リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

文字の大きさ
107 / 263
二年目 見習い期間

貰いすぎ

しおりを挟む
 翌日は朝ご飯を食べるとすぐに、改めて工房主のアスタール師の元で属性判定を受ける。
今は二人きりで、アスタール師の書斎のテーブルセットに向き合っているところ。
判定結果は、勧誘員のお兄……アスラーダさんが言ってた通り。
ちょっと驚いたのは、魔法具師の才があると判定した上で、探索者になる道とどちらを選ぶか尋ねられたこと。
驚く私に、アスタール師は更に言葉を続ける。

「――今後、魔法を覚えたら、どのみち君達には迷宮にも入ってもらう予定でいるのだ。
 だから、どちらを選んでくれても構わない。」
「迷宮に?」
「うむ。
 君たちは、リエラの補佐を担ってもらう予定なのだ。」


――初耳。


 アスラーダさんはそんな事言ってなかったと思うんだけど、記憶違いかな?
うーん……。

「魔法具師の道を選んでも、探索者としての修行を受けることが出来るという事?」
「うむ、そういう事になる。
 ――不服かね?」

 聞いてなかった事だし、不満と言えば不満。
ただ、考えようによっては魔法具師として大成しなかった場合の保険になるとも言えるよね。
だったら、私が選ぶ道は一つしかない。

「ここで魔法具師の勉強をさせてほしい。」

 私は昨日、工房を見学させてもらった時から考えてた通り、魔法具師の道を選ぶ。
だって、そっちの方が私に向いていそうなうえに、やりがいもありそう。
大体が、今から別の仕事を探す気になんてなれないし。
ここに弟子入りすれば、魔法も学べるんだよ?
魔法具師や探索者で食べていけなかったとしても、魔法が使えれば別の方法で生計を立てることも出来るんだもの、それなら、多少聞いた覚えのない話が混じっててもここに弟子入りする方が良さそうじゃない。

「では、明日からは早朝に外でアスラーダ師もしくはスルトの元で体力づくりを。
 朝食後はラエル師の元で魔力操作の修行を行いたまへ。
 昼食後には、魔法具工房でまずは基本になる素材について学んでもらう事になる。」
「今日は?」
「早朝の体力づくり以外は、今言った通りのスケジュールになる。」

 アスタール師はそう言うと、テーブルの上に小さな革袋を置く。
金属の擦れ合う音から、どうやら中身はお金みたい。

「君がここに来るまでに必要とした額に足りていると良いのだが……。」
「ありがとうございます。」
「では、次の者と後退してくれたまへ。」

 私はその革袋を手にすると、退室の挨拶をして扉の外で待っていたアッシェと交代すると、その部屋を後にした。
なんか、私の財布の中身よりも重い気がする。
それはそれとして、お金を持って歩くのも嫌だし、ラエル師の元に行く前に部屋に置いてこよう。


――中身を確認するのは夜寝る前でいいかな。


 そう思ってノートと筆記用具の用意をして部屋を出ようとしたものの、扉の前で足を止める。
やっぱり、気になっちゃったんだよね。
だって、イリスさん達のお陰で随分と安くついたとはいえ、必死に働いて稼いだここまでの足代。
どの程度が返っていたのかって……ねぇ?

「え……。
 嘘。」

 書き物机の上に中身を出してみた私の口から、思わず声が漏れた。
机の上に転がりだしたのは、金色に輝く硬貨。
一枚一万ミルの価値があるそれがいち、にー、さん……。
全部でにじゅうまい。


――貰いすぎ……。


 確かに必要になりそうな物も買ったけど、それを含めたってこの半分も使ってないよ。


――後で、アッシェ達にも確認してみよう。


 もしかしたら、三人分を纏めて渡したのかも。
暫く呆けてしまった後、私はそう思う事にした。
結局、ラエル師の元から帰る時に聞いてみたら、フレトゥムールから来た私達三人はみんなおんなじ金額を渡されてたんだけど。
なんていうかね、逆に心配になっちゃったんだよ。
何がって、この工房の金銭感覚的なモノがさ。
半分返そうとしんだけど、余分があったなら復習をするのに必要そうなものを買うのに使えばいいって言われちゃったんだもの……。
いや、そう言うモノは買うけどさ、それはお給料をもらってからかなーと思うんだよ。
……あ。
見習いのうちは貰えないかも。
んじゃ、その間の繋ぎとして有難く使わせてもらおう。

 ちなみに、そう結論付けてそのつもりでいた私が、月末に大金の入った給料袋を渡されて慌てふためいたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。