237 / 261
二年目 山道視察
やっぱり向いてない
しおりを挟む
結局、追加で二か所の休憩所を作ったところで日が落ちてしまい、今日の移動は終了。
予定していた水場ではなく、作ったばかりの休憩所で野宿をすることになった。
流石に道端にテントを張るということはしないらしい。
持ち運びができる小さなストーブに火を入れると、ほんのりと暖かな光が周囲を照らす。
チラッと周りを見回すと、他にも何組か同じように野宿をする準備をしている姿が見えた。
互いの間隔が結構あいているから、大声で騒がない限りはお話をしていても迷惑になる事はないだろう。
リエラ達はストーブの周りに敷物を敷いて車座に座り込むと、夕飯を取り出してモソモソと口に運び始めた。
「テントは張らないんですね」
そう言ったのは、なんとなく沈黙に耐え切れなかったからだ。
リエラの隣に座ったアスラーダさんは、なんだか居心地が悪そうな雰囲気だし、ダンさんは朝と比べて随分と年を取ったような雰囲気になっている。
……そんなに、山道の改造風景が心の何かを揺さぶったんだろうか?
そんな中で、楽しそうにしているのはラヴィーナさんだけだ。
話したいことがあるわけでもないけど、会話の一つもないと気まずすぎて辛い。
リエラのそんな気持ちを汲んでくれたのか、ストーブで炙った干し肉を飲み込んでからダンさんが口を開く。
「そりゃあ、嬢ちゃん。地面が固すぎてペグが刺さらないからなぁ」
「ああ、それは確かに」
彼の言う通り、元々、馬車が通るのを前提に切り開かれた山道の地面はとても固い。
それなりの頻度で馬車が通るから轍の一つも残りそうなものだけど、それは定期的に補修をしているんだそうだ。
ついでにいうなら、道に小石一つ落ちていないのも補修工事のお陰らしい。
「なら、刺さるようにしましょうか?」
当たり障りのないはずの会話を、斜め上の方向に理解するのがラヴィーナさんの特技なんだろうか?
リエラ達の会話に思いもよらない反応をした彼女に、ダンさんが絶望的な表情を浮かべる。
「冗談よ、冗談」
ラヴィーナさんは、すぐに苦笑を浮かべて手をヒラヒラさせたけど……
いや、あの瞬間は本気でしたよね?
同じことを思ったらしく、アスラーダさんも流石にそれは許可できないと困った表情で伝えていた。
ひどく疲れた様子のダンさんを心配したのか、炎麗ちゃんが子供をあやす時のように穏やかな声を上げてポンポンと彼の膝を優しく叩く。
なんか、慰めているみたいだ。
体の大きな鱗人族が、小さな小竜を抱きしめて癒しを求めている姿は、なんだか妙な可愛らしさを感じる。
昔、アンナちゃんが言ってた『ギャップ萌え』って、こういうやつ?
夜は、火を絶やさないように交代で見張り番をして過ごす。
リエラの順番は、一番最後の日が開ける前の時間帯ということになったので、早々に休ませてもらった。
普段は、一日中歩くなんてことはあまりないから、すっかり疲れ切っていたリエラはあっという間に寝てしまう。
とはいえ、早めに休ませてもらったおかげか、寝起きはばっちり。
「リエラ、起きれるか?」
と、アスラーダさんに小さく名前を呼ばれただけで目が覚めた。
「おはようございます、アスラーダさん」
「おはよう、リエラ」
朝のあいさつを小声で交わし合い、モゾモゾと毛布から這い出してから体に巻き付け直す。
この山道って、日が出ている間は暑いくらいなのに、沈んだ途端にすごく冷え込む。
まだ日の出ていないこの時間帯って、一番冷え込みが厳しいんじゃないだろうか?
アスラーダさんやラヴィーナさんが空気の流れを調整して、暖気を逃しづらくしているのにこんなに冷えるんじゃ、そういった手段のない人達はもっと寒いのに違いない。
この状況が何日も続くのって、かなりきついよね。
テントを張るのが無理なら、宿泊できる施設があればいいのに。
「飲むか?」
アスラーダさんに差し出す湯気の上がるカップを受け取り、フーフーと息を吹きかけながら少しずつ啜る。
お腹の中が温まると、それだけも人心地がついた。
「これ、何日も続けるのって結構つらいですねぇ……」
リエラがそう呟くと、アスラーダさんは苦笑を浮かべてこう返す。
「慣れもあるからな」
慣れたくないって思うリエラは、探索者には向いてない。
改めてそう思った。
いや、リエラは錬金術師になるんだから、別に探索者に向いてなくても問題ないか。
予定していた水場ではなく、作ったばかりの休憩所で野宿をすることになった。
流石に道端にテントを張るということはしないらしい。
持ち運びができる小さなストーブに火を入れると、ほんのりと暖かな光が周囲を照らす。
チラッと周りを見回すと、他にも何組か同じように野宿をする準備をしている姿が見えた。
互いの間隔が結構あいているから、大声で騒がない限りはお話をしていても迷惑になる事はないだろう。
リエラ達はストーブの周りに敷物を敷いて車座に座り込むと、夕飯を取り出してモソモソと口に運び始めた。
「テントは張らないんですね」
そう言ったのは、なんとなく沈黙に耐え切れなかったからだ。
リエラの隣に座ったアスラーダさんは、なんだか居心地が悪そうな雰囲気だし、ダンさんは朝と比べて随分と年を取ったような雰囲気になっている。
……そんなに、山道の改造風景が心の何かを揺さぶったんだろうか?
そんな中で、楽しそうにしているのはラヴィーナさんだけだ。
話したいことがあるわけでもないけど、会話の一つもないと気まずすぎて辛い。
リエラのそんな気持ちを汲んでくれたのか、ストーブで炙った干し肉を飲み込んでからダンさんが口を開く。
「そりゃあ、嬢ちゃん。地面が固すぎてペグが刺さらないからなぁ」
「ああ、それは確かに」
彼の言う通り、元々、馬車が通るのを前提に切り開かれた山道の地面はとても固い。
それなりの頻度で馬車が通るから轍の一つも残りそうなものだけど、それは定期的に補修をしているんだそうだ。
ついでにいうなら、道に小石一つ落ちていないのも補修工事のお陰らしい。
「なら、刺さるようにしましょうか?」
当たり障りのないはずの会話を、斜め上の方向に理解するのがラヴィーナさんの特技なんだろうか?
リエラ達の会話に思いもよらない反応をした彼女に、ダンさんが絶望的な表情を浮かべる。
「冗談よ、冗談」
ラヴィーナさんは、すぐに苦笑を浮かべて手をヒラヒラさせたけど……
いや、あの瞬間は本気でしたよね?
同じことを思ったらしく、アスラーダさんも流石にそれは許可できないと困った表情で伝えていた。
ひどく疲れた様子のダンさんを心配したのか、炎麗ちゃんが子供をあやす時のように穏やかな声を上げてポンポンと彼の膝を優しく叩く。
なんか、慰めているみたいだ。
体の大きな鱗人族が、小さな小竜を抱きしめて癒しを求めている姿は、なんだか妙な可愛らしさを感じる。
昔、アンナちゃんが言ってた『ギャップ萌え』って、こういうやつ?
夜は、火を絶やさないように交代で見張り番をして過ごす。
リエラの順番は、一番最後の日が開ける前の時間帯ということになったので、早々に休ませてもらった。
普段は、一日中歩くなんてことはあまりないから、すっかり疲れ切っていたリエラはあっという間に寝てしまう。
とはいえ、早めに休ませてもらったおかげか、寝起きはばっちり。
「リエラ、起きれるか?」
と、アスラーダさんに小さく名前を呼ばれただけで目が覚めた。
「おはようございます、アスラーダさん」
「おはよう、リエラ」
朝のあいさつを小声で交わし合い、モゾモゾと毛布から這い出してから体に巻き付け直す。
この山道って、日が出ている間は暑いくらいなのに、沈んだ途端にすごく冷え込む。
まだ日の出ていないこの時間帯って、一番冷え込みが厳しいんじゃないだろうか?
アスラーダさんやラヴィーナさんが空気の流れを調整して、暖気を逃しづらくしているのにこんなに冷えるんじゃ、そういった手段のない人達はもっと寒いのに違いない。
この状況が何日も続くのって、かなりきついよね。
テントを張るのが無理なら、宿泊できる施設があればいいのに。
「飲むか?」
アスラーダさんに差し出す湯気の上がるカップを受け取り、フーフーと息を吹きかけながら少しずつ啜る。
お腹の中が温まると、それだけも人心地がついた。
「これ、何日も続けるのって結構つらいですねぇ……」
リエラがそう呟くと、アスラーダさんは苦笑を浮かべてこう返す。
「慣れもあるからな」
慣れたくないって思うリエラは、探索者には向いてない。
改めてそう思った。
いや、リエラは錬金術師になるんだから、別に探索者に向いてなくても問題ないか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,709
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。