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二年目 駐屯所
線引き
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クッションづくりは共有スペースから移動して、リエラが寝ていた部屋の窓辺でやることになった。
大きく開いた窓からは山道が見渡せるし、日差しでぽかぽか。
適度な風が吹き抜けて気持ちがいい。
お腹いっぱいに食べた後だというのもあってか、大きなあくびが口から洩れた。
「あたしもソレ、出来ればよかったのに……」
ラヴィーナさんが、布の端をくっつけているのを覗き込んで呟く。
「あれ? ラヴィーナさんって、出来ないんですか?」
「そうなのよ。魔力をモノに浸透させるのも駄目だし、リエラちゃんが今やってるようなのも駄目。物理的に岩に穴をあけたりするのは出来るんだけど、魔力を用いて変形させるって言うのもできないわ」
「その割に、昨日おトイレを作ってた時に岩くずとか出てませんでしたけど……」
出来上がったトイレの周囲に、そういった残骸的なモノがなかったことを思い出しながら呟くと、彼女はクッションに詰める綿を握りつつ答えをくれた。
「あれはね、ギューッと押しつぶしてやったの」
「ギューッと……ですか」
「そうそう。ギューッと!」
言いながら握り込んだ綿から隙間が消えて、小さなフェルトモドキが出来上がる。
なるほど。
岩をより固くなるように圧し固めた……と。
それは、なかなかの力技だ。
「なんか、頑丈そう」
「頑丈よー? だって、用を足している時に崩れてきたら最悪じゃない」
「確かに」
おトイレで用足し中に穴が崩れて生き埋めとか、想像しただけでもめちゃくちゃ悲惨!
そんなことが起こる危険性なんて、考えもしなかったよ。
おおう、想像したらブルッと来た!
「それにしてもあの子達――」
「あの子達??」
綿を詰め込む手を止めて、ラヴィーナさんと一緒になって窓から身を乗り出すと、彼女が指さす先には
数人の子供が身を寄せ合っている姿が見える。
「……あれ? 昨日の子、かな?」
「昨日の子?」
「水売りさんに突き飛ばされて、ちょっと怪我をしてたから手当てしたんですけど……」
一人だけ小綺麗になっている男の子がいるから、きっとそうだと思う。
「ふーん……」
「でも、この時間になっても出発してないなんて、変ですよね……?」
目を凝らしてよく見てみると、一人だけ、地面に横たわったままの子囲むようにしているみたいだ。
もしかして、病気?
熱さましとか、咳止めなんかはいつも持ち歩いていたはず……
ポーチの中を漁ってみると、他にも腹下しの薬なんかも入っていた。
分けてあげたようと腰を上げると、ラヴィーナさんはいぶかし気な表情を浮かべる。
「どこにいくの?」
「具合の悪い子がいるみたいなので、お薬を持って行こうかと……」
リエラの言葉に、彼女はそのままの表情で首をコテンと傾けた。
「あの子達に支払い能力はないわよ?」
「いやいや、お金なんて採りませんよ!」
困っている人からお金を取ろうなんて思ってもいなかったから、驚きのあまり声がひっくり返ったよ!
そんな、傷に塩を塗り込むような真似、できませんって!
「リエラちゃんは、自分の作ったお薬を無料配布するのが趣味なの?」
「えええ?」
お薬を作るのは趣味と言って差し支えない。
差支えないんだけど、それを無料配布する趣味はないよ。
だって、ちゃんとお金をもらわないと孤児院に仕送りもできないし。
何を言いだすんだと思いつつ、じっとリエラを見つめているラヴィーナさんと目を合わせる。
彼女は一泊置いて、口を開く。
「だって、怪我をしたり具合が悪かったりする人がいたら、タダで治療してあげちゃうんでしょう?」
「そりゃあ、目の前に困っている人がいたら、手を差し伸べますけど……」
それって、人として当然だよね?
それなのに『してあげちゃう』って言い方をされてしまうと、悪いことのように聞こえちゃう。
なんでそんな言い方をするのかと内心、疑問に思っているうちにラヴィーナさんは言葉を続ける。
「でも、そんなことばっかりしていたら、みーんなみんな、リエラちゃんのところに治してもらいにくるようになるんじゃないかしら。普通ならお金がかかる治療をタダでやってくれるんだもの」
「え。それはちょっと……」
「その人達も困っているのに? 具合が悪くて、苦しいから助けを求めてきていても?」
困っている人を助けるのは、人として当然だ。
そう思うけど、誰も彼もがそれを目当てにやってくるなんて、それはリエラの方が困ってしまう。
かといって、ここで手を差し伸べておけば助かるかもしれない命を見捨てるなんていうのも、なんだかいやだ。
「困った人に手を差し伸べるべきだという考えは美徳ではあるけれど、なにをどこまでっていう線引きはきちんとした方がいいわ。そうでないと、気が付いたら身動きがとれなくなってた……なんてことになりかねないんだから」
『線引き』というのはどうやればいいものか、さっぱり見当がつかない。
けれど、ラヴィーナさんがリエラに向けてくる真剣な眼差しに、きちんと自分で決めないといけないことなんろうと思う。
大きく開いた窓からは山道が見渡せるし、日差しでぽかぽか。
適度な風が吹き抜けて気持ちがいい。
お腹いっぱいに食べた後だというのもあってか、大きなあくびが口から洩れた。
「あたしもソレ、出来ればよかったのに……」
ラヴィーナさんが、布の端をくっつけているのを覗き込んで呟く。
「あれ? ラヴィーナさんって、出来ないんですか?」
「そうなのよ。魔力をモノに浸透させるのも駄目だし、リエラちゃんが今やってるようなのも駄目。物理的に岩に穴をあけたりするのは出来るんだけど、魔力を用いて変形させるって言うのもできないわ」
「その割に、昨日おトイレを作ってた時に岩くずとか出てませんでしたけど……」
出来上がったトイレの周囲に、そういった残骸的なモノがなかったことを思い出しながら呟くと、彼女はクッションに詰める綿を握りつつ答えをくれた。
「あれはね、ギューッと押しつぶしてやったの」
「ギューッと……ですか」
「そうそう。ギューッと!」
言いながら握り込んだ綿から隙間が消えて、小さなフェルトモドキが出来上がる。
なるほど。
岩をより固くなるように圧し固めた……と。
それは、なかなかの力技だ。
「なんか、頑丈そう」
「頑丈よー? だって、用を足している時に崩れてきたら最悪じゃない」
「確かに」
おトイレで用足し中に穴が崩れて生き埋めとか、想像しただけでもめちゃくちゃ悲惨!
そんなことが起こる危険性なんて、考えもしなかったよ。
おおう、想像したらブルッと来た!
「それにしてもあの子達――」
「あの子達??」
綿を詰め込む手を止めて、ラヴィーナさんと一緒になって窓から身を乗り出すと、彼女が指さす先には
数人の子供が身を寄せ合っている姿が見える。
「……あれ? 昨日の子、かな?」
「昨日の子?」
「水売りさんに突き飛ばされて、ちょっと怪我をしてたから手当てしたんですけど……」
一人だけ小綺麗になっている男の子がいるから、きっとそうだと思う。
「ふーん……」
「でも、この時間になっても出発してないなんて、変ですよね……?」
目を凝らしてよく見てみると、一人だけ、地面に横たわったままの子囲むようにしているみたいだ。
もしかして、病気?
熱さましとか、咳止めなんかはいつも持ち歩いていたはず……
ポーチの中を漁ってみると、他にも腹下しの薬なんかも入っていた。
分けてあげたようと腰を上げると、ラヴィーナさんはいぶかし気な表情を浮かべる。
「どこにいくの?」
「具合の悪い子がいるみたいなので、お薬を持って行こうかと……」
リエラの言葉に、彼女はそのままの表情で首をコテンと傾けた。
「あの子達に支払い能力はないわよ?」
「いやいや、お金なんて採りませんよ!」
困っている人からお金を取ろうなんて思ってもいなかったから、驚きのあまり声がひっくり返ったよ!
そんな、傷に塩を塗り込むような真似、できませんって!
「リエラちゃんは、自分の作ったお薬を無料配布するのが趣味なの?」
「えええ?」
お薬を作るのは趣味と言って差し支えない。
差支えないんだけど、それを無料配布する趣味はないよ。
だって、ちゃんとお金をもらわないと孤児院に仕送りもできないし。
何を言いだすんだと思いつつ、じっとリエラを見つめているラヴィーナさんと目を合わせる。
彼女は一泊置いて、口を開く。
「だって、怪我をしたり具合が悪かったりする人がいたら、タダで治療してあげちゃうんでしょう?」
「そりゃあ、目の前に困っている人がいたら、手を差し伸べますけど……」
それって、人として当然だよね?
それなのに『してあげちゃう』って言い方をされてしまうと、悪いことのように聞こえちゃう。
なんでそんな言い方をするのかと内心、疑問に思っているうちにラヴィーナさんは言葉を続ける。
「でも、そんなことばっかりしていたら、みーんなみんな、リエラちゃんのところに治してもらいにくるようになるんじゃないかしら。普通ならお金がかかる治療をタダでやってくれるんだもの」
「え。それはちょっと……」
「その人達も困っているのに? 具合が悪くて、苦しいから助けを求めてきていても?」
困っている人を助けるのは、人として当然だ。
そう思うけど、誰も彼もがそれを目当てにやってくるなんて、それはリエラの方が困ってしまう。
かといって、ここで手を差し伸べておけば助かるかもしれない命を見捨てるなんていうのも、なんだかいやだ。
「困った人に手を差し伸べるべきだという考えは美徳ではあるけれど、なにをどこまでっていう線引きはきちんとした方がいいわ。そうでないと、気が付いたら身動きがとれなくなってた……なんてことになりかねないんだから」
『線引き』というのはどうやればいいものか、さっぱり見当がつかない。
けれど、ラヴィーナさんがリエラに向けてくる真剣な眼差しに、きちんと自分で決めないといけないことなんろうと思う。
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