リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 駐屯所

領主さまがやってきた

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 夕食を食べ終わると、放浪民の子達は馬小屋に向かう。
今夜はそこで眠るらしい。
個室は多めに作ってあるからそこに寝ればいいのにと思わないでもなかったけれど、今までまともなベッドで寝たことがないから落ち着かないと言って断られた。
鼠人族の子は、まだ快調とは程遠い状態のセージ君と一緒に眠るらしい。

「鼠人族って、狭い場所に固まって寝るものね」

 と、ラヴィーナさんが言う言葉にダンさんが頷くところをみると、そういう習慣があるってことだろう。
ちなみに、鼠人族とか鼠耳族は種族内のつながりが強いから、親が亡くなったりした場合には同じ種族の家族に即座に引き取られるから、リエラの身近に鼠人族って存在しなかった。
だから知らなかったけど、猫耳族とか猫人族が日当たりのいいところで固まっているのと似たようなものなのかもしれない。
リエラの育った孤児院には、猫耳族とかが多かったから寒くなってくるとよく見た光景だから、ちょっぴり親近感を感じる。
狭いベッドの中に何人もの猫耳族が詰まって寝るのは、しょっちゅうだったっけ。
寝心地は悪そうだけど、暖かそうだなと思ったことはよく覚えてる。

 彼らがそれぞれの寝所へ入ると、ここからは大人の時間だ。
リエラも部屋に向かうために腰を浮かせたところで、外から馬車が走る音が聞こえてくるのに気付く。
ただでさえ暗くなるのが早い山道はすでに真っ暗なのに、こんな時間に馬車を走らせるなんて危なすぎる。
ついついいつもの習慣でアスラーダさんに視線を向けると、彼はいぶかし気な表情を浮かべて窓のある個室の方を向いていた。

「こんな時間に馬車なんて自殺行為だろ……」

 呆れたような声でダンさんが呟く。

「まさか、こんな時間に新しい水売りが来たって訳でもないだろうが……」
「いやいや、あいつらは被らないようにローテーション組んでるって言ってたからそれは無いだろ」

 そう言い合いながら、二人はサッと立ち上がると手近な個室に足を運ぶ。
窓から様子を見るつもりらしい。
リエラもラヴィーナさんと顔を見合わせると、慌てて後に続いた。

 リエラは、アスラーダさん達が身を乗り出すようにしている部屋の窓は早々に諦める。
アスラーダさんだけならまだしも、体格のいいダンさんまで一緒だから良く見えそうにもないんだもの。
仕方がない。
自分が昨日使っていた部屋の窓から外を伺うと、トイレを照らす魔法の照明を中心にぽつりぽつりと火がたかれているのが見えた。
火の周りで影がうごめいているのは、野営の準備をしている人達だろう。
少し落ち着かない様子で囁き交わしながら、音が響いてくる方向を伺うようすが良く見える。
音が響いてくるのはウガリの町の方向からだ。
窓から身を乗り出すようにしてそちらへと顔を向けると、チラチラとした光が近づいてくるのが見え始めた。

「あちゃぁ……思ったよりも早かったわねぇ」

 一緒の窓から外を見たラヴィーナさんは、嫌そうな声でそう呟く。
その様子はまるで、いたずらを見つかったわんぱく坊主みたいな雰囲気だ。

「早かったって……。ラヴィーナさんは、あの馬車に乗ってる人に心当たりでもあるんですか?」
「心当たりと言うか……」

 リエラの問いに、彼女はきまり悪そうにそっぽを向く。

「十中八九、お兄様ね」

 お兄様? と呟いて首を傾げるリエラに、ラヴィーナさんは拗ねた表情を浮かべて、アスタールさん達の父親のことだと教えてくれた。
 
 しばらくしてやってきた馬車に乗っていたのは、ラヴィーナさんの想像通り。
アスラーダさん達の両親である、領主様とその奥方様。
それから、お二方の護衛さんや御者さんを含めた四人の大所帯だ。
馬車も随分と大きな代物で、駐屯所に併設した馬車置き場の改造をすることになった。
元々、水売りさんが乗ってきた荷馬車を基準に作ったものだ。
から、長距離を走る大型の馬車を入れる用にはできていない。
王都からの荷物を屋根にくくり付けてあったから、高さが全然足りないんだよね。
そもそも、水売りさんの荷馬車がすでに荷台も入っていたのも原因の一つなんだけど……
寝る準備をしていた放浪民の子達には申し訳なかったけど、領主様ご一行が乗ってきた馬の面倒をお願いした。
まあ面倒を見ると言っても、飼い葉と水を用意してもらうだけではあるんだけど、それだって結構な重労働。
だからもちろん、その分はお駄賃ははずんだよ。
労働には、きちんと対価がなくっちゃね!
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