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二年目 見習い期間
大好物
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魂の抜けちゃったポッシェは放っておくことにして、魔法具工房での作業の説明が始まった。
ポッシェってば、ショックを受けすぎて立ち尽くしたまんまなんだもん。
仕方ないよね?
さっき、スフェーン師がやっていた作業は、光銅製の板に魔法文字を焼き付けてたんだって。
作業台に乗った拡大鏡ごしに、それを見てみると物凄く細かく精緻な模様が描きつけられてる。
拡大鏡から離れてみると、一つ一つの模様の大きさは小指の先ほどの大きさもない。
「ふぉぉぉお……。」
「ふぇぇ?!
随分と細かいですわ……。」
背の順に並んで見せて貰ったソレには、私だけじゃなく他の二人も目を丸くしてる。
――凄いよね!
だってこれ、手作業で入れてたんだよ??
私もやってみたい!
私、細かい作業って結構好きなんだよね。
刺繍みたいな針仕事とかも好きだったけど、工作系の細かいのはもっと好き。
学校の授業で、版画を作ったことがあったんだけど、凝りすぎちゃって作業時間的なモノがヤバい事になったのは黒歴史だけど。
それなのに、何故か野菜の皮むきは苦手なんだよね。
不思議すぎる。
あ、食べ物じゃなくて、彫刻の材料だって思ってやってみたら、案外うまくいくかも。
今度、機会があったらやってみよう。
「魔法で焼き付ける方法もあるそうなんだけど、私だと力不足でね……。
こうやって手作業でやっていると言う訳。」
――ほうほう。
その作業、大好物!
「魔法で焼き付け、なのです?」
あんまりにも幸せに満ち溢れてるように感じるその作業に心の中でよだれを垂らしてると、アッシェが首を傾げつつ『魔法で焼き付け』の部分に興味を示す。
確かに、その魔法で焼き付けって言うのもちょっと気になるかも。
「そう、私はアスタール師に見せて貰ったんだけど、瓶の中に入ったインクが文字を模って飛びだしてきて……。
まるで、ワルツでも踊るように軽やかに空中を移動して、金板に同化していくのはとても幻想的でねぇ……。」
彼は、そう言ってため息を吐く。
きっとその時の光景を思い出してるんだろう。
あんまりにもうっとりとしてるスフェーン師の顔を見ながら、その光景を想像してみる。
……想像してみただけでも、なんだかウキウキしてくる。
――私も見てみたかった。
だから、私もそう思ったんだけどね……。
「……ああ、彼が女性だったら、なんとしてでもモノにしたのに……!」
スフェーン師のそのセリフで、なんだか何もかもが台無しにされた気分だよ。
取り敢えず、アスタール師は男性で良かったんじゃないかな?
じゃないときっと、スフェーン師が危険で危なかったと思う。
その後しばらくして、フッと正気に戻ったスフェーン師は何事もなかったかのように説明を続けた。
スフェーン師が教える予定なのは、魔力を殆ど使わないで魔法具を作る方法なんだって。
魔力をほとんど使わない代わりに使うのは、主に目と指先。
さっき、彼がやっていた様な細かい作業が主になる。
後は素材学がメインになってくるらしい。
「素材学って言っても、主に好物関連のモノになってくるね。
植物関連のモノも一部はあるけど、そっちは調薬工房の方で教えて貰った方がより詳しく種類を網羅できる。
これは、調薬をメインで学ぶ場合にも言える事かな。」
成程。
調薬師は調薬師の、魔法具師は魔法具師で必要になるモノが違うのか。
そう考えるとそれぞれを別で学ぶのは理にかなってるのかな?
「成程なのです。
――となると、探索者になる場合は両方学んだ方がいいのです?」
「ああ……。
確かにそうしないと、必要なモノが判別つかないからそうなるかな。」
そっか……。
言われてみると確かに、探索者だったら必要とされるものをきちんと理解してないといけないかも。
そうしたら、探索者になる予定のポッシェは結構覚えることが沢山あるって事になる。
私は多分、魔法具師になると思うから、せめてそっち方面の素材関連の情報はきっちりと抑えておく事にしよう。
結局、最後まで再起動しなかったポッシェは放置で、置かれている機材についての説明を受け終えた私達は、それぞれの部屋で思い思いに夕飯までの時間を過ごしたのでした。
ちなみに、ポッシェは夕飯の時も半分くらい魂が抜けてたんだけど。
どんだけショックだったのよ……。
ちょっと呆れちゃう。
ポッシェってば、ショックを受けすぎて立ち尽くしたまんまなんだもん。
仕方ないよね?
さっき、スフェーン師がやっていた作業は、光銅製の板に魔法文字を焼き付けてたんだって。
作業台に乗った拡大鏡ごしに、それを見てみると物凄く細かく精緻な模様が描きつけられてる。
拡大鏡から離れてみると、一つ一つの模様の大きさは小指の先ほどの大きさもない。
「ふぉぉぉお……。」
「ふぇぇ?!
随分と細かいですわ……。」
背の順に並んで見せて貰ったソレには、私だけじゃなく他の二人も目を丸くしてる。
――凄いよね!
だってこれ、手作業で入れてたんだよ??
私もやってみたい!
私、細かい作業って結構好きなんだよね。
刺繍みたいな針仕事とかも好きだったけど、工作系の細かいのはもっと好き。
学校の授業で、版画を作ったことがあったんだけど、凝りすぎちゃって作業時間的なモノがヤバい事になったのは黒歴史だけど。
それなのに、何故か野菜の皮むきは苦手なんだよね。
不思議すぎる。
あ、食べ物じゃなくて、彫刻の材料だって思ってやってみたら、案外うまくいくかも。
今度、機会があったらやってみよう。
「魔法で焼き付ける方法もあるそうなんだけど、私だと力不足でね……。
こうやって手作業でやっていると言う訳。」
――ほうほう。
その作業、大好物!
「魔法で焼き付け、なのです?」
あんまりにも幸せに満ち溢れてるように感じるその作業に心の中でよだれを垂らしてると、アッシェが首を傾げつつ『魔法で焼き付け』の部分に興味を示す。
確かに、その魔法で焼き付けって言うのもちょっと気になるかも。
「そう、私はアスタール師に見せて貰ったんだけど、瓶の中に入ったインクが文字を模って飛びだしてきて……。
まるで、ワルツでも踊るように軽やかに空中を移動して、金板に同化していくのはとても幻想的でねぇ……。」
彼は、そう言ってため息を吐く。
きっとその時の光景を思い出してるんだろう。
あんまりにもうっとりとしてるスフェーン師の顔を見ながら、その光景を想像してみる。
……想像してみただけでも、なんだかウキウキしてくる。
――私も見てみたかった。
だから、私もそう思ったんだけどね……。
「……ああ、彼が女性だったら、なんとしてでもモノにしたのに……!」
スフェーン師のそのセリフで、なんだか何もかもが台無しにされた気分だよ。
取り敢えず、アスタール師は男性で良かったんじゃないかな?
じゃないときっと、スフェーン師が危険で危なかったと思う。
その後しばらくして、フッと正気に戻ったスフェーン師は何事もなかったかのように説明を続けた。
スフェーン師が教える予定なのは、魔力を殆ど使わないで魔法具を作る方法なんだって。
魔力をほとんど使わない代わりに使うのは、主に目と指先。
さっき、彼がやっていた様な細かい作業が主になる。
後は素材学がメインになってくるらしい。
「素材学って言っても、主に好物関連のモノになってくるね。
植物関連のモノも一部はあるけど、そっちは調薬工房の方で教えて貰った方がより詳しく種類を網羅できる。
これは、調薬をメインで学ぶ場合にも言える事かな。」
成程。
調薬師は調薬師の、魔法具師は魔法具師で必要になるモノが違うのか。
そう考えるとそれぞれを別で学ぶのは理にかなってるのかな?
「成程なのです。
――となると、探索者になる場合は両方学んだ方がいいのです?」
「ああ……。
確かにそうしないと、必要なモノが判別つかないからそうなるかな。」
そっか……。
言われてみると確かに、探索者だったら必要とされるものをきちんと理解してないといけないかも。
そうしたら、探索者になる予定のポッシェは結構覚えることが沢山あるって事になる。
私は多分、魔法具師になると思うから、せめてそっち方面の素材関連の情報はきっちりと抑えておく事にしよう。
結局、最後まで再起動しなかったポッシェは放置で、置かれている機材についての説明を受け終えた私達は、それぞれの部屋で思い思いに夕飯までの時間を過ごしたのでした。
ちなみに、ポッシェは夕飯の時も半分くらい魂が抜けてたんだけど。
どんだけショックだったのよ……。
ちょっと呆れちゃう。
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