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二年目 フレトゥムールの昔話
協力して
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まだ要点まで話していない証拠に、アッシェは呆然とした表情の猫耳少年に向かって憤然と吐き捨てる。
「大体、図々しいのです。」
「え、あ……?」
「『え、あ?』、じゃないですよ?
こちとら、まだ十一歳の小娘なのです。
それが、二人で協力して何とか逃げ出そうとしてるっていうのに、そこに足手まといにしかならない相手を連れて行けって、一体どういう了見なのです?」
鼻先にずいずいと指を突きつけながら小声で詰るアッシェの迫力に、猫耳少年は背を仰け反らせた。
彼女がおっかないのか、その耳がペタンと頭に張り付いてるのが地味に可愛い。
獣耳族って、そう言うところがちょっとズルいよね。
「……って、お前ら、年下?!」
アッシェの言葉の中で、年齢の部分がクローズアップされて彼の耳には届いたらしく、素っ頓狂な声をあげようとして、慌てて自分の口をふさぐ。
「おやおや、随分と子供っぽい事を言うから年下の子かと思ってたですけど、年上のおにーさんだったのです?」
「アッシェ、煽らない。」
内心では私も彼が年上らしいって事に驚いてたものの、その事をネタに煽るような事を口にするアッシェをとりあえず黙らせる。
なんせ、上の方にある小窓から少しだけ見える空がもう赤く染まってきてるんだよ。
悪い人達は多分、暗くなってから移動を始めるだろう。
後ろ暗い事やってる人って、どういう訳だか夜になってから活動を始めるものだもの。
だから、もうそろそろ来るハズなんだよね。
私達を回収しに。
イコール、無駄話をしてる時間はもうないって事。
「要点だけ言う。」
「あ、ああ……。」
「妹を逃がしたいんなら、あなたも私達に協力して。」
大体が、アッシェの計画そのものが最初から無茶なんだよ?
だって、悪い人が一人で行動してる訳ないじゃない。
それなのに、一人でその人達に立ち向かう気満々なんだもの。
ただ、残念な事に私ってば、運動神経的な方向の能力はアッシェと違って死滅してるからね。
彼女と一緒に戦おうにも、逆に足手まといになっちゃうのが目に見えてる。
その点、獣耳族の子なら私よりもずっとそう言った方向に秀でてるはず。
ここは何としてでも、アッシェと共闘して貰いたいところ。
幸いな事に、彼には逃がしてやりたい妹さんとやらが居る事だし、戦う動機自体はあるじゃない。
期待を込めて見つめていると、彼は驚いた顔をしてから目を逸らす。
「お……オレなんかじゃ……。」
「なら、妹さんも逃げられない。」
「でも……。」
尚も自信なさげな声で口ごもった猫耳少年は、その視線をアッシェに向けると、目を閉じてごくりとつばを飲み込む。
「……なにを、したらいい?」
ややあって、彼が口にしたのはそんな言葉。
私は心の中でグッと手を握り締め、ガッツポーズをとった。
――戦力、ゲットだよ!
「あたしも、おにーちゃんといっしょに、きょうりょくする。」
猫耳少年の後ろから、そんな声が上がり小柄な少女が顔を出す。
見た目からすると七歳か八歳ってところかな?
どうやらこの子が件の妹さんらしい。
声が滅茶苦茶かわいい。
正直、こんな小さな子を戦力に考えていいのかどうかは謎だけど、新戦力ゲット……かな?
でも彼女が声を上げてくれたのは大きかった。
なにせ、部屋の隅で様子を伺ってるだけだった子供たちが、自分達も協力すると言って手を上げてくれたから。
ところで、悪い人が入ってきた時の作戦を打ち合わせた後、少し話してみた。
作戦自体は単純だからね。
打ち合わせには殆ど時間がかからなかったから、なにかを話してないと気詰まりだってのが本当のところだけど。
彼等は、私が予想してたとおり貧民区の住人たちだった。
なんでも、たまにあるらしい。
今回みたいに貧民区の住人たちの子供が攫われる事件ってやつが。
大体、三年から五年に一度って言う頻度なんだというんだけど、なんて物騒な話なんだろう。
街壁の中でそんな事が起きたら、そりゃあもう大事件だよ。
彼等も孤児なんだって聞かされた上で、ご飯を食べるのも一苦労だなんて話を聞いちゃうと、自分がどんなに恵まれた環境にいるのかって言う事を嫌でも自覚させられる。
ちなみに、貧民区にもたまに警邏の人がやってくるらしい。
そうした時に、親のいない子供が見つかると町に連れて行かれて戻ってこないんだって。
子供たちはみんな、それを知っているから警邏の人が来ると見つからない様に隠れてやり過ごしてるんだと彼等は教えてくれた。
「それは、住民登録をされた上で、孤児院に入れられてるからなのです。」
ってのが、その話を聞いたアッシェの言葉。
言われてみれば、納得。
あんまり他の子がどこから来たのかなんて聞くことはないけど、貧民区から保護されてきてたとしても可笑しくはないもの。
「ちなみに、親が居ても居なくても、自分で届を出せば住民として認められるのです。」
「だって、そうしたらぜーきんをとられるんだろ?」
「お金のない人からは取れないですから、むしろ何らかの仕事を紹介してもらえる可能性の方が高いのですよ?」
「まじなのです。
それに孤児院に入ると、割と美味しいご飯も食べれるのです。」
アッシェから聞かされたことは、よっぽど彼等にとって衝撃だったらしい。
そろってパカーンと開けられた口が、とても印象的だったとだけ言っておこう。
「大体、図々しいのです。」
「え、あ……?」
「『え、あ?』、じゃないですよ?
こちとら、まだ十一歳の小娘なのです。
それが、二人で協力して何とか逃げ出そうとしてるっていうのに、そこに足手まといにしかならない相手を連れて行けって、一体どういう了見なのです?」
鼻先にずいずいと指を突きつけながら小声で詰るアッシェの迫力に、猫耳少年は背を仰け反らせた。
彼女がおっかないのか、その耳がペタンと頭に張り付いてるのが地味に可愛い。
獣耳族って、そう言うところがちょっとズルいよね。
「……って、お前ら、年下?!」
アッシェの言葉の中で、年齢の部分がクローズアップされて彼の耳には届いたらしく、素っ頓狂な声をあげようとして、慌てて自分の口をふさぐ。
「おやおや、随分と子供っぽい事を言うから年下の子かと思ってたですけど、年上のおにーさんだったのです?」
「アッシェ、煽らない。」
内心では私も彼が年上らしいって事に驚いてたものの、その事をネタに煽るような事を口にするアッシェをとりあえず黙らせる。
なんせ、上の方にある小窓から少しだけ見える空がもう赤く染まってきてるんだよ。
悪い人達は多分、暗くなってから移動を始めるだろう。
後ろ暗い事やってる人って、どういう訳だか夜になってから活動を始めるものだもの。
だから、もうそろそろ来るハズなんだよね。
私達を回収しに。
イコール、無駄話をしてる時間はもうないって事。
「要点だけ言う。」
「あ、ああ……。」
「妹を逃がしたいんなら、あなたも私達に協力して。」
大体が、アッシェの計画そのものが最初から無茶なんだよ?
だって、悪い人が一人で行動してる訳ないじゃない。
それなのに、一人でその人達に立ち向かう気満々なんだもの。
ただ、残念な事に私ってば、運動神経的な方向の能力はアッシェと違って死滅してるからね。
彼女と一緒に戦おうにも、逆に足手まといになっちゃうのが目に見えてる。
その点、獣耳族の子なら私よりもずっとそう言った方向に秀でてるはず。
ここは何としてでも、アッシェと共闘して貰いたいところ。
幸いな事に、彼には逃がしてやりたい妹さんとやらが居る事だし、戦う動機自体はあるじゃない。
期待を込めて見つめていると、彼は驚いた顔をしてから目を逸らす。
「お……オレなんかじゃ……。」
「なら、妹さんも逃げられない。」
「でも……。」
尚も自信なさげな声で口ごもった猫耳少年は、その視線をアッシェに向けると、目を閉じてごくりとつばを飲み込む。
「……なにを、したらいい?」
ややあって、彼が口にしたのはそんな言葉。
私は心の中でグッと手を握り締め、ガッツポーズをとった。
――戦力、ゲットだよ!
「あたしも、おにーちゃんといっしょに、きょうりょくする。」
猫耳少年の後ろから、そんな声が上がり小柄な少女が顔を出す。
見た目からすると七歳か八歳ってところかな?
どうやらこの子が件の妹さんらしい。
声が滅茶苦茶かわいい。
正直、こんな小さな子を戦力に考えていいのかどうかは謎だけど、新戦力ゲット……かな?
でも彼女が声を上げてくれたのは大きかった。
なにせ、部屋の隅で様子を伺ってるだけだった子供たちが、自分達も協力すると言って手を上げてくれたから。
ところで、悪い人が入ってきた時の作戦を打ち合わせた後、少し話してみた。
作戦自体は単純だからね。
打ち合わせには殆ど時間がかからなかったから、なにかを話してないと気詰まりだってのが本当のところだけど。
彼等は、私が予想してたとおり貧民区の住人たちだった。
なんでも、たまにあるらしい。
今回みたいに貧民区の住人たちの子供が攫われる事件ってやつが。
大体、三年から五年に一度って言う頻度なんだというんだけど、なんて物騒な話なんだろう。
街壁の中でそんな事が起きたら、そりゃあもう大事件だよ。
彼等も孤児なんだって聞かされた上で、ご飯を食べるのも一苦労だなんて話を聞いちゃうと、自分がどんなに恵まれた環境にいるのかって言う事を嫌でも自覚させられる。
ちなみに、貧民区にもたまに警邏の人がやってくるらしい。
そうした時に、親のいない子供が見つかると町に連れて行かれて戻ってこないんだって。
子供たちはみんな、それを知っているから警邏の人が来ると見つからない様に隠れてやり過ごしてるんだと彼等は教えてくれた。
「それは、住民登録をされた上で、孤児院に入れられてるからなのです。」
ってのが、その話を聞いたアッシェの言葉。
言われてみれば、納得。
あんまり他の子がどこから来たのかなんて聞くことはないけど、貧民区から保護されてきてたとしても可笑しくはないもの。
「ちなみに、親が居ても居なくても、自分で届を出せば住民として認められるのです。」
「だって、そうしたらぜーきんをとられるんだろ?」
「お金のない人からは取れないですから、むしろ何らかの仕事を紹介してもらえる可能性の方が高いのですよ?」
「まじなのです。
それに孤児院に入ると、割と美味しいご飯も食べれるのです。」
アッシェから聞かされたことは、よっぽど彼等にとって衝撃だったらしい。
そろってパカーンと開けられた口が、とても印象的だったとだけ言っておこう。
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