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賢者、寄り道をする。

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驚愕にミウが目を見開くが、逆にカヤシュは満足そうに頷く。
「ミウ!俺の嫁!心の友で、祝福される嫁!やったぁ~~~~~!!」
「えっ?えっ?えぇっ?!こっ、困るよっ!?私、ノーム族じゃないよっ?!」
「ノーム族、関係ない!ノームの雌は番!『嫁』とはノーム族以外の縁ある者!精霊王が『仲良くできる者』と結べと与えてくれた力!」
「……要は、ミウが意図せずに、カヤシュ側からテイムの申し込みがあった……んだと思う」
「で……この糸みたいなのが、契約の証……?」
「でしょう……か?何せ魔獣や魔物との従獣契約もどのように結ばれているのかわかっていないのですから、精霊に属する者たちとの契約なんかはもっと未知ですよ……きっとミウのご両親も知らないのではないかと」
パチパチと瞬きを繰り返すが、ミウの受け入れは早かった。
「……カヤシュ?」
「何だ!ミウ!」
「カヤシュの恋人とか、奥さんとか……そういう人は、私がカヤシュの『嫁』となってもいいの?」
「うん?何でだ?番と嫁は別!番は常にこの村にいる!嫁であるミウはここから出ていく!一緒にはいられない。だから繋がる!よしっ!」
なにが『よし』なのかわからないが──人間の常識を持ち込んではいけないのかもしれない。
「……カヤシュ!」
「おっ!!」
トテトテと駆けてきた可愛らしい女の子ノームを抱き寄せ、カヤシュは胸を張るように二人を引き合わせる。
「ミウ!これがカヤシュの番だ!……いや、まだ番ではないが、次の春に番になる!キッチャム!可愛いだろう?キッチャム!これがカヤシュの嫁になったミウだ!可愛いだろう?」

待って。
紹介の仕方がおかしい。

だがキッチャムと呼ばれたノームは、キラキラと輝く目でミウを見上げると、嬉しそうな溜め息をついた。
「ミウ!カヤシュの嫁!では、キッチャムとも嫁!」
「いやいや、キッチャムが嫁になるのは、次の春だ!カヤシュの番となってから、ミウの嫁になるんだ!楽しみだ!カヤシュとキッチャムは幸せだ!」
めちゃくちゃややこしい事態に私とミウは困惑の表情を浮かべるしかないが、周りに集まったノームたちは何故か楽しそうに笑って踊ってはしゃいでいる。
いつまでたっても自分の下に訪れないことに業を煮やしたのか、その時、ウルの背中に乗ったいかにも『村長らしい』風格のノームが、私たちの方へと近づいてきた。

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