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二年目 錬金術師のお仕事
獣の氏族 上
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「そろそろ、機嫌を直したらどうかね?」
「セリスさんが作ってくれた服なのに……」
「すぐにきれいにしたから、臭いも残っていないではないか」
「セリスさんが作ってくれた服なのに……」
「いい加減、普通の会話に戻れないかね?」
なだめすかして乗せられたヤギ車の上で、呆然とリエラは同じ言葉を呟き続けていた。
そんなリエラに呆れたようにアスタールさんはため息を吐く。
「アスタールさんも、リリンさんが作った服をヤギの鼻水まみれにされちゃえばいいんです」
「では、今晩はヤギステーキで」
「メ”?!」
でも、そんなアスタールさんにとっさに返したリエラの言葉の効果は覿面だった。
アスタールさんも、ヤギステーキと断じたものだから、ヤギは驚きの声を上げる。
それでも、ちゃんと道を逸れずに走っているのは偉いとは思う。
鼻水をかけたのは許さないけど。
「まあ、他にも二匹いるとはいえ、このヤギが居なくなると不便だ。今から行く獣の氏族で分けてもらう肉で我慢してくれたまえ」
「残念。じゃあ、このヤギはいずれって事で」
「メ”!」
ヤギが抗議の声を上げたけれど、無視だ無視!
セリスさんが作った服を汚したのに、言葉で責められるだけで済んだだけ、感謝してほしいくらい。
「さて、これから行く獣の氏族に関してだが、君はどの程度の知識があるかね?」
「獣の氏族でお買い物ってした事がないので、この町に来たばかりの時にアスラーダさんにざっと教えてもらった程度です」
確かその時に教わったのは、獣の氏族では、ヤギや鳥を育てている事。
それから、育てた動物の毛や卵や肉を他の氏族に売って生計を立てているというお話。
あ、そうそう。
その時に森の氏族の居住区で、初めてヤギの乳が入った氷菓子を食べたんだよね。
アスラーダさん推奨のあの氷菓子は、今でもリエラのお気に入りだ。
「大まかな部分は合っているのだが……」
「大まかには、ですか?」
「うむ。育てているのは、先代が創った魔獣なのだ」
確かに、大体は合ってる。
育てているのが魔獣だって言うのは、きっとワザと言わなかったんだろうなぁ。
今だから平気だけど、去年の来たばっかりの時にそんな話を聞いていたら、怯えただろうし。
「……あれ? 先代様が創ったって言いました?」
「うむ」
「って事は、箱庭産なんですか」
アスタールさん曰く、中町にいる動物はほとんどが先代様の手によって箱庭で様々な調整がされているらしい。
ヤギだったら、食べた草によって四霊属性を持った毛が生えるようになるとか、肉や乳の味や臭いの改善だとか。
体の大きさや骨格も弄られてるらしいから、実はヤギという名の別の生物なのかも。
「なんで、ヤギだったんでしょう??」
「さて? 先代が馬を食べるのは嫌がったらしいのだが……」
「馬に何か思い入れでもあったんでしょうか??」
「あとは、ヤギだと岩山を器用に登るとかなんとか?」
「なるほど。理由はよくわからない上に曖昧だと、そういう訳ですね」
「平たく言えばそうなる」
ついでに、アスタールさんがヤギが好きなのかと聞いてみると、中町で目に付く生き物がヤギだったからそれを自分用に調整したらしく、特別な思い入れはないらしい。
それなら、今、このヤギ車を牽いているヤギをステーキにしてもいいんじゃないかな? と思ったリエラは、自分で思っている以上に執念深かったみたいだ。
自分でもびっくり!
工房の北に広がる広大な牧草地を超えると、前方に浮き上がって見えてくる岩山の群れが獣の氏族の居住区だ。
近づかないと、中町の居住区って居住区の向こうに聳える岩壁と同化していて分かりづらいんだよね。
今日は居住区に近づくと、岩山のあちこちにぽっかりと開いた出入口に住人たちの姿が見える。
きっと、週に一度アスタールさんが自分たちの氏族の元を訪れる日だからなんだろう。
グラムナードの民は見た目で年齢が分かりづらい。
でも、膝をついて頭を垂れてる人が年かさの人で、立ったまま体を二つに折っているのが若い人なんだと思う。
やっぱり、年代によって信仰の重さが違うんだろうなぁ……。
その信仰心を向けられてる本人の方に視線を向けてみたけれど、アスタールさんは彼らの姿を確認するでもなく、普段と変わらぬ様子で書類を眺めているだけだった。
「セリスさんが作ってくれた服なのに……」
「すぐにきれいにしたから、臭いも残っていないではないか」
「セリスさんが作ってくれた服なのに……」
「いい加減、普通の会話に戻れないかね?」
なだめすかして乗せられたヤギ車の上で、呆然とリエラは同じ言葉を呟き続けていた。
そんなリエラに呆れたようにアスタールさんはため息を吐く。
「アスタールさんも、リリンさんが作った服をヤギの鼻水まみれにされちゃえばいいんです」
「では、今晩はヤギステーキで」
「メ”?!」
でも、そんなアスタールさんにとっさに返したリエラの言葉の効果は覿面だった。
アスタールさんも、ヤギステーキと断じたものだから、ヤギは驚きの声を上げる。
それでも、ちゃんと道を逸れずに走っているのは偉いとは思う。
鼻水をかけたのは許さないけど。
「まあ、他にも二匹いるとはいえ、このヤギが居なくなると不便だ。今から行く獣の氏族で分けてもらう肉で我慢してくれたまえ」
「残念。じゃあ、このヤギはいずれって事で」
「メ”!」
ヤギが抗議の声を上げたけれど、無視だ無視!
セリスさんが作った服を汚したのに、言葉で責められるだけで済んだだけ、感謝してほしいくらい。
「さて、これから行く獣の氏族に関してだが、君はどの程度の知識があるかね?」
「獣の氏族でお買い物ってした事がないので、この町に来たばかりの時にアスラーダさんにざっと教えてもらった程度です」
確かその時に教わったのは、獣の氏族では、ヤギや鳥を育てている事。
それから、育てた動物の毛や卵や肉を他の氏族に売って生計を立てているというお話。
あ、そうそう。
その時に森の氏族の居住区で、初めてヤギの乳が入った氷菓子を食べたんだよね。
アスラーダさん推奨のあの氷菓子は、今でもリエラのお気に入りだ。
「大まかな部分は合っているのだが……」
「大まかには、ですか?」
「うむ。育てているのは、先代が創った魔獣なのだ」
確かに、大体は合ってる。
育てているのが魔獣だって言うのは、きっとワザと言わなかったんだろうなぁ。
今だから平気だけど、去年の来たばっかりの時にそんな話を聞いていたら、怯えただろうし。
「……あれ? 先代様が創ったって言いました?」
「うむ」
「って事は、箱庭産なんですか」
アスタールさん曰く、中町にいる動物はほとんどが先代様の手によって箱庭で様々な調整がされているらしい。
ヤギだったら、食べた草によって四霊属性を持った毛が生えるようになるとか、肉や乳の味や臭いの改善だとか。
体の大きさや骨格も弄られてるらしいから、実はヤギという名の別の生物なのかも。
「なんで、ヤギだったんでしょう??」
「さて? 先代が馬を食べるのは嫌がったらしいのだが……」
「馬に何か思い入れでもあったんでしょうか??」
「あとは、ヤギだと岩山を器用に登るとかなんとか?」
「なるほど。理由はよくわからない上に曖昧だと、そういう訳ですね」
「平たく言えばそうなる」
ついでに、アスタールさんがヤギが好きなのかと聞いてみると、中町で目に付く生き物がヤギだったからそれを自分用に調整したらしく、特別な思い入れはないらしい。
それなら、今、このヤギ車を牽いているヤギをステーキにしてもいいんじゃないかな? と思ったリエラは、自分で思っている以上に執念深かったみたいだ。
自分でもびっくり!
工房の北に広がる広大な牧草地を超えると、前方に浮き上がって見えてくる岩山の群れが獣の氏族の居住区だ。
近づかないと、中町の居住区って居住区の向こうに聳える岩壁と同化していて分かりづらいんだよね。
今日は居住区に近づくと、岩山のあちこちにぽっかりと開いた出入口に住人たちの姿が見える。
きっと、週に一度アスタールさんが自分たちの氏族の元を訪れる日だからなんだろう。
グラムナードの民は見た目で年齢が分かりづらい。
でも、膝をついて頭を垂れてる人が年かさの人で、立ったまま体を二つに折っているのが若い人なんだと思う。
やっぱり、年代によって信仰の重さが違うんだろうなぁ……。
その信仰心を向けられてる本人の方に視線を向けてみたけれど、アスタールさんは彼らの姿を確認するでもなく、普段と変わらぬ様子で書類を眺めているだけだった。
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