リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 岩窟の迷宮

駐馬車場

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「精錬所のそばに共用の馬車置き場がある。そこにヤギ車を預けて迷宮までは徒歩で行くから用意するように」

 師兄の言葉に従って、私達は自分の荷物を確認。

「武器よーし!」
「ポーチよーし!」
「小袋、準備おっけー!」

 隣同士、互いの持ち物を確認し合えば準備は完了。
ヤギ車がとまるのと同時に順番に車の外に出て、師兄がヤギ車を預ける手続きを終えるのを待つ。

「乗ってきたヤギ車をどうするのかと思ってたら、預ける場所があったのですねぇ」
「ん。びっくり」

 アッシェが、師兄とリエラちゃんの向かった先に首を伸ばしながら呟くのに相槌を打っていると、スルト君とポッシェもしゃべりだす。

「俺も最初はびっくりしたけど、さすがにここまで歩いてくるのはきびしーよな」
「無理無理、死んじゃう! 歩きだと朝のうちに出て、やっと夕方につくかどうかだよ、スルトん」
「確かに、その後すぐに金虫かなむしの相手をするのは厳しいね」
「中町の端から外町の端まで来てるですから、遠いわけですよ」
「……言えてる」

 ちなみに、この『岩窟の迷宮』。
グラムナードの町から他の町へと通じる外門の近くにある。
中町にしろ外町にしろ、どっちも無駄に広いから、端から端へ向かおうとするとそれだけですごく大変。
今日だって、一時間以上ヤギ車に乗って移動してきている。
徒歩じゃ、絶対無理!
中町と違って、外町は道の往来も多いからスピードを出すわけにいかないのも時間がかかる原因かな。

「みんな、おまたせ~!」

 リエラちゃんが大きな声をあげながら、テテテと走って戻ってきた。
その後ろを歩く師兄が、その背中を見つめながら目を細める。
『好き』の気持ちがたくさんこもったその眼差しを、向けられている本人だけが気付いてない。
鈍感なのか、気付かないふりをしているのかは良く分からないけど……鈍感な方、かな?
私の背後でルナちゃんが「あ~もどかしいぃ……」と呟くのが聞こえたけど、こういうのは外野が口を出しちゃダメなんじゃないかな?

「リエらん、手続きおつ!」
「ルナちゃん、おつあり♪ でも、ヤギ車のお預かり、有料だった……!」

 労いの言葉をかけたルナちゃんに返ってきたのは、思いもよらない返事だった。
あ、私も衝撃的だと思ったけど。

「あっちも商売だからな。本来は精錬所に買い付けに来る商人用なんだ」
「中町の人間が来た時には快く貸してくれるけど、それも下心があってのものだからねぇ」

 言われて考えてみれば、当たり前かも。
中町でサービスとして無料になっているのが、むしろおかしい。
ちょっと前まで、なにかにつけてサービス料を取られるのが当たり前の文化で育ってきていたはずなのに、私ってば中町での当たり前に慣れすぎ!
まあ……それだけ、中町での生活が快適なんだってことだろうけど。
リエラちゃんも同じ事に気が付いたみたい。
愕然とした表情で頭を抱えてる。

「まあ、余裕を持った広さがあるから、今回みたいに取引をしない人間も使えるんだがな」
「そーそー。さすがに迷宮のそばは関連施設で混みあってるし、悪い事を考えるのもいるから有料でも預かってもらえるのは安心だよね」
「俺としては、こんな距離を歩かないですんだんだからヤギ車を預かってもらうのに金がかかっても文句はねーな」

 でも、そのスルト君の言葉はリエラちゃんから帰ってきた言葉によってすぐに翻される。 

「……でも、流石に一万ミルは高すぎだと思う」
「高!? 師匠、次は泊まりってことにして朝から歩こう!」
「いやいや、スルトん? 頭割りにすれば千ミルちょっとだから」
「んー……。乗合馬車に往復で乗るよりちょっと高いくらいかな?」
「そ。そんなもんね。だから、工房から乗ってこられる分お得よ?」
「お得……なの、か?」

 スルト君は首を傾げているけど、私はそれを聞いて納得。
乗合馬車だと、乗っている時間で代金が決まるから妥当な範囲かも。

「乗合馬車なんてあるんだ……」
「アッシェも初めて知ったですぅ」
「でも、無いと不便すぎ」

 乗合馬車の存在に衝撃を受けているリエラちゃんにアッシェが同意してたけど、無かったら外町の人達の生活が不便すぎる。
あって当然とまでは言わないけど、存在するのは妥当な線だと思う。

「なんにせよ、時間がもったいない。喋るなら移動しながらにしてくれ」

 師兄が呆れ交じりの表情でそう促してきたのをきっかけに、私達は迷宮に向かって歩き出す。
ちょっぴり、今から迷宮に行く予定があったってことを忘れかけてたのは私とアッシェの間でのナイショ。
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