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回り道
アスタールの求人旅行 3
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「荷馬車と言うのは、聞いていた以上に乗り心地の悪いものなのだな」
「そりゃあ、荷台に人が乗るようにはできてないからなぁ」
「あんちゃんは、良いとこの坊ちゃんだろう? そんなら、荷馬車なんかに乗る機会はないだろうからねぇ」
私の呟きに答えるのは、廃坑から領都エルドランに向かう道を歩いていた私を拾い上げてくれた陽気で親切な鼠人族の夫婦だ。
年越しの日のみを祝うグラムナードとは違い、エルドランでは新年祭と言うのも執り行うらしい。
彼らは一家そろって、新年祭の日を領都で楽しむために村から出てきたところなのだそうだ。
仲の良い家族のようで、少し羨ましい。
今でこそ、兄や妹と同じ屋根の下で暮らしているものの、六年前まではほぼ一人で生活をしていた。
あの頃は、どうしようもなく寂しい日もあったものだ。
まあ、彼女と言葉のやり取りをしている間はそんなものを感じる暇などなかったのだが……
彼女というのは、賢者の石の作り方を祖父から教わった頃に知り合った女性だ。
結構長い付き合いで、私にとって、心の拠り所といっても良い存在になる。
彼女と知り合ったきっかけはただの『暇つぶし』だったのだが――
五歳で兄と引き離された後、私は外界との接触を断って育てられたから周囲には話し相手もおらず、暇を持て余していた。
暇を持て余し切って思いついたのが、賢者の石がどれだけ大きく育てることができるのかという実験だ。
毎日せっせと育て続けた賢者の石が自らの身長を超えた頃、突然賢者の石は、別の世界の情報網とつながった。
まさか自らの暮らす世界の外と接触が持てるだなどとは夢にも思っていなかったが、その情報網越しに知り合った同い年の少女に恋するようになるだなどとは……
うむ。
今思い返しても、想定外もいいところだ。
彼女――りりんとのやり取りには、賢者の石が必要となる。
すなわち、育ちすぎて持ち運ぶことができなくなっている今、グラムナードに戻らなくては言葉を交わすことができない。
外に出るのにいい口実だと飛びついたのは自分だが、一晩どころか二晩以上も彼女と連絡を取らないことは初めてだと不意に思い出して、ちょっとだけ、弟子取り旅行に出発したことを後悔した。
もう出てきてしまったことだし、仕方がない。
できるだけ早く目的を遂げて、さっさと帰ることにしよう。
お土産話に、獣人族と交流したことを取り上げれば、きっと彼女は喜ぶに違いない。
彼女は、フワフワモコモコした生き物が大好きなのだ。
昔、送ってくれたペットの画像からすると、今目の前にいる鼠人族は好みにドンピシャなのではないかと思う。
鼠人族と言うのは人族の一種だが、身長一メートル程の二足歩行のネズミと表現した方しっくりくる。
多産なことと、居住環境によって特徴が様々だ。
私を荷馬車に同乗させてくれた彼等は、寒い地域に住んでいるためか思わず触りたくなってしまうほどフワフワふかふかした柔らかな毛皮に身が覆われている。
きっと、彼女が見たら喜ぶに違いない。
彼女は、フワフワモコモコした生き物が大層好きなようなのだ。
ちなみに彼等の尻尾も特徴的で、オオカミのようにふさふさしている。
荷台に先に乗っていた子供達を見る限り、多産だというのは本当らしい。
グラムナードでは少子化が進んでいるから、少しその繁殖力を分けてもらいたいものだと思う。
彼らは陽気な種族でもあるのか、十人の子供達は荷台の上で踊りながら歌を歌っている。
揺れの酷い荷馬車の上で大きな口を開けて歌っていて、よく舌を噛まない物だと思うが、彼等の少し調子っぱずれな歌声は聞いているだけで楽しい。
一人でヤギ車に揺られるのも気楽で良いが、大勢の人と共に往くというのも、これはこれで中々良いものだ。
私もなんだか楽しくなってきて、彼等の歌に合わせて小さく指先でリズムを取り始めた。
「そりゃあ、荷台に人が乗るようにはできてないからなぁ」
「あんちゃんは、良いとこの坊ちゃんだろう? そんなら、荷馬車なんかに乗る機会はないだろうからねぇ」
私の呟きに答えるのは、廃坑から領都エルドランに向かう道を歩いていた私を拾い上げてくれた陽気で親切な鼠人族の夫婦だ。
年越しの日のみを祝うグラムナードとは違い、エルドランでは新年祭と言うのも執り行うらしい。
彼らは一家そろって、新年祭の日を領都で楽しむために村から出てきたところなのだそうだ。
仲の良い家族のようで、少し羨ましい。
今でこそ、兄や妹と同じ屋根の下で暮らしているものの、六年前まではほぼ一人で生活をしていた。
あの頃は、どうしようもなく寂しい日もあったものだ。
まあ、彼女と言葉のやり取りをしている間はそんなものを感じる暇などなかったのだが……
彼女というのは、賢者の石の作り方を祖父から教わった頃に知り合った女性だ。
結構長い付き合いで、私にとって、心の拠り所といっても良い存在になる。
彼女と知り合ったきっかけはただの『暇つぶし』だったのだが――
五歳で兄と引き離された後、私は外界との接触を断って育てられたから周囲には話し相手もおらず、暇を持て余していた。
暇を持て余し切って思いついたのが、賢者の石がどれだけ大きく育てることができるのかという実験だ。
毎日せっせと育て続けた賢者の石が自らの身長を超えた頃、突然賢者の石は、別の世界の情報網とつながった。
まさか自らの暮らす世界の外と接触が持てるだなどとは夢にも思っていなかったが、その情報網越しに知り合った同い年の少女に恋するようになるだなどとは……
うむ。
今思い返しても、想定外もいいところだ。
彼女――りりんとのやり取りには、賢者の石が必要となる。
すなわち、育ちすぎて持ち運ぶことができなくなっている今、グラムナードに戻らなくては言葉を交わすことができない。
外に出るのにいい口実だと飛びついたのは自分だが、一晩どころか二晩以上も彼女と連絡を取らないことは初めてだと不意に思い出して、ちょっとだけ、弟子取り旅行に出発したことを後悔した。
もう出てきてしまったことだし、仕方がない。
できるだけ早く目的を遂げて、さっさと帰ることにしよう。
お土産話に、獣人族と交流したことを取り上げれば、きっと彼女は喜ぶに違いない。
彼女は、フワフワモコモコした生き物が大好きなのだ。
昔、送ってくれたペットの画像からすると、今目の前にいる鼠人族は好みにドンピシャなのではないかと思う。
鼠人族と言うのは人族の一種だが、身長一メートル程の二足歩行のネズミと表現した方しっくりくる。
多産なことと、居住環境によって特徴が様々だ。
私を荷馬車に同乗させてくれた彼等は、寒い地域に住んでいるためか思わず触りたくなってしまうほどフワフワふかふかした柔らかな毛皮に身が覆われている。
きっと、彼女が見たら喜ぶに違いない。
彼女は、フワフワモコモコした生き物が大層好きなようなのだ。
ちなみに彼等の尻尾も特徴的で、オオカミのようにふさふさしている。
荷台に先に乗っていた子供達を見る限り、多産だというのは本当らしい。
グラムナードでは少子化が進んでいるから、少しその繁殖力を分けてもらいたいものだと思う。
彼らは陽気な種族でもあるのか、十人の子供達は荷台の上で踊りながら歌を歌っている。
揺れの酷い荷馬車の上で大きな口を開けて歌っていて、よく舌を噛まない物だと思うが、彼等の少し調子っぱずれな歌声は聞いているだけで楽しい。
一人でヤギ車に揺られるのも気楽で良いが、大勢の人と共に往くというのも、これはこれで中々良いものだ。
私もなんだか楽しくなってきて、彼等の歌に合わせて小さく指先でリズムを取り始めた。
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