リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 駐屯所

対価

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 結局、急場は凌いだものの放っておける状態じゃなさそうなセージ君を含めて、全部で九人の少年少女を連れて駐屯所に戻ることにした。
九人……多いな。
後先考えずに飛び出してきちゃった上に、この人数を連れ込むって流石に不味いよね。
せめて汚れだけでも落としておこうと、全員に『洗浄』は掛けたんだけど……
もし駐屯所に入れるのは駄目だと言われたら、ちょっと離れた場所に仮宿にできそうな横穴を掘ることにしよう。
だって、まだ具合の悪い子を吹きっさらしの中に置いとく訳にはいかないし。

 そんなことを考えていたけど、それは全くの杞憂だった。

「随分と連れてきたわねぇ……」

 ラヴィーナさんはそう言って苦笑を浮かべたけれど、全員を駐屯所に迎え入れてくれた。
彼女はリエラが飛び出して行った時点で、こうなることを予想していたらしい。

「ロクに食べてないんでしょう? 食事を用意しておいたから食べちゃってちょうだい」

 そう言って彼女が振舞ったのは、薄い麦がゆ。
放浪民の少年少女達は、信じられないと言った目でソレを凝視したあと、びっくりするほどの勢いで口に流し込む。
出来立ての麦がゆだから、もちろん熱い。
小さく悲鳴を上げつつ、それでも食べる勢いはそのままだ。
リエラはそんな彼らの横に、冷たい水を並べていった。





 夕暮れが近づいてくるころになると、新しい水売りさんがやってきた。
岩壁に並んでいるトイレの入り口を見て驚いた後、駐屯所を発見して眉をひそめ、更にはその上の窓から見下ろしているリエラ達を見る。
いぶかし気な顔をしながらも、どうやら駐屯所は自分達にとって害のあるものではないと思ったらしい。
水場から人を追い払い、商売を始める。
まるで、狙っていたのかと言いたくなるタイミングでアスラーダさん達が戻ってきた。
なんで馬に乗っているんだろうと、馬の出所に首を傾げている間に水売りさん達ともめ始めてあっという間に制圧。
ほとんど昨日の再現だ。
二人が水売りさん達を縛り上げ始めたところで、ラヴィーナさんが足取り軽く階段を駆け下りていく。

「ほら、あなた達も手伝ってちょうだい」
「「「うん」」」
「なにすればいいの?」
「怖い人達の相手はあのお兄さん達がしてくれるから、お馬さんのお世話かしらねぇ」
「出来るかな?」
「馬って蹴らない?」
「ちゃんと、蹴られない方法も教えるわよ」

 ラヴィーナさんが連れて行ったのは、放浪民の少年達。
あの後話し合いをした結果、食事と寝床の世話をする代わりに仕事をしてもらうことになったのだ。
これに関しては、約一名を除いて性根の曲がった子がいなかったというのも大きい。
昼間には、変なところで用足しをしようとする人をおトイレに誘導するお仕事で、夜は雑用。
今日の雑用は馬のお世話らしい。

「さてと、私達はご飯作りに取り掛かろうか」
「「はーい」」
「がんばる」

 元々放浪民だったのは、リーダーのアイナさんややたらと喧嘩腰なレン少年の他に三人の少年達。
具合の悪かったセージ君と、その兄妹の四人は住んでいた村が野盗に襲われて壊滅してしまったらしい。
ちなみに、戻る村が亡くなってしまった場合にも住民登録が失われてしまうから、放浪民になっていまうそうだ。
セージ君達は、知り合いを頼ってグラムナードに行く途中で放浪民の子達と出会ったらしい。
……で、セージ君達に便乗する形で彼等もくっついてきたんだって。
きっとアイナさんあたりが、突然住む場所を失ってしまった彼らのことを見ていられなかったんだろうなぁ……

 なにはともあれ、鼠人族の四人は村で一通り学んでいたのか、文字は読めるし簡単な計算もこなせる。
だけど、他の子達は読み書きすらもできないらしい。
基礎学校に通ってないんだから、当然と言えば当然か……
でも、これじゃあお仕事をする気があってもどうしようもないよねぇ。
今時は、読み書きができて当たり前になってきているんだもの。

 ちなみに、雑用係には、男の子が四人と女の子が一人。
お料理係には、男の子と女の子が一人づつという割り振りだ。
セージ君はまだ体調が万全とは言えないから、看病役として妹ちゃんをつけてある。
雑用係の指導を買って出たラヴィーナさんに、リエラは戸惑いを隠せなかったんだけど……
王族ってなんだっけと疑問に思ってしまうのは、割と普通なんじゃないかと思う。
まあ、お料理指導を買って出てくれても疑問は感じちゃうんだけど。

「嬢ちゃん、ただいま。こっちも随分とにぎやかだなぁ」

 食事の下拵えにかかって、しばらく経った頃になってダンさんが共有スペースに戻ってくる。
なんだか妙に久しぶりに彼の顔を見た気がしたんだけど、そういえば昨日の晩に顔を合わせたっきりだったっけ。
ダンさんがアスラーダさんと一緒に出掛けた時、リエラは寝コケてたんだもんなぁ……
アスラーダさんの顔を思い浮かべたらちょっぴり胸の奥がズキッとしたけど、それには気付かないふりをして、リエラはダンさんに「おかえりなさい」と笑顔を返した。
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