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友達になるための条件

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 ──その日の帰り道
 昨日と同じように僕と大和は一緒に帰ることにしたんだ。

 自転車を漕ぐ僕の後ろにはもちろん、大和が座っている。

 今日はバイトがあるから、そんなにゆっくりもしていられない…その事を大和にも伝えてはあった。

 そして、大和は電車で高校まで通っていて、今日も昨日のように駅まで送ってあげる道中で、僕から大和に声をかけたんだ。

「ねぇ…大和?」

「ん~?なんだ~?風が気持ちいいな」

「いや…そんな事じゃなくて…」

 僕はどうしても、彼に告げなければいけないことがあった…

「…お昼はごめん…」

「は?裕翔、なにか謝ることしたか?」

「…お昼ご飯…食べないって本当は嘘だよね…?」

「…なっ…お前、何言ってんだよ…」

 一瞬で大和の声が冷たく…そして寂しくなったことが僕には、はっきり分かったんだ。

 僕もずっと一人だった…
 一人で食べるご飯なんて美味しくもない…
 そして、一人で食べるご飯ほど虚しく…悲しいことはないんだ…

 やっと仲良くなれたのに…僕は自ら彼の地雷を踏んでしまった気がしていた…

「僕も…お昼ご飯、食べてなかったから…」

「…裕翔、お前…」

「だからごめん…同じ苦しみを分かち合えると思っていたのに、不用心な発言を駿の前で発しちゃって…」

 誰だって隠したい事や伝えたくない事はあるはずだ…同じ苦しみを味わったなら大和の気持ちも分かるはずなのに…友達になれた事に、僕は浮かれすぎてしまっていた。

 そんな僕の気持ちを聴き、大和は僕の背中に頭を添えてきて、僕へと気持ちを吐き出してくれたんだ。

「…お前、ほんとに優しすぎるんだよ…ただ、裕翔の言う通りだ…ほんとはみんなで笑いながらご飯を食べる…そんな事はただの憧れなだけで、叶うわけなかったからさ…」

「…お前が何度も何度も、俺のために食べる物を置いてくれた時…声をかけれればいいのに…弱虫で意気地無しな俺は、お前に声すらかけられなかった…」

「…大和…」

「でもな、今日の昼飯めちゃくちゃ楽しかった…ああ、これか…俺が憧れていた笑いながら食べる昼飯ってこんな感じなんだって…またお前が教えてくれたんだ…」

「…だからお前が謝ることなんてなにも…」

 キィーッ!!

 僕はゆっくり、その場で自転車を停めた…
 大和も僕の行動にびっくりしたようで「どうしたっ?」と僕に声をかけてくれたんだけど…

 僕の目からは、涙が止めどなく流れてしまっていたんだ。

「お、おい、裕翔?大丈夫かっ…?」

「…ひくっ…よ、よかった…」

「…えっ…?」

「…僕、大和のこと傷付けちゃったと思っちゃったけど…違った…なんだか、凄くほっとしちゃったんだ…」

「…裕翔…」

「…えへへっ、泣いちゃってごめん!さすがに涙流したまま自転車漕げないからさっ…!」

 僕は嬉しさと安堵で涙が出てしまったんだ…
 このままでは前が見えないから、目をゴシゴシと手で擦っていたその時…

 僕は頭にとても大きな温もりを感じたんだ…
 そう、それは大和の大きな手から放たれる優しい温もり…

「…裕翔…ありがとな…?」

 大和の言葉と共に僕は少しの間、その優しく大きな温もりに包まれていたんだ。
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