リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 岩窟の迷宮

壁画

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『岩窟の迷宮』の場合は、大きく口を開いた穴から入ってすぐの、大広間に描かれた壁画が『入り口』。
入ってすぐに見える正面の壁には、すり鉢状にえぐられた地面で作業をする人々が描かれていた。

「顔がみんな横向き……」
「ほんとです~!」
「体は前を向いているのにねぇ?」

 ほかの人が出入りをするのに邪魔にならないように真ん中に立って、キョロキョロと周りを見回す。
ここに出入りする人達はみんな、迷宮に入るためにまっすぐ壁画に向かう。
だから広間の真ん中が、一番人通りが少ない。

 探索者組の三人は前にもここに来たことがあるみたいで、物珍し気にしている私達三人を微笑まし気に眺めてる。
その視線がちょっぴりシャクだけど、気にしない。
とりあえず、満足するまで干渉する方が優先。
左の壁に描かれているのは、地面のあちこちを掘り返している人々の姿。

「これは、露天掘りってやつです?」
「良く知ってるな……」
「一応、お勉強は得意だったですよ」

 アッシェと師兄のそんな会話を聞きながら、反対側に目を向ける。
こっちの壁は――魔獣と戦っている場面?
こん棒や槌を持った人が、うねうねとした巨大な目の無い蛇のようなものに立ち向かう姿が絵が描かれている。
ただ、蛇っていうのにはなんだか違和感があるんだけど……?

「アスラーダさん、これって蛇ですか?」

 同じ疑問をもったリエラちゃんが、私の代わりに師兄に訊ねるとすぐに答えが返ってくる。

「いや、これは『岩石食らい』っていう魔獣だな」

 ふむふむ、『岩石食らい』?
名前から素直に考えるなら、岩を食べるのかな?
絵の中の『岩石食らい』の背後には、色とりどりの岩塊が山積み。
あの岩塊を巡って、人と争っているのかも。

「『岩石食らい』ですか?」
「ここの迷宮特有の魔獣で、実際には蛇じゃない」
「でも、にょろにょろしてるですよ?」

 いや、アッシェ。
にょろにょろしてるのは蛇だけじゃないよ?
心の中でツッコみつつアッシェを見ると、彼女はこちらに向かっていたずらっぽく舌を出して見せる。
アレか、リエラちゃんと師兄がいい雰囲気になりかけたのを邪魔したのか……。

「壁画だと分かりづらいんだが、どちらかというと巨大なミミズと思った方がいいな」
「ミミズ、ですか……」

 最も、本人達は気にも留めてないけど。
『蛇というよりもミミズ』だと聞いたリエラちゃんは私の心を代弁するかのように、嫌そうな声を上げた。

「ぬめぬめなのです?」
「ぬめぬめだな」
「うええぇぇ……」

 それはそれとして、この壁画、一体だれが書いたものなんだろう?
私は光銅石の放つ柔らかな光に照らし出される壁画を見回し、思考を巡らす。

 見習い期間が終了した時に私達四人が教えられたことの一つに、この町にある『迷宮』の事がある。
この町に存在する六つの迷宮が人造物であり、それを作ったのが、お師匠様の先代錬金術師だって話を聞いた時には驚いた。
でも、驚きつつも『輝影の支配者』についての話を聞いて納得。
『輝影の支配者』にしろ『水の愛し子』にしろ、どちらも神様の端くれなんだっていうんだから、当然なのかなと。
現在の『輝影の支配者』だっていうお師匠様も、あんまり神様っぽくない。
普通にその辺にいる人と変わったところもないし。
あ、かなり変な人ではあるか。

 なにはともあれ、ここに描かれた壁画って、先代錬金術師がいかにも昔からありましたった顔をする為にわざわざ描いたのかなって思ったんだよね。
もしもそうなら、かなり凝り性なんじゃないかな?
私と気が合いそう。

「コンカッセ」

 呆れたようなポッシェの声にハッとして周りを見回すと、いつの間にか他のメンバーは奥の壁画の前に移動してしまっていた。
私のそばにいるのはポッシェだけだ。

「いつまでも眺めてないで、そろそろ移動しようって」
「ん」
「コンカッセは夢中になりすぎ。悪い癖だよ」
「ん。反省」

 注意されてしまったから反省したんだけど、ポッシェは懐疑的な表情を浮かべる。

「それ、次に夢中になる何かの前ですぐにどっか行っちゃう反省だよね?」
「……否定できない」

 さすが、赤ちゃんからのお付き合い。
良く分かってる。
信用してもらえないのは悲しいけど仕方がない。
それだけの前例があるんだもの。
この会話自体が、目の前のものに興味を惹かれて没頭してしまう癖を指摘されるたびに繰り返してきたものだし。
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