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賢者。勇者剣士と合流する。

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それからは圧巻というべきか、私が手を出す必要もなく、デューンとラダのふたりでサクッと押し込み強盗たちは捕らえられ、そのまま待機していた憲兵たちに引き渡した。
彼らは私とミウの方が窃盗犯で、宿屋に泊まっている人たちのペットや従魔を盗んで売り払っているようだと、あらかじめ呼び寄せていたという。
しかし騒ぎが治まって呼ばれてみれば、部屋にいたのは有名この上ない勇者パーティーの戦士と鞭使いのふたりだけでなく、勇者パーティーのメンバーであり王都でも有力貴族であり魔術協会の責任者でもあるトリウス伯爵家のミウ嬢がこの部屋の宿泊客として滞在していることを知り、しかも残りのひとりはすでに勇者パーティーに加わることが決まっている『大賢者』だ。
自分たちの縄を解いて盗人を捕らえる仕事をしろと宿屋の主人に怒鳴られても、彼らの言うままに動くことはできない。
しかも喉に呪符を貼られたままの男と女が先ほどから今まで自分たちがこの宿を根城にして、王都内でやってきた動物窃盗の罪の擦り付け合いを行っているのだから世話はない。
何せ口を噤むことはできても思考を止めることは難しいのだから、変な呪符を貼った私への罵りから宿屋の主人が元締めとなって珍しい動物や従魔として使えそうな魔物や魔獣を持ち主から盗んで後悔しているという懺悔や、旨い話に乗ってみたら簡単だったのは初めだけで、次第に彼らの正体を探り出した者たちに疑われ出してきたからとっとと足を洗えばよかったんだとお互いの判断ミスを罵り合うのだ。
もう調書を取るのも簡単すぎて、宿屋の主人たちの方こそ取り調べを行われることになってしまった。
その騒ぎの最中に、さらに呼ばれた憲兵隊の隊長はもっと大切な伝言を携えて、捕らえられた者たちはあっさりと無視される。
「……賢者様においては、明朝改めて陛下がお会いしたいと。次は必ず第二姫の同席は許さず礼を尽くしてお迎えしたいと……」
「そうですねぇ……」
溜息をつきながらも、あの人の良い勇者パーティーのリーダーはこの申し出も快く受けそうな気がして、了承の返事を返す。
「むろんこちらの三人も共に参ってよろしいのですよね?」
「もちろんでございます!ケヴィン殿は……?」
「今夜は別行動だが、明日には合流して登殿する」
「はっ!ありがとうございます!」
憲兵隊隊長はデューンの重低音に姿勢を正して、ビシッと敬礼を決めた。

こうして騒がしい夜は更けたが、今度こそ私たちは決めたとおりの就寝場所に身を落ち着けて、しっかりと睡眠をとった。


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