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どうしたらいいのかしら?
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大分と長い間、ラングラン侯爵家の自室内を行ったり来たりしている。
まるで檻に閉じ込められている肉食獣のように。
(どうするの、わたし?)
すでに同じ問いを何十回と繰り返すけれども、まったく答えが出ないままでいる。
夜、である。
結局、ラングラン侯爵家の屋敷に戻ってもフェリクスには会えなかった。
戻って来てはいたものの、屋敷内ですれ違うこともなかった。
もっとも、彼が帰ってきてから屋敷内でそうそうすれ違うことはないけれど。
食事は別々である。彼は、パトリスとピエールと食堂で食事をしている。わたしはというと、時間がないので自室の机でサンドイッチをつまんだり、厨房にあるテーブルでロマーヌやヴェロニク、マルスランやモルガン、料理人のジョスランや雑用係のロドルフたちとお喋りをしながら食べている。
執務室は、いまは使っていない。なぜなら、フェリクスが使っているからである。
フェリクスとわたしは、わたしたちの人生が交わらない以前に屋敷内でさえ会えない。
ある意味では、「これは運命なのかしら」とさえ思えてくる。
書物に出てくるヒロインとヒーローが、たとえどれだけハードな状況であったととしても、あるいは絶対にありえない設定であったとしても、ぜったいに出会ったり結びついたりする逆のバージョンを、フェリクスとわたしは突き進んでいる。
というわけで、街のカフェでジョフロワとお茶をしているところを見られて以降、フェリクスに会っていないから彼がどのような状態なのかさっぱりわからないでいる。
(いっそ言い訳をしに行く?)
室内を行ったり来たりしつつ、これもまた何十回と自問している。
(言い訳? いったいなにに対しての言い訳なの?)
やましいことはしていない。そのつもりでいる。
ジョフロワは、あくまでも慈善病院の運営を援助してくれている協力者のひとり。それ以上でも以下でもない。
まぁ、たしかに彼は美しい。それにやさしいし気遣い抜群だし。さらには頭脳も行動もスマートで沈着冷静だし。しかもカッコいいし、それでいて可愛いところもある。
総合的にみても、どこかの将軍閣下とは正反対の存在。
だけど、わたしにはどうでもいいこと。たとえジョフロワがどこかの将軍閣下とまったく同じだとしても、付き合い方はかわらない。はずである。
付き合いが困難すぎるというだけで、援助者に対しての誠意は尽くす。
ジョフロワとはそれだけの関係なのに、言い訳をするだなんてまるでやましいことをしているみたい。
しかも「好きなことをしていい」と言ったのは、かくいうフェリクスである。
五千歩譲ってジョフロワとやましい関係だったとしても、フェリクスにとやかく思われたり言われたりするいわれはない。
「だったら、どうしてこんなに悩むのよ」
声に出してつぶやいていた。
結局、深夜になってもまだ答えや結論は出ず、諦めて寝台に横になった。
まるで檻に閉じ込められている肉食獣のように。
(どうするの、わたし?)
すでに同じ問いを何十回と繰り返すけれども、まったく答えが出ないままでいる。
夜、である。
結局、ラングラン侯爵家の屋敷に戻ってもフェリクスには会えなかった。
戻って来てはいたものの、屋敷内ですれ違うこともなかった。
もっとも、彼が帰ってきてから屋敷内でそうそうすれ違うことはないけれど。
食事は別々である。彼は、パトリスとピエールと食堂で食事をしている。わたしはというと、時間がないので自室の机でサンドイッチをつまんだり、厨房にあるテーブルでロマーヌやヴェロニク、マルスランやモルガン、料理人のジョスランや雑用係のロドルフたちとお喋りをしながら食べている。
執務室は、いまは使っていない。なぜなら、フェリクスが使っているからである。
フェリクスとわたしは、わたしたちの人生が交わらない以前に屋敷内でさえ会えない。
ある意味では、「これは運命なのかしら」とさえ思えてくる。
書物に出てくるヒロインとヒーローが、たとえどれだけハードな状況であったととしても、あるいは絶対にありえない設定であったとしても、ぜったいに出会ったり結びついたりする逆のバージョンを、フェリクスとわたしは突き進んでいる。
というわけで、街のカフェでジョフロワとお茶をしているところを見られて以降、フェリクスに会っていないから彼がどのような状態なのかさっぱりわからないでいる。
(いっそ言い訳をしに行く?)
室内を行ったり来たりしつつ、これもまた何十回と自問している。
(言い訳? いったいなにに対しての言い訳なの?)
やましいことはしていない。そのつもりでいる。
ジョフロワは、あくまでも慈善病院の運営を援助してくれている協力者のひとり。それ以上でも以下でもない。
まぁ、たしかに彼は美しい。それにやさしいし気遣い抜群だし。さらには頭脳も行動もスマートで沈着冷静だし。しかもカッコいいし、それでいて可愛いところもある。
総合的にみても、どこかの将軍閣下とは正反対の存在。
だけど、わたしにはどうでもいいこと。たとえジョフロワがどこかの将軍閣下とまったく同じだとしても、付き合い方はかわらない。はずである。
付き合いが困難すぎるというだけで、援助者に対しての誠意は尽くす。
ジョフロワとはそれだけの関係なのに、言い訳をするだなんてまるでやましいことをしているみたい。
しかも「好きなことをしていい」と言ったのは、かくいうフェリクスである。
五千歩譲ってジョフロワとやましい関係だったとしても、フェリクスにとやかく思われたり言われたりするいわれはない。
「だったら、どうしてこんなに悩むのよ」
声に出してつぶやいていた。
結局、深夜になってもまだ答えや結論は出ず、諦めて寝台に横になった。
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