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二年目 叔母様来襲
和解
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興味なさそうにではあるものの、一応は全部の姿絵を眺め終えたアスラーダさんは、アスタールさんにを回そうとして邪険に払いのけられた。
アスタールさん、興味がないのは分かりますけど……ちょっと、その態度はあんまりだと思います。
彼は仕方なくそれをキュウリ婦人へ返すと、彼女も苦笑を浮かべる。
「興味がないにせよ、ご執心の相手が混ざっていないかの確認はした方がいいんじゃないかしら? ラディの方は問題ない?」
「え? あ、ああ……問題ない」
キュウリ婦人の問いに、アスラーダさんは何故かしどろもどろに答えながら、リエラの方をチラチラと見た。
問題ないってことは、どうやら彼にも『ご執心の相手』とやらが存在しているらしい。
ちょっぴり胸がキュッとしたのを、気付かないふりをする。
リエラは、何にも気付かなかった。
だから、そんな気持ちなんて元々存在しないのだ。
「前々から断っているのに、しつこく絵姿を送ってくるのはそういう意図だったのかね?」
「そうよ。だって、想い人が混じっていたのに断っちゃったら大変じゃない」
キュウリ婦人とアスラーダさんのやり取りから少しして、アスタールさんが幾分かトゲの抜けた声でそう言うと、彼女はキョトンとした顔でそう答えを返す。
アスタールさんがキュウリ婦人を嫌がっていた理由は、これか。
お見合い話をしつこく持ってこられるのが嫌だというのは、ちょっぴり納得。
そうでなくとも、ずいぶん昔から心に決めたお相手がいることだし。
「あとは、一応本人が見ているという体裁ね。自分が恋愛結婚したのに、甥っ子達に政略結婚なんて押し付けないから安心して頂戴」
「それは……助かる」
キュウリ婦人がそう断言したことで、目に見えて部屋の空気が緩む。
ため息交じりに呟いたアスラーダさんに同意するように頷くと、アスタールさんは彼女に向かって口を開く。
「貴族令嬢に私達の想い人は居ない。そういう意図であるならば、適当な時間をあけて勝手に断ってもらいたい」
「あら。あなたもラディも、好きな子は平民なの? なら、次からはそうさせてもらうわね。送るのも結構な手間だし」
アスタールさんの要望を聞いて、キュウリ婦人は絵姿を包み直しながらぼやく。
今回持ってきたものだけを見ても結構な量だ。
これを運ばせることを考えると、確かに手間だし、何より少なくないお金もかかるだろう。
それにしても、アスラーダさんの想い人って平民の女の子なのか。
「ああ、忘れてたわ……!」
キュウリ婦人は梱包を終えたばかりの包みを開きなおすと、中から一際大きな絵姿を二枚取り出す。
どちらも黒髪で、顔立ちがよく似た女の子だ。
もしかしたら姉妹なのかもしれない。
ただ女の子と表現した通り、年齢は十歳前後でリエラよりも年下なんじゃないかと思う。
貴族だと、こんな年齢から政略結婚が視野に入ってくるのか……
自分に関係ないこととはいえ、ちょっとかわいそうな気がする。
「お見合いはしなくていいんだけど、この二人を弟子入りさせることはできないかしら?」
「弟子入り……?」
「最近、あなたのところであちこちから弟子を集めているって噂になってるみたいなのよ。それで、お見合いがだめだったら調薬や魔法の勉強をさせてほしいんですって」
それって、どんな形であれアスタールさんとかアスラーダさんのそばにこの二人を入り込ませたいってことじゃないのかな。
むしろ、お見合いよりタチが悪いような気がする。
アスタールさんも同じように考えたのか、機嫌が急降下しなおす。
「うーん……せめて、片方だけでも、だめかしら?」
「だが断る」
アスタールさんはキュウリ婦人のお願いを、即座に切り捨てた。
アスタールさん、興味がないのは分かりますけど……ちょっと、その態度はあんまりだと思います。
彼は仕方なくそれをキュウリ婦人へ返すと、彼女も苦笑を浮かべる。
「興味がないにせよ、ご執心の相手が混ざっていないかの確認はした方がいいんじゃないかしら? ラディの方は問題ない?」
「え? あ、ああ……問題ない」
キュウリ婦人の問いに、アスラーダさんは何故かしどろもどろに答えながら、リエラの方をチラチラと見た。
問題ないってことは、どうやら彼にも『ご執心の相手』とやらが存在しているらしい。
ちょっぴり胸がキュッとしたのを、気付かないふりをする。
リエラは、何にも気付かなかった。
だから、そんな気持ちなんて元々存在しないのだ。
「前々から断っているのに、しつこく絵姿を送ってくるのはそういう意図だったのかね?」
「そうよ。だって、想い人が混じっていたのに断っちゃったら大変じゃない」
キュウリ婦人とアスラーダさんのやり取りから少しして、アスタールさんが幾分かトゲの抜けた声でそう言うと、彼女はキョトンとした顔でそう答えを返す。
アスタールさんがキュウリ婦人を嫌がっていた理由は、これか。
お見合い話をしつこく持ってこられるのが嫌だというのは、ちょっぴり納得。
そうでなくとも、ずいぶん昔から心に決めたお相手がいることだし。
「あとは、一応本人が見ているという体裁ね。自分が恋愛結婚したのに、甥っ子達に政略結婚なんて押し付けないから安心して頂戴」
「それは……助かる」
キュウリ婦人がそう断言したことで、目に見えて部屋の空気が緩む。
ため息交じりに呟いたアスラーダさんに同意するように頷くと、アスタールさんは彼女に向かって口を開く。
「貴族令嬢に私達の想い人は居ない。そういう意図であるならば、適当な時間をあけて勝手に断ってもらいたい」
「あら。あなたもラディも、好きな子は平民なの? なら、次からはそうさせてもらうわね。送るのも結構な手間だし」
アスタールさんの要望を聞いて、キュウリ婦人は絵姿を包み直しながらぼやく。
今回持ってきたものだけを見ても結構な量だ。
これを運ばせることを考えると、確かに手間だし、何より少なくないお金もかかるだろう。
それにしても、アスラーダさんの想い人って平民の女の子なのか。
「ああ、忘れてたわ……!」
キュウリ婦人は梱包を終えたばかりの包みを開きなおすと、中から一際大きな絵姿を二枚取り出す。
どちらも黒髪で、顔立ちがよく似た女の子だ。
もしかしたら姉妹なのかもしれない。
ただ女の子と表現した通り、年齢は十歳前後でリエラよりも年下なんじゃないかと思う。
貴族だと、こんな年齢から政略結婚が視野に入ってくるのか……
自分に関係ないこととはいえ、ちょっとかわいそうな気がする。
「お見合いはしなくていいんだけど、この二人を弟子入りさせることはできないかしら?」
「弟子入り……?」
「最近、あなたのところであちこちから弟子を集めているって噂になってるみたいなのよ。それで、お見合いがだめだったら調薬や魔法の勉強をさせてほしいんですって」
それって、どんな形であれアスタールさんとかアスラーダさんのそばにこの二人を入り込ませたいってことじゃないのかな。
むしろ、お見合いよりタチが悪いような気がする。
アスタールさんも同じように考えたのか、機嫌が急降下しなおす。
「うーん……せめて、片方だけでも、だめかしら?」
「だが断る」
アスタールさんはキュウリ婦人のお願いを、即座に切り捨てた。
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