リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

文字の大きさ
30 / 263
回り道

アスタールの求人旅行 13

しおりを挟む
 巡回馬車の護衛をしていた三人組に連れられて、魔法薬を売っている錬金術師の工房へ向かう。
一人増えているのは、御者台にいたお陰で会話に入ることが出来なかった青年も同行しているせいだ。
ご婦人にやりこめられていた、体格がよく少し童顔気味なのがアラン。
アランと一緒に巡回馬車の後ろで護衛をしていた、小柄なのがボドワン。
その二人に加えて、御者台にいた優男のクレマンの三人でいつも仕事を請け負っているらしい。
仲の良い幼馴染というやつだと紹介されて、少し羨ましい気持ちになったのは内緒だ。

「魔法薬の材料も、頼めば分けてはくれるだろ?」

 と彼らは言うのだが、自分が使わない素材を仕入れているとは思えない。
まあ、なかったら仕方ないと諦めてもらうしかないだろう。
流石に旅先で調薬を行う必要が出てくるとは思わなかったから、素材が何一つとして手元にないのだ。

「ところで、素材だけで本当に大丈夫か?」
「うむ。問題ない」
「えっと、こー……錬金釜? みたいな道具は? 大した荷物を持ってるようにも見えないんだけど……」
「錬金釜?」

 クレマンは、不安そうな様子で私の荷物に視線を向ける。
私の荷物は、腰につけた小袋とさほど大きくない背嚢の二つだけだから、確かに大した荷物でもない。
何故窯が必要だと思っているのかは謎だが、調薬をするために特別な道具が必要だと思っているのなら不安に思うのも当然だろう。

「調薬をするために、必要な道具は特にないから問題はないのだ」
「え? じゃあ、どうやって作るの?」

 クレマンの言葉は、他の二人の心の声も代弁するものだったらしい。
一緒になって水飲み鳥のように頷いている彼らのために、実演してみせることにする。
実演と言っても、魔法薬の材料があるわけではない。
代用品として、道端の花壇の葉っぱを少々拝借。
三人組の目の前に雑草を風で巻き上げ、それを細切れにしてから熱湯で覆う。
ぎょっとした表情で思わず身を引く彼らの前で、あっという間に出来上がった雑草汁と出涸らしを分離して見せて、実演は終了だ。

 魔法薬を作る場合は、素材に魔力を浸透させるという過程が必要になるため、だから本来ならばもう少し時間がかかる。
だが、今回は道具が必要ないことを納得させるためだけだ。
そこに関しては省略させてもらった。

「今の、なに!?」
「雑草が、シュビビビッてなったぞ!」
「いやいや、それよりも何もないとこから水が出てきたの、おかしくないか!?」

 少しの沈黙の後、三人組は目を輝かせて今見たものに対する感想を口にしながら私を取り囲む。
その勢いに、思わず仰け反ってしまったのは仕方がないだろう。
私の周りにこのような反応をする人間は一人としていないのだから。

「もっかい! もう一回やって見せてくれよ」

 アランの言葉に、残りの二人もコクコクと頷いて期待の視線を向けてくる。

「素材が手に入ったら、その時にも同じことをするのだが……」
「そう言わずに、な!」
「もう一回!」
「もーいっかい!!」

 幼い声まで加わっていることに驚いて周りを見回すと、いつの間にか、見知らぬ人々が三人組の周りに集まってきていた。
どうやら、私のデモンストレーションに目を留めた通行人らしい。
結局、周囲の『もう一回』コールに負けた私は、その後、十回ほど同じことをやってみせる羽目になった。
本日の興行収入、四万7千ミル。
おかしい。
いつの間に私は大道芸人になったのだろう……?
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。