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「えー、と。どこまで話したんだっけな」
頭をぼりぼりしながらバルトさんが呟く。
横からキアナが
「レイに魔力があって、身体強化使っているってとこまでです」
と言う。
「あー、そうだそうだ。それでだな、レイ。」
「はい」
頷いたら背中から抱きしめているサクの鼻が首筋に当たってこしょばかった。
「レイ。お前、自分がギリギリまで魔力使ってるそうだが、気づいてたか?」
「はい」
今度は頷かなかった。バルトさんの目が鋭くなる。
「…どんだけ危険か分かってんのか?」
「はい、自分の限界がどこか分かってるので。」
魔力がなくなる寸前って、全身の力が少しづつ抜けてくるのだ。
それを説明するとキアナとバルトは驚いた顔を、サクは顔をしかめた。
「そんなに、大変だったの?魔力を使いきっちゃうまで?」
キアナの言葉に少し考える。
「うーん…王族の婚約者として、毒に慣れなきゃいけなかったから食事に毒が入ってたりとか。問題が分からなかったら鞭で打たれたりとか?暗記しなきゃいけないことがあったら覚えられるまで寝ちゃダメだったし…」
「それは…ひどいな」
「うーん?でもそれが普通だったし…。あ、でも今の方が幸せですよ?島の人達も優しいですし」
バルトの呟きにそう返すと、サクの抱き締める力が強くなる。
「僕は?好き?」
「もちろん!大好きだよ!」
大きく頷いたら、またサクの鼻先が私の首をかすった。う、こしょばい。
喉が渇いたので目の前の紅茶を飲もうとすると、凍ったままだ。
「あ、注ぎ直すね」
キアナが笑いながらティーカップを受け取ってくれた。
「お前は…本当に、闇ギルドに入っていいのか?今なら止められるぞ?魔力で身体強化してまで訓練を受ける必要はない」
バルトさんの言葉に少しムッとする。
「嫌です!もう決めた事なんですからね!それに、魔力って言っても2割も使ってないですから」
「「「え?」」」
3人が突然固まった。え、なに。怖い。
最初に動いたのはサクだ。
「あのさ…訓練時間は今日は五時間でしょ?魔力だめがどんなに大きい人でも、そんなに身体強化っていうか、魔力はもつものじゃないと思うんだけど。」
分かりやすい説明ありがとう、サク。
ありがたいんだけども…
「耳元で話すのやめてくれない?くすぐったいんだけど」
「やだ」
やだってなに…。
部屋に再び、紅茶のいい匂いが広がって行く。
「はい、どうぞ」
「ありがと、キアナ」
一口飲んだらほっとするような、心がぽかぽかするような感じがして、すっと落ち着いた。
「…ふぅ。魔力量は変わりません。けど魔力だめの中の魔力の濃さなら、変えることができます。」
「濃さ?」
「この事に気づいたのは本当にたまたまなんですけど…」
魔力強化を使い始めて、3ヶ月たった頃のことだ。
いつも通り一定の魔力の量を体に循環させ、勉強をしはじめたとき、腕に痛みが走ったのだ。
物凄く痛くて、見てみると二の腕が内出血していた。
とても特徴的な内出血で、なんというか、肉が裂けたような感じ。
お医者さんにみてもらうと、
「ただの内出血ですね。魔力暴走でなくなった方の模様に似ていますが…。お勉強は程々になさってくださいね」と言う。
「魔力暴走で亡くなった方の模様って…なんですか?」
興味で聞いてみたところ、魔力だめが損傷し、意図せず魔力を体に放出してしまうことを魔力暴走、というらしい。
魔力暴走の人は全身に肉が裂けたような内出血を起こし、亡くなってしまう…とのことだった。
「お医者さんの話だと、魔力暴走は自分の体では耐えられない魔力の量を一気に放出した時に起こるものだと分かったんです。」
私は3ヶ月の間毎日同じ量の魔力を体内で循環させ身体強化を行ってきた。にもかかわらず、突然魔力暴走と同じような模様が腕に浮き出て内出血が起きた。…つまり。
「魔力だめの大きさは変わらないので、魔力が増えたのはあり得ないと思いました。なら…」
「濃さ…か」
サクがぽつり、と呟いた。
私は頷いて、紅茶を一口飲み込む。
「そうしたら辻褄が合う気がして。たぶん、体内で循環することで魔力はより、純粋なものになるんだと思うんです。つまり、身体強化は、魔力に含まれる不純物を取り除く行為でもあるみたい…なんです。
身体強化は魔力があると分かった人が最初に覚える基礎魔法だからか、魔力が切れるギリギリまで使う人がそんなにいなくて、今まで気づかれなかったんじゃないかなぁ…って」
「…すげぇな、お前」
誰も気づかないよ、そんなん。
バルトさんはソファに背を凭れて空を仰いだ。
「いや、ほんとにすげえよ」
「んー、じゃあさ。明日から魔力持ちの奴らに日々の訓練で身体強化を使わせようよ」
もっと強くなるんでしょ?
キアナがニコニコしながら言う。
「身体強化ってあまり良くないイメージだったんだよね、なんとなく」
サクがなんだかしみじみとした風に言いながら、やっと私も解放してくれた。
私はそそくさと自分のいた場所に座る。
「魔力が純粋なものになると普通の魔法でも威力は上がるのか?」
「はい、そうですね。中級魔法でも上級魔法くらいの威力にはなります。」
マッチくらいの火をだすつもりでも気を抜くと天井を焦がすくらいの高さになったりする。
「まじか…。どうやって制御すんだ?」
「えーと。魔力をうすーく伸ばしながら使うイメージです」
「うーん…まぁ、いっか。どうにかなるか。よし、明日から魔力持ちに身体強化やらせっぞ。教えてくれてありがとな、レイ」
部屋戻っていいぞ。
「はーい」
なんか、すごい疲れた。
そうおもってたら30分も話していなかった。
ビックリだ。
さっさとベッドに潜り込みながら思う。
サクとの関係。
島の人達
明日から少しづつ、変わっていくような気がした。
_____________________
長くてすみませんm(__)m
昨日更新してなくてすみませんm(__)m
メモで書いてたらデータぶっとんで泣きそうでして( ;∀;)
今回の設定の意味がよく分からなかったり、誤字を見つけたらぜひ、コメント欄でご連絡下さい。
よろしくお願いしますm(__)m
ちょっとだけ修正しました。
頭をぼりぼりしながらバルトさんが呟く。
横からキアナが
「レイに魔力があって、身体強化使っているってとこまでです」
と言う。
「あー、そうだそうだ。それでだな、レイ。」
「はい」
頷いたら背中から抱きしめているサクの鼻が首筋に当たってこしょばかった。
「レイ。お前、自分がギリギリまで魔力使ってるそうだが、気づいてたか?」
「はい」
今度は頷かなかった。バルトさんの目が鋭くなる。
「…どんだけ危険か分かってんのか?」
「はい、自分の限界がどこか分かってるので。」
魔力がなくなる寸前って、全身の力が少しづつ抜けてくるのだ。
それを説明するとキアナとバルトは驚いた顔を、サクは顔をしかめた。
「そんなに、大変だったの?魔力を使いきっちゃうまで?」
キアナの言葉に少し考える。
「うーん…王族の婚約者として、毒に慣れなきゃいけなかったから食事に毒が入ってたりとか。問題が分からなかったら鞭で打たれたりとか?暗記しなきゃいけないことがあったら覚えられるまで寝ちゃダメだったし…」
「それは…ひどいな」
「うーん?でもそれが普通だったし…。あ、でも今の方が幸せですよ?島の人達も優しいですし」
バルトの呟きにそう返すと、サクの抱き締める力が強くなる。
「僕は?好き?」
「もちろん!大好きだよ!」
大きく頷いたら、またサクの鼻先が私の首をかすった。う、こしょばい。
喉が渇いたので目の前の紅茶を飲もうとすると、凍ったままだ。
「あ、注ぎ直すね」
キアナが笑いながらティーカップを受け取ってくれた。
「お前は…本当に、闇ギルドに入っていいのか?今なら止められるぞ?魔力で身体強化してまで訓練を受ける必要はない」
バルトさんの言葉に少しムッとする。
「嫌です!もう決めた事なんですからね!それに、魔力って言っても2割も使ってないですから」
「「「え?」」」
3人が突然固まった。え、なに。怖い。
最初に動いたのはサクだ。
「あのさ…訓練時間は今日は五時間でしょ?魔力だめがどんなに大きい人でも、そんなに身体強化っていうか、魔力はもつものじゃないと思うんだけど。」
分かりやすい説明ありがとう、サク。
ありがたいんだけども…
「耳元で話すのやめてくれない?くすぐったいんだけど」
「やだ」
やだってなに…。
部屋に再び、紅茶のいい匂いが広がって行く。
「はい、どうぞ」
「ありがと、キアナ」
一口飲んだらほっとするような、心がぽかぽかするような感じがして、すっと落ち着いた。
「…ふぅ。魔力量は変わりません。けど魔力だめの中の魔力の濃さなら、変えることができます。」
「濃さ?」
「この事に気づいたのは本当にたまたまなんですけど…」
魔力強化を使い始めて、3ヶ月たった頃のことだ。
いつも通り一定の魔力の量を体に循環させ、勉強をしはじめたとき、腕に痛みが走ったのだ。
物凄く痛くて、見てみると二の腕が内出血していた。
とても特徴的な内出血で、なんというか、肉が裂けたような感じ。
お医者さんにみてもらうと、
「ただの内出血ですね。魔力暴走でなくなった方の模様に似ていますが…。お勉強は程々になさってくださいね」と言う。
「魔力暴走で亡くなった方の模様って…なんですか?」
興味で聞いてみたところ、魔力だめが損傷し、意図せず魔力を体に放出してしまうことを魔力暴走、というらしい。
魔力暴走の人は全身に肉が裂けたような内出血を起こし、亡くなってしまう…とのことだった。
「お医者さんの話だと、魔力暴走は自分の体では耐えられない魔力の量を一気に放出した時に起こるものだと分かったんです。」
私は3ヶ月の間毎日同じ量の魔力を体内で循環させ身体強化を行ってきた。にもかかわらず、突然魔力暴走と同じような模様が腕に浮き出て内出血が起きた。…つまり。
「魔力だめの大きさは変わらないので、魔力が増えたのはあり得ないと思いました。なら…」
「濃さ…か」
サクがぽつり、と呟いた。
私は頷いて、紅茶を一口飲み込む。
「そうしたら辻褄が合う気がして。たぶん、体内で循環することで魔力はより、純粋なものになるんだと思うんです。つまり、身体強化は、魔力に含まれる不純物を取り除く行為でもあるみたい…なんです。
身体強化は魔力があると分かった人が最初に覚える基礎魔法だからか、魔力が切れるギリギリまで使う人がそんなにいなくて、今まで気づかれなかったんじゃないかなぁ…って」
「…すげぇな、お前」
誰も気づかないよ、そんなん。
バルトさんはソファに背を凭れて空を仰いだ。
「いや、ほんとにすげえよ」
「んー、じゃあさ。明日から魔力持ちの奴らに日々の訓練で身体強化を使わせようよ」
もっと強くなるんでしょ?
キアナがニコニコしながら言う。
「身体強化ってあまり良くないイメージだったんだよね、なんとなく」
サクがなんだかしみじみとした風に言いながら、やっと私も解放してくれた。
私はそそくさと自分のいた場所に座る。
「魔力が純粋なものになると普通の魔法でも威力は上がるのか?」
「はい、そうですね。中級魔法でも上級魔法くらいの威力にはなります。」
マッチくらいの火をだすつもりでも気を抜くと天井を焦がすくらいの高さになったりする。
「まじか…。どうやって制御すんだ?」
「えーと。魔力をうすーく伸ばしながら使うイメージです」
「うーん…まぁ、いっか。どうにかなるか。よし、明日から魔力持ちに身体強化やらせっぞ。教えてくれてありがとな、レイ」
部屋戻っていいぞ。
「はーい」
なんか、すごい疲れた。
そうおもってたら30分も話していなかった。
ビックリだ。
さっさとベッドに潜り込みながら思う。
サクとの関係。
島の人達
明日から少しづつ、変わっていくような気がした。
_____________________
長くてすみませんm(__)m
昨日更新してなくてすみませんm(__)m
メモで書いてたらデータぶっとんで泣きそうでして( ;∀;)
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よろしくお願いしますm(__)m
ちょっとだけ修正しました。
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