リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 駐屯所

謎の『お兄さん』

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 夕飯時になり全員が集まると、びっくりするほどのにぎやかさだ。
とはいえ、生粋の放浪民の子達はリエラ達と同じテーブルを囲むのに難色を示したから、共有スペースの隅っこで食事をむさぼるようにして食べている。
元々はそれなりの生活をしていたらしい鼠人族の子達は、体調が回復してきたセージ君を含めて全員がリエラと一緒のテーブルについているんだけど……
どういう訳だか、アスラーダさんが鼠耳族の子達に大人気だ。
その訳は、彼等がグラムナードに向かっている理由の『お兄さん』に似ているせいらしく……

「やっぱり、似てるよね?」
「似てるよ似てる」
「くんくん。ちょっと違うけど、匂いも似てると思うの」
「みんな、お兄さんが困ってるから……」

 少し元気になったセージ君が兄妹達を止めようとしているんだけど、どうやら耳に届いていないらしい。
アスラーダさんは困惑気味だけど、迷惑そうではないから……まあ、放置でいいか。
それにしても、アスラーダさんに似ている人かぁ……
グラムナードの民の特徴と言えば、黒髪に白い肌。
だけど、顔立ちなんかは様々だ。
でも、意外とアスラーダさん達に似ている人っていないんだよね。
むしろ、思い当るのはアスタールさんくらい。
アスタールさんの方が釣り目気味だけど、双子と言うだけあって、それ以外の部分は似ているんだよね。
そうは言っても、中町の外に出る機会も多くない。
他のグラムナードの民もそうなんだけど、鼠人族の子達の知り合いがアスタールさんだっていう可能性は低いよね。
……というか、多分、ないはずだ。
だって、アスタールさんがグラムナードの外に出たのって、リエラを弟子に採った二年近く前のみ。
エルドラン領の北にあったという、セージ君達の村の方から旅してきてたなんてことはないはずだもの。
グラムナードからエルドランの領都に入るなら、東からのはずだ。
アスタールさんではありえない。
でも、そうなるとアスラーダさんに似てるって言うその『お兄さん』って……?

「そのお兄さんって、どんなところがラディに似ていたのかしら」

 コテンと首を傾げてラヴィーナさんが訊ねたのは、食後のお茶を飲み始めたタイミング。
リエラも気になっていることだったから、ぼんやりとカップの中身に向けていた視線を鼠耳族の子達の方へと向ける。

「うんとね、黒い髪!」
「グラムナードの民に多い髪色ね」

 一番年下の妹ちゃんがそう言うと、ラヴィーナさんは自分の髪を指に巻き付ける。
うん……ラヴィーナさんも、黒い髪ですね。
そんでもって輝影族はみんな黒髪だ。
髪の色では判断ができない。

「それから、とがった長い耳と金色の目……?」
「長耳族って呼ばれてるくらいだから、ラヴィも兄ちゃんも耳はとがってるな」
「それに同じような色の瞳の人は、そこそこいるわね」

 年長のお兄ちゃんがアスラーダさんの顔をまじまじと見つめながら口にした言葉に頷く。
実際に中町を歩いていると、アスタールさんと同系色の瞳はチラホラ見かける。
ただ、同じ金色かというとそうでもないんだよね。
アスタールさんの瞳の色って、混じりけがないと言えばいいのかな?
透き通るようでいて、重厚感があるという不思議な色合いなんだよ。
アスラーダさんの場合は、金というよりは琥珀色の方が近いかもしれない。
更に他にはないのかと言わんばかりに、視線を残りの二人を向ける。

「あの、あのね! 匂いが似てる!」
「うーん……匂いだと、あたしには判別が難しいわねぇ」
「本人がいなきゃ、オレでもわからんなぁ……」

 彼等みたいな獣人族は、総じて嗅覚が鋭い。
それに対して、リエラみたいな丸耳族は匂いに鈍感だ。
長耳族――グラムナードの民も匂いに関しては同程度なんだよね。
獣人族の感覚で匂いが似ていると言われても、イマイチピンとこない。

「えっと……顔立ち、も、似てると思います」
「アスラーダさん本人ではないんですよね……?」

 一番ありそうなのはそっちなんだけど、リエラの発言はアスラーダさん本人を含めた鼠人族の子達が首を横に振って否定する。
ってなると、やっぱり思い当るのはアスタールさん。
……なんだけど、グラムナードから彼らの住んでいたという村に行くためには、エルドランから北に向かう必要があるんだよね。

「そう言えばエルドランの領都って、中町のすぐ下なのよね。もしかして――」
「いや、例えそうでもあいつは運動神経はイマイチだから伯母上の真似は無理だ」

 ふと思いついたように呟いたラヴィーナさんの言葉は、アスラーダさんに食い気味に否定……と。
空からが無理なら、地面からって手があるけど……まさかねぇ?
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