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回り道
アスタールの求人旅行 4
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「お兄ちゃんの周りだけ、なんかあったかい?」
「え? ほんと??」
「わ、ほんとだ!」
そんな子供たちが、少し遠巻きにしていた私の周りにべったりと張り付く切っ掛けは、ふざけているうちに私にぶつかったことだった。
「ぬくぬくだ~!」
「ねぇ、なんで? なんでお兄ちゃんの周りだけあったかいの??」
しがみついてきた、ひと際小さな鼠人族の子供の問いに私は驚いて目を瞬く。
なにせ、魔法を使って自分にとって快適な状態に保つのは、グラムナードでは特別な行為でも何でもない。
その魔法を使っているのだって、私の暮らしているグラムナードと、山を一つ越えてきたエルドランの気候に差がありすぎたのが原因なのだ。
グラムナードでは冬でも日差しが厳しく、衣類は風通しの良い生地で作られたものが喜ばれる。
それに対してエルドランでは、山から吹き下ろしてくる風がやたらと冷たいのだ。
グラムナードで主流の風通しの良い生地では、寒くて仕方がない。
ちょっと考えてみればわかることだったはずなのだが、急に兄がいなくなったことで実現した遠出だ。
備えが足りないのは仕方がないだろう。
とはいえ、何もせずに凍える趣味もない。
私は自分の周りにだけ暖かい空気を作って凌ぐことにしたのだが……よく考えてみると、私の暮らすグラムナードの『中町』以外の土地では魔法が一般的ではなかったのだったか。
「なんでなんで」と繰り返されることに首を傾げた私は、ようやくそのことに思い至る。
ちなみに、魔法が一般的でないのは、私の祖父が原因だ。
彼の妻子が魔法によって害された時、この世界中から魔法に関連する情報の全てが認識できなくなっている。
それも、真実は認識できないのにもかかわらず、間違った情報は理解ができるというひどい隠ぺいの仕方で、だ。
ただし、祖父から輝影の支配者としての権能を受け継いだ私の口から出た言葉に関しては、その枠からは外れている。
キトゥンガーデンとはまた別の世界として作られた『迷宮』や、最初から認識阻害の枠から外されたグラムナードの『中町』に関しては例外となっているのだが……
そのことが原因かどうかは謎だが、おとぎ話や与太話レベルでの魔法に関する話だけは溢れている。
兄から内容を聞いた時には、あまりにも荒唐無稽で驚いたものだ。
「――これは、『魔法』を使って周りの空気を暖めているだけなのだが……」
「『魔法』!」
子供達が口を揃えて驚きの声を上げる。
私がどのように説明するのが、後々困らずに住むかと悩みつつ口を開こうとするのと同時に、馬車が大きく揺れた。
「うわ、やっちまった!」
「ああ~……あんた、どうするんだい?」
鼠人族の夫婦は大慌てだ。
御者台から降りて、荷馬車の下を覗き込む。
彼らの会話から、どうやら道にあったくぼみに車輪がはまってしまったらしい。
「とりあえず、子供達を降ろしてみんなで後ろから押してやるしかないだろう」
ため息交じりに子供達に降りるようにと彼らが促す前に、私は馬車から身を乗り出した。
車輪はガッチリとはまりこんでいるから、荷台から降りた全員が力を合わせても引っ張り出すのは難しそうだ。
むしろこういう時こそ魔法を使うべきだろう。
「これなら、すぐに何とかなるからそのまま待ちたまえ」
私はそう言ってから、くぼんだ部分が道の他の場所と同じ高さになるように魔法で盛り上げると、鼠人族達の口からは歓声が上がった。
「うわあ~!」
「すごい、まほーみたい!」
一部始終を見ていた子供達が驚きと称賛の言葉を口々に喋りだして、荷台の上が一気に騒々しくなる。
「おにーさん、ぼくにもそれ、教えて!」
「え、ずるい! あたしもおそわりたい!」
「おれもおれも!」
次々と押し付けられる柔らかな毛皮達を落ち着かせようと撫でながら、ふと、彼女の言葉を思い出す。
『ふわふわ・もこもこは正義!』
……ちょっとだけ、納得してしまったかもしれない。
「え? ほんと??」
「わ、ほんとだ!」
そんな子供たちが、少し遠巻きにしていた私の周りにべったりと張り付く切っ掛けは、ふざけているうちに私にぶつかったことだった。
「ぬくぬくだ~!」
「ねぇ、なんで? なんでお兄ちゃんの周りだけあったかいの??」
しがみついてきた、ひと際小さな鼠人族の子供の問いに私は驚いて目を瞬く。
なにせ、魔法を使って自分にとって快適な状態に保つのは、グラムナードでは特別な行為でも何でもない。
その魔法を使っているのだって、私の暮らしているグラムナードと、山を一つ越えてきたエルドランの気候に差がありすぎたのが原因なのだ。
グラムナードでは冬でも日差しが厳しく、衣類は風通しの良い生地で作られたものが喜ばれる。
それに対してエルドランでは、山から吹き下ろしてくる風がやたらと冷たいのだ。
グラムナードで主流の風通しの良い生地では、寒くて仕方がない。
ちょっと考えてみればわかることだったはずなのだが、急に兄がいなくなったことで実現した遠出だ。
備えが足りないのは仕方がないだろう。
とはいえ、何もせずに凍える趣味もない。
私は自分の周りにだけ暖かい空気を作って凌ぐことにしたのだが……よく考えてみると、私の暮らすグラムナードの『中町』以外の土地では魔法が一般的ではなかったのだったか。
「なんでなんで」と繰り返されることに首を傾げた私は、ようやくそのことに思い至る。
ちなみに、魔法が一般的でないのは、私の祖父が原因だ。
彼の妻子が魔法によって害された時、この世界中から魔法に関連する情報の全てが認識できなくなっている。
それも、真実は認識できないのにもかかわらず、間違った情報は理解ができるというひどい隠ぺいの仕方で、だ。
ただし、祖父から輝影の支配者としての権能を受け継いだ私の口から出た言葉に関しては、その枠からは外れている。
キトゥンガーデンとはまた別の世界として作られた『迷宮』や、最初から認識阻害の枠から外されたグラムナードの『中町』に関しては例外となっているのだが……
そのことが原因かどうかは謎だが、おとぎ話や与太話レベルでの魔法に関する話だけは溢れている。
兄から内容を聞いた時には、あまりにも荒唐無稽で驚いたものだ。
「――これは、『魔法』を使って周りの空気を暖めているだけなのだが……」
「『魔法』!」
子供達が口を揃えて驚きの声を上げる。
私がどのように説明するのが、後々困らずに住むかと悩みつつ口を開こうとするのと同時に、馬車が大きく揺れた。
「うわ、やっちまった!」
「ああ~……あんた、どうするんだい?」
鼠人族の夫婦は大慌てだ。
御者台から降りて、荷馬車の下を覗き込む。
彼らの会話から、どうやら道にあったくぼみに車輪がはまってしまったらしい。
「とりあえず、子供達を降ろしてみんなで後ろから押してやるしかないだろう」
ため息交じりに子供達に降りるようにと彼らが促す前に、私は馬車から身を乗り出した。
車輪はガッチリとはまりこんでいるから、荷台から降りた全員が力を合わせても引っ張り出すのは難しそうだ。
むしろこういう時こそ魔法を使うべきだろう。
「これなら、すぐに何とかなるからそのまま待ちたまえ」
私はそう言ってから、くぼんだ部分が道の他の場所と同じ高さになるように魔法で盛り上げると、鼠人族達の口からは歓声が上がった。
「うわあ~!」
「すごい、まほーみたい!」
一部始終を見ていた子供達が驚きと称賛の言葉を口々に喋りだして、荷台の上が一気に騒々しくなる。
「おにーさん、ぼくにもそれ、教えて!」
「え、ずるい! あたしもおそわりたい!」
「おれもおれも!」
次々と押し付けられる柔らかな毛皮達を落ち着かせようと撫でながら、ふと、彼女の言葉を思い出す。
『ふわふわ・もこもこは正義!』
……ちょっとだけ、納得してしまったかもしれない。
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