罪回避方法の模索のおかげで前世が抜けないってな~……」
ハァ……と同じタイミングでため息が出る。
「それはそれとして……そっちのふたりは?」
「あ。クールファニー男爵家の兄弟で」
「リオネルです」
「リュシアンです!」
兄の方は落ち着いていたが、弟の方は何かを期待してるかのようにキラキラと目を輝かせている。
「弟さんの方はわかんないけど……兄の方はアレよ、ゲームのオープニングプロローグの『語り人』?ナレーション的なシルエットがいたじゃない?」
「ん……?あ……?ああ~……うん?……」
リオンは首を捻っているが、何周も回る時にプロローグやチュートリアルをスキップできる機能で飛ばしてしまったために、その部分はよく覚えていないらしい。
「……あんた、何周したんだっけ?」
「えーっと……最初に王太子、次に宰相息子、辺境侯爵息子、ヤンデレ弟、狡猾兄……逆ハールートは攻略有り無しと、追加キャライベント…はそもそもオープニングにはなかったし……」
「ごめん。聞いたアタシがバカだった」
指を折って自分が辿ったルート数を数えるリオンを見て、シーナはうっかりと聞いた自分を呪った。
「……とにかく、兄の方がバカみたいに記憶力がいいのよ。王立図書館の蔵書は、訳書…古語辞典みたいなのが無いと訳せないような本以外はぜ~んぶ読んで、しかもまるっと記憶してるらしいの。で、彼の現在の野望はこの学園内に所蔵されている本のすべてを読み尽くすことらしいのね?」
「そ、そして!できれば!王太子殿下のお力で、王宮に所蔵されている文書を、兄に読ませてはいただけませんでしょうかっ?!」
兄よりよほど度胸のあるらしいリシュアンがいきなり身を乗り出し、兄のためにと王太子に向かって直訴した。
「え……?」
「ああ、そうそう!そうなの。アタシからもそれをお願いしたかったの」
「ん?え?なに?どゆこと?」


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