リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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回り道

アスタールの求人旅行 14

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 三人組と共に錬金術師の工房へ辿り着いたのは、日が暮れかけた時間になってからのことだった。
まだ春になったばかりで日が落ちるのが早いとはいえ、この街についたのは昼過ぎだったというのに時間がかかりすぎだ。
ただ、いざとなったら、大道芸人で食べていけそうだという自信はついた。
万が一の場合の、最終手段として覚えておこう。

「ちーっす!」

 挨拶とは思えない声を上げつつ、アランが工房の扉を開ける。
扉の上でカラカラと音がなり、すこし埃っぽい工房の奥で大きな窯の中身をかき混ぜていた年かさの男性が顔を上げた。
どうやら、彼がこの工房の主らしい。

「こんな時間に団体さんかい?」
「ちょっとさ、魔法薬の材料を分けてくれよ」
「はぁ!? あんたら、探索者だろう。魔法薬の材料を手に入れてどうしようっていうんだい!?」

 ぎょっとした様子でひっくり返った声を上げる工房主から視線を外し、中を見回す。
なんというか、全体的にうらぶれた印象で、清潔感がない。
こんな環境で薬を作るなんて、ありえないだろうに……
あまり自分の工房の環境と比べるべきではないのだろうが、これはひどすぎる。
それに――

「帰った帰った! お前らに譲ってやれるもんはなにもないからな!」
「ちっ」
「なんだよ、ケチくせーおっさんだな」

 どうやら交渉は決裂らしい。
私達は工房主に追い立てられて、表に出る。

「わりぃ、アスタール。駄目だったわ」
「いや、問題ない」

 アランの謝罪に肩をすくめて返す。
あのような物言いでは、譲ってくれるものも無理になるだろうと思いはしたが、口には出ずにおく。
もしかしたら、私の感覚のほうが変わっている可能性もあるのだ。
なにせ、私は自分で接客をした経験がないのだから。

「つーても、材料がないと作ってもらえないわけだから、俺ら的には困るよなぁ……」
「別の工房もあたってみるか?」
「そーすんべ」

 その間にボドワンとクレマンの二人は、互いの間でさっさと方針を決めると別の工房に向かって歩き出す。
その後ろを少し遅れて追いかけつつ、アランに問いを投げかける。

「さっきの工房主の評判は知っているかね?」
「評判??」

 腕前について聞きたかったのだが、聞き方が悪かったらしい。
ピンとこない様子で首をかしげる彼に、言葉を続ける。

「腕は良いのかね?」
「あー、腕前か。……普通、ってとこじゃないかな?」

 アレが普通、か。
工房の中に並んでいた魔法薬だと思われる瓶の中身を思い出してため息を吐きたくなる。
アレは不良品とも言えない、ただの赤薬草液ではないか。
アレと比べられるのならば、私の工房で消費期限を大幅に超えて効果の薄くなってしまったものですら、効果が高く感じるのに違いない。
三人組がアレを基準にしているのなら、普段『高速治療薬』に使っている赤薬草ではなく、代用品でも問題ないだろう。

「君たちは、あの工房で作られているものより品質が良ければいいのかね?」
「ん? ああ、それで十分だけど……」
「なら、この町で売られている香草で代用できるかもしれない」
「え、魔法薬用の薬草があるんじゃないのか??」
「もちろん、本来の素材を使うよりは効果は落ちるが、あの工房よりは良いものが出来る」

 そこまで話して、ふと、彼らがなんのために魔法薬を欲しているのかが気になった。
彼らが欲しがっているのが外傷に効く薬であるのは分かっている。
だが、外傷に効く代用品を作ったとして、目的があるのならそれに沿ったものでなければ意味がないかもしれない。

「ところで、作った薬の使い道について聞いてみてもいいかね?」
「ん? ああ、話してなかったっけ?」

 気まずそうに頭を掻きながら教えてくれたところによると、彼らにはもう一人、怪我をして休んでいる仲間がいるのだそうだ。
今回私に頼んできた薬は、その仲間の治療に使うらしい。
お仲間の負傷具合を詳しく確認してみた感じ、彼らが隣町のエルドランに帰り着く頃には治っていそうな気がする。
それでもまあ、余った分は備蓄薬にすると言うので日持ちのする軟膏を作ることにした。

「魔法薬に消費期限なんてもんがあるなんて思わなかったわ……」
「水薬は一ヶ月、軟膏で半年程度だ。それ以降は効果が激減したり、最悪の場合は悪化の可能性もある」
「悪化は困るなぁ。……ん、気を付ける!」

 消費期限など考えたことがなかったとボヤくアランだったが、流石に傷が悪化するのは困るようだ。
何度も「水薬は~」と呟きながら、覚え込む。
その後、なんとか素材を手に入れた彼らのために、魔法薬を作ってやる。
少し多めに作ったのだが、彼らが薬が余分にあるからといって無茶をしそうなのが少し心配だ。
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