リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 錬金術師のお仕事

森の氏族 上

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 森の氏族の居住区では、昨日のように大げさなお出迎えはなかった。
道行く人も作業を一旦止めて軽く頭を下げる程度。
獣の氏族の居住区での光景は、リエラの中の普通とはかけ離れていたから、この許容範囲内の対応に少しほっとする。
牧草地がひたすら広がっていた獣の氏族の居住区と違って、森の氏族の居住区の周囲には広々とした畑の姿。
穀物だけでなく、色とりどりの野菜も植えられているみたいで生い茂る緑の葉陰に赤や黄色がチラホラ見えている。
とはいえ、周辺の景色とは違い、居住地自体の構造はどこも同じようなものらしい。
ヤギ車は昨日と同じような規模のヤギ車置き場へと向かっていった。

 アスタールさんを迎えた男性の反応も、目上の人に対するものではあるもののリエラから見ても普通の範囲内。
獣の氏族の腰を直角に折るようなんじゃなく、丁寧に頭を下げる程度だ。

「錬金術師様、本日もご足労いただきありがとうございます」
「これは弟子のリエラだ」
「森の氏族長をいたしております、エサイアスです。よろしくお見知りおきを」

 彼が顔を上げるのに合わせて、アスタールさんは頷きを返すとリエラに視線を向ける。
アスタールさんの視線を追ってリエラを確認した男性は、改めて頭を下げつつ自己紹介をしてくれた。
彼が頭を下げる前に注目した肩に置かれている手は、親しさを表しているんじゃなく、多分リエラが余計なことを言いそうになった時の為の抑止力だとおもう。
ふふふ。
昨日はお辞儀を返そうとして、頭を鷲掴みにされたからね……。
目礼だけなら、大丈夫なはず!

 さりげなく肩から手がおろされ、エサイアスさんとアスタールさんが並んで歩き始める。
対応に間違いがなかったらしいとホッと胸をなでおろしているうちに、二人の背中はずいぶんと遠い場所に……。
置いて行かれては大変だと、リエラも二人の後に続くために足を速める。
追いついた時にはすでに二人の間で話は進んでいて、今日もアスタールさんが帰るまでの間、森の氏族の生活を見学するという方向で手筈が整っていた。

「では、リエラ様はこちらでしばらくお待ちください」

 エサイアスさんに案内されたのは、居心地よく整えられた応接室。
森の氏族のものらしく、室内は木製の家具がセンス良く配置されている。
壁も木の板が隙間なく貼られているから、この室内だけを見ると、岩山を穿って作られた部屋だとはとてもじゃないけど思えないよね。

「リエラ」
「はい?」
「あまり、羽目を外し過ぎないように」

 アスタールさんのその言葉に、思わずほっぺを膨らましそうになり、慌てて自重。
危ない危ない。
また、鷲掴みされるところだった……!
リエラが慌てて表情を整える様子にアスタールさんが目を細めるのを見て、エサイアスさんが意外なものを見たかのように目を丸くしていた。



 アスタールさんたちが部屋を後にしてから一〇分程度で、リエラの元に今日の案内役の人が到着した。
案内役は二人。
片方がアスタールさんの叔父さんらしく、セリスさんの末妹のテミスちゃんにそっくりな男の人だ。
イコール、目がぱっちりと大きくて可愛らしいって事。
これで成人男性(成人している子供アリ)だなんて、詐欺だと思うよ……。
『可愛い女の子』で通りそうな見た目だし。
彼はとっても小柄な男性で、多分、身長は一六〇センチに届いてないんじゃないかな?
頑張って見上げなくてもいい高さに顔があるから、ちょっぴり親近感が……。

「僕はソル。君には、セリスたちの父親だと言った方が通りがいいかな?」
「いつも、娘さん方にはお世話になっています」

 反射的に頭を下げそうになって、慌てて目礼に切り替えると、目の前の男性は「それでいい」と言わんばかりに鷹揚な笑みを浮かべる。

「彼は、森の氏族の箱庭で伐採の責任者をしているジェロラン」
「ジェロランです。よろしくお見知りおきください」

 ソルさんは後ろで控えていたもう一人の男性を手ぶりで隣に呼ぶと、彼の事を紹介してくれた。
ちょっと安心したのは、ジェロランさんと言う男性が昨日の案内役の人たちのような妙な気配を漂わせなかった事。
ごく普通に、敬意の籠った仕草で頭を下げると、少し緊張した様子で笑みを浮かべる。

「輝影殿からは、じっくりと案内してほしいと言われているからね。今日は我らの氏族が保有している箱庭を案内させてもらおうと思っているんだけど……」

 それでいいかな? と、可愛らしく首を傾げるソルさんに、リエラは反射的に頷いていた。
容姿はテミスちゃん、仕草はセリスさんとか……。
ちょっとソルさん、それはリエラにとって販促です……!
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