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二年目 フレトゥムールの昔話
汚れ仕事
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人攫い達は、中に居る私達が、まさか抵抗を企ててるなんて考えても居なかったらしい。
もうすぐ完全に日が落ちるくらいの時間帯になった頃に、何やら馬鹿話をしながら私達が待つ部屋(小屋?)へとやってきた。
無造作に扉を開けて中へ踏み込んだ大男は、半ば後ろを向いていたから、多分何が起きたのか分からなかったんじゃないかな。
でもね、正直なところ私も何が起きたのか分からなかった。
暗くなってきている時間帯で暗かったというのもあるけど、理由はそれだけじゃない。
きっと、アッシェの動きが早すぎたんだよ。
だってね、気が付いたら扉の取手に手を掛けた熊人族の男が首から血を流しながらゆっくりと膝をついて倒れ込むところだったんだもの。
あんまりにもびっくりして、危うく悲鳴をあげるところだった。
――って、驚いて立ち竦んでる場合じゃないよ!
一瞬、思考が止まりそうになった私の意識を呼び戻したのは、アッシェが後に続く男に飛びかかろうと地を蹴る音。
アッシェが二人目を相手にしている間に、私達は倒れ伏した熊人族が身に着けていた大ぶりのナイフを回収する。
トンっと言う軽い音を立てて地を蹴った彼女は、熊人族の首から引き抜いたばかりの木杭をその剥き出しにされた喉元へと体当たりをする勢いを利用して押し込む。
アッシェは喉元に突き立てた杭をそのままに、男の胸を蹴り空中でくるんと一回転すると、音もたてず軽やかに地に降り立つ。
二人目の男が持っていた覆いつきの灯りが、ほんの一瞬、妙に無機質に見えるアッシェの顔を照らして地面に落ちた。
その表情は、まるで作りモノのようにピクリとも動かない。
そんな彼女は、いつもコロコロと表情が良く変わるアッシェと同じ人にはとても見えなくて、なんだか胸がギュッと痛くなる。
覆いの割れる硬質な音がやけに遠くに聞こえたのは、アッシェが急にどこかに行ってしまいそうな気がしたせいなのかも。
それとも、この出来事自体が夢だったらって言う願望?
だってさ、後から考えても、やっぱりこの時の事がそうであったら良かったのにって思うし。
後から思い返してみると、間違いなくこの事件から私の生死観的なモノって変わって行ったんじゃないかなって思う。
――こんなに簡単に、ヒトって死んじゃうのか……。
目の前で急速に冷たくなっていく熊人族を前に、モノ思う。
命って、すごく簡単に無くなっちゃうものらしい。
その人が、いい人であっても悪い人であっても、きっと、それは変わらないんじゃないかな。
「んなっ?!」
やけにゆっくりと倒れていく丸耳族の後ろから引きつった声が上がり、三人目の存在に気付く。
そこにいたのはアッシェと対して背丈の変わらない、小柄な鼠人族。
アッシェが静かにそちらに視線を向けると、その鼠人族は驚きに目を見開いた状態のまま棒立ちになる。
「――いい子なのです。」
慈愛に満ちた口調とは裏腹に、その声には底冷えする響きが含まれてた。
二人目の男の武器を手に入れる為に、その亡骸に近づこうとしていた猫耳少年の耳がペタンと伏せられ、股の間に尻尾が入り込むのが見える。
――分かるよ、分かる。
私も怖いし。
猫耳少年を押しのけて、アッシェがさり気なく後ろに回した手を無視して鼠人族の男性の後ろに回り込み、その背に体当たりするようにして、熊人族の亡骸から奪い取ったナイフをその背に突き刺す。
硬いものにあたる手ごたえ。
――後ろからだったら、なんとかイケるかと思ったんだけどな。
流石に背骨にあたるようなところは狙わないから、肋骨とかにあたったっぽい。
ほんの少しだけ刃を浮かせて、角度を変えると、再度、突き入れる。
今度は上手くいった。
肺か何かに刺さったのか、血の塊を吐き出し倒れる鼠人族の向こう側に、驚きのあまり目を見開いたアッシェの姿が見える。
「――コンちゃ……」
何かを言いかけた彼女に向かって、親指を立てて口の端を上げ、片目をつぶってみせた。
笑ってウィンクのつもりが、両眼を閉じちゃったって言うのはご愛敬。
「アッシェにだけ、やらせない。」
「こんな事、アッシェだけにやらせとけばいいのですよ……。」
困った表情で呟くアッシェの姿に、ちょっとホッとした。
「アッシェにだけ、汚れ仕事なんかさせないよ?」
――だって、そんな事したら親友でいられないじゃない?
もうすぐ完全に日が落ちるくらいの時間帯になった頃に、何やら馬鹿話をしながら私達が待つ部屋(小屋?)へとやってきた。
無造作に扉を開けて中へ踏み込んだ大男は、半ば後ろを向いていたから、多分何が起きたのか分からなかったんじゃないかな。
でもね、正直なところ私も何が起きたのか分からなかった。
暗くなってきている時間帯で暗かったというのもあるけど、理由はそれだけじゃない。
きっと、アッシェの動きが早すぎたんだよ。
だってね、気が付いたら扉の取手に手を掛けた熊人族の男が首から血を流しながらゆっくりと膝をついて倒れ込むところだったんだもの。
あんまりにもびっくりして、危うく悲鳴をあげるところだった。
――って、驚いて立ち竦んでる場合じゃないよ!
一瞬、思考が止まりそうになった私の意識を呼び戻したのは、アッシェが後に続く男に飛びかかろうと地を蹴る音。
アッシェが二人目を相手にしている間に、私達は倒れ伏した熊人族が身に着けていた大ぶりのナイフを回収する。
トンっと言う軽い音を立てて地を蹴った彼女は、熊人族の首から引き抜いたばかりの木杭をその剥き出しにされた喉元へと体当たりをする勢いを利用して押し込む。
アッシェは喉元に突き立てた杭をそのままに、男の胸を蹴り空中でくるんと一回転すると、音もたてず軽やかに地に降り立つ。
二人目の男が持っていた覆いつきの灯りが、ほんの一瞬、妙に無機質に見えるアッシェの顔を照らして地面に落ちた。
その表情は、まるで作りモノのようにピクリとも動かない。
そんな彼女は、いつもコロコロと表情が良く変わるアッシェと同じ人にはとても見えなくて、なんだか胸がギュッと痛くなる。
覆いの割れる硬質な音がやけに遠くに聞こえたのは、アッシェが急にどこかに行ってしまいそうな気がしたせいなのかも。
それとも、この出来事自体が夢だったらって言う願望?
だってさ、後から考えても、やっぱりこの時の事がそうであったら良かったのにって思うし。
後から思い返してみると、間違いなくこの事件から私の生死観的なモノって変わって行ったんじゃないかなって思う。
――こんなに簡単に、ヒトって死んじゃうのか……。
目の前で急速に冷たくなっていく熊人族を前に、モノ思う。
命って、すごく簡単に無くなっちゃうものらしい。
その人が、いい人であっても悪い人であっても、きっと、それは変わらないんじゃないかな。
「んなっ?!」
やけにゆっくりと倒れていく丸耳族の後ろから引きつった声が上がり、三人目の存在に気付く。
そこにいたのはアッシェと対して背丈の変わらない、小柄な鼠人族。
アッシェが静かにそちらに視線を向けると、その鼠人族は驚きに目を見開いた状態のまま棒立ちになる。
「――いい子なのです。」
慈愛に満ちた口調とは裏腹に、その声には底冷えする響きが含まれてた。
二人目の男の武器を手に入れる為に、その亡骸に近づこうとしていた猫耳少年の耳がペタンと伏せられ、股の間に尻尾が入り込むのが見える。
――分かるよ、分かる。
私も怖いし。
猫耳少年を押しのけて、アッシェがさり気なく後ろに回した手を無視して鼠人族の男性の後ろに回り込み、その背に体当たりするようにして、熊人族の亡骸から奪い取ったナイフをその背に突き刺す。
硬いものにあたる手ごたえ。
――後ろからだったら、なんとかイケるかと思ったんだけどな。
流石に背骨にあたるようなところは狙わないから、肋骨とかにあたったっぽい。
ほんの少しだけ刃を浮かせて、角度を変えると、再度、突き入れる。
今度は上手くいった。
肺か何かに刺さったのか、血の塊を吐き出し倒れる鼠人族の向こう側に、驚きのあまり目を見開いたアッシェの姿が見える。
「――コンちゃ……」
何かを言いかけた彼女に向かって、親指を立てて口の端を上げ、片目をつぶってみせた。
笑ってウィンクのつもりが、両眼を閉じちゃったって言うのはご愛敬。
「アッシェにだけ、やらせない。」
「こんな事、アッシェだけにやらせとけばいいのですよ……。」
困った表情で呟くアッシェの姿に、ちょっとホッとした。
「アッシェにだけ、汚れ仕事なんかさせないよ?」
――だって、そんな事したら親友でいられないじゃない?
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