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婚約者の王子に捨てられた私は、代わりに大事な宝と共に貧国へ嫁ぐ事となりました。
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私とこの国の王子は、生まれた時から一緒になる事が決まっていた。
と言うのも…王子が生まれたその日に私が生まれ、その私にある物が天より捧げられた。
それがこの国にとって、とても大事な物だったらしい。
私は、王子の部屋に置かれたそのある物をちらりと横目で見た。
聖なる水瓶─。
見た目は飾り気のない、何て事ない瓶だ。
これと私を初めて見た王子は、こう言って嘲笑った。
『つまらない瓶と女が俺の元に来たものだ。なんでも幸運と繁栄をもたらす水瓶だそうだが…お前の妹の方が美しい、そちらの方がうんと価値があるんじゃないのか?』
妹は、私の婚約相手が王子と知るや否や、駄々をこね無理矢理付いてきたのだ。
そしてその美しい顔で王子を虜にし…今では周りの者に、どちらが王子のお相手か分からない…妹のおまけの女と水瓶などど陰で笑われる始末だ─。
するとそれから半年後…私は、王子から一方的に婚約を解消された。
「実はな…お前の妹とはもうすでに深い仲にあるんだ。王である父も、俺たちの仲を裂く事は出来ないと諦めた様でな。」
「そ、そんな…。」
「お前には悪いとは思ってるぞ。だからな、お前は隣国の王子の元へ嫁げ。王が裏で上手く取り計らい、お前がこの先困る事の無いようにしてくれる。」
「お姉様、王子がここまで言ってるのよ?潔く身を引きなさい。でも…隣国って言ったら、天災続きでとっても貧しい国よね?」
「お、おい、余計な事は言うな!」
「…分かりました。私は隣国に向かいます。きっとこれも、神のお導きでしょうから。」
「そ、そうか!」
「ですが…一つだけ条件が。その水瓶を私に下さい。お金も何も要らない…その水瓶だけ欲しいのです。」
「こんな瓶を?構わん、好きにしろ。」
「そんな小汚い瓶、私も要らないわ。じゃあねお姉様、貧乏王子とお幸せにね─。」
***
「あんなガラクタを持参金代わりにするなど…お姉様はいい笑い者ね。せっかくだから王子、新しい調度品を買いましょう?」
「そうだな、宝石が付いた目立つ物にしよう!」
でも…王があの水瓶の説明をしていた気がするが…まぁいいか─。
ところが、それから三ヶ月後の事だ。
突如、この地に雨が全く降らなくなった。
田畑は干からび、作物は取れず…国の民は飢えに苦しみ始めた。
この国は農業で成り立っていからな…これは大変な事になった。
なのに妃となったあいつの妹ときたら…相変わらずの贅沢三昧だ。
「おい、これ以上贅沢は出来ないと、以前も言っただろう!」
「妃なんだから、着飾って何がいけないの!もう…優雅な暮らしが出来ると思ったのに…こんなの聞いてないわよ!」
「俺だって、こんな事になるとは─」
そこへ、王が慌てた様子でやって来た。
「お前、あの水瓶はどうした!?」
「あれなら、元婚約者のあの女に譲りましたが?」
「ば、馬鹿者!あれはこの国の宝…聖なる水瓶だ!あれだけは、手元に残しておくよう言っただろう!あの水瓶があるから、この国は雨が降り水が枯れる事無く、国も豊かだったのに…。あれを失っては、もうこの国に雨は降らない。お前…どう責任を取るんだ!?」
***
「…と言う訳で、あの水瓶だけは返してくれ!あれがないと国の民は…俺と妃は─!」
「民なら、もうほとんどがこの国に逃げて来てるわよ。あなたは…ご自分が責任を取りたくないだけでしょう?」
「…そ、それは。」
「あの水瓶は、お返しできません。だってあの水瓶には…最近ご誕生になられたこの国の守護神が宿ってますから。もしあなたが無理にでも水瓶を持ち帰ろうものなら…その守護神から罰を受ける事になるわ。今ですら酷い状態なのに…あなたは、更に事態を悪化させたいの?」
「と、とんでもない!」
「ならば、もう諦める事ね。」
「そんな…。」
するとそこへ、隣国の王子がやって来た。
「こんなに素晴らしい妃と聖なる水瓶を、我が国に迎え入れる事が出来て私は幸せだ。彼女の知識のおかげで、農業技術は向上…そしてあの水瓶のおかげで日照りが解消され、我が国は貧国から抜け出す事が出来た。あなたと、王に感謝をせねば。」
「私も、この国に来れて幸せです。隣国の王子は、私だけを愛してくれますもの。どこかの誰かとは違ってね。」
私の言葉に、王子は顔を真っ赤にして部屋から出て行った。
あれだけ言われたら、彼はもうこの国には、私の前には二度と顔を出せないでしょう─。
水瓶を持ち帰れなかった王子は王に酷く怒られ…その責任を取る為、結局妃と…妹と共に、神への生贄にされてしまったが…そこまでしても雨は降らず、やがてあの国は滅亡…地図から姿を消すのだった。
妹に裏切られ王子に捨てられ、貧国の王子に嫁げと言われた時はどうなるかかと思ったけど…自分の直感を信じ、あの水瓶を持ち出して良かった…。
おかげで私は、誰からも愛される妃として、とても幸せに暮らして居るわ─。
と言うのも…王子が生まれたその日に私が生まれ、その私にある物が天より捧げられた。
それがこの国にとって、とても大事な物だったらしい。
私は、王子の部屋に置かれたそのある物をちらりと横目で見た。
聖なる水瓶─。
見た目は飾り気のない、何て事ない瓶だ。
これと私を初めて見た王子は、こう言って嘲笑った。
『つまらない瓶と女が俺の元に来たものだ。なんでも幸運と繁栄をもたらす水瓶だそうだが…お前の妹の方が美しい、そちらの方がうんと価値があるんじゃないのか?』
妹は、私の婚約相手が王子と知るや否や、駄々をこね無理矢理付いてきたのだ。
そしてその美しい顔で王子を虜にし…今では周りの者に、どちらが王子のお相手か分からない…妹のおまけの女と水瓶などど陰で笑われる始末だ─。
するとそれから半年後…私は、王子から一方的に婚約を解消された。
「実はな…お前の妹とはもうすでに深い仲にあるんだ。王である父も、俺たちの仲を裂く事は出来ないと諦めた様でな。」
「そ、そんな…。」
「お前には悪いとは思ってるぞ。だからな、お前は隣国の王子の元へ嫁げ。王が裏で上手く取り計らい、お前がこの先困る事の無いようにしてくれる。」
「お姉様、王子がここまで言ってるのよ?潔く身を引きなさい。でも…隣国って言ったら、天災続きでとっても貧しい国よね?」
「お、おい、余計な事は言うな!」
「…分かりました。私は隣国に向かいます。きっとこれも、神のお導きでしょうから。」
「そ、そうか!」
「ですが…一つだけ条件が。その水瓶を私に下さい。お金も何も要らない…その水瓶だけ欲しいのです。」
「こんな瓶を?構わん、好きにしろ。」
「そんな小汚い瓶、私も要らないわ。じゃあねお姉様、貧乏王子とお幸せにね─。」
***
「あんなガラクタを持参金代わりにするなど…お姉様はいい笑い者ね。せっかくだから王子、新しい調度品を買いましょう?」
「そうだな、宝石が付いた目立つ物にしよう!」
でも…王があの水瓶の説明をしていた気がするが…まぁいいか─。
ところが、それから三ヶ月後の事だ。
突如、この地に雨が全く降らなくなった。
田畑は干からび、作物は取れず…国の民は飢えに苦しみ始めた。
この国は農業で成り立っていからな…これは大変な事になった。
なのに妃となったあいつの妹ときたら…相変わらずの贅沢三昧だ。
「おい、これ以上贅沢は出来ないと、以前も言っただろう!」
「妃なんだから、着飾って何がいけないの!もう…優雅な暮らしが出来ると思ったのに…こんなの聞いてないわよ!」
「俺だって、こんな事になるとは─」
そこへ、王が慌てた様子でやって来た。
「お前、あの水瓶はどうした!?」
「あれなら、元婚約者のあの女に譲りましたが?」
「ば、馬鹿者!あれはこの国の宝…聖なる水瓶だ!あれだけは、手元に残しておくよう言っただろう!あの水瓶があるから、この国は雨が降り水が枯れる事無く、国も豊かだったのに…。あれを失っては、もうこの国に雨は降らない。お前…どう責任を取るんだ!?」
***
「…と言う訳で、あの水瓶だけは返してくれ!あれがないと国の民は…俺と妃は─!」
「民なら、もうほとんどがこの国に逃げて来てるわよ。あなたは…ご自分が責任を取りたくないだけでしょう?」
「…そ、それは。」
「あの水瓶は、お返しできません。だってあの水瓶には…最近ご誕生になられたこの国の守護神が宿ってますから。もしあなたが無理にでも水瓶を持ち帰ろうものなら…その守護神から罰を受ける事になるわ。今ですら酷い状態なのに…あなたは、更に事態を悪化させたいの?」
「と、とんでもない!」
「ならば、もう諦める事ね。」
「そんな…。」
するとそこへ、隣国の王子がやって来た。
「こんなに素晴らしい妃と聖なる水瓶を、我が国に迎え入れる事が出来て私は幸せだ。彼女の知識のおかげで、農業技術は向上…そしてあの水瓶のおかげで日照りが解消され、我が国は貧国から抜け出す事が出来た。あなたと、王に感謝をせねば。」
「私も、この国に来れて幸せです。隣国の王子は、私だけを愛してくれますもの。どこかの誰かとは違ってね。」
私の言葉に、王子は顔を真っ赤にして部屋から出て行った。
あれだけ言われたら、彼はもうこの国には、私の前には二度と顔を出せないでしょう─。
水瓶を持ち帰れなかった王子は王に酷く怒られ…その責任を取る為、結局妃と…妹と共に、神への生贄にされてしまったが…そこまでしても雨は降らず、やがてあの国は滅亡…地図から姿を消すのだった。
妹に裏切られ王子に捨てられ、貧国の王子に嫁げと言われた時はどうなるかかと思ったけど…自分の直感を信じ、あの水瓶を持ち出して良かった…。
おかげで私は、誰からも愛される妃として、とても幸せに暮らして居るわ─。
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