リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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回り道

アスタールの求人旅行 18

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 のんびりと酒を傾け、周囲のうわさ話に耳を傾けるうちに夜も更けて、楽しかった時間も終わりに近づく。
行きずりの相手とも会話をすることができたのは予定外だったが……
色々と面白い話を聞けた上に、食べきれないことが明白だからと諦めていた品を頼む口実になってくれたのには助かった。
元々が少々区なものだから、一人だと興味があっても大した種類を食べることが出来ないのだ。
私にとって物珍しい話の礼だと言えば、あちらも喜んで話してくれる。
あちらはツマミ代が浮くし、私は諦めようと思っていた珍味をご相伴に預かれた。
互いに損のない、有意義な時間の過ごし方だったように思う。

 人がまばらになってきた頃合いで、店主に心付けを渡して店を出る。
空を見上げると、ギュウギュウに詰め込まれた建物の屋根の間から、緋色の三日月が見えた。
大昔には”創造神ラセットの瞳”とも呼ばれていた月は、毎日その彩りを変える。
このキトゥンガーデンを作った創造神の瞳は、角度によって七色に変化するものだったらしい。
夜間に空を駆ける月が毎日違う色合いであることから、そう呼ばれていたのだろう。
ちなみに月を創造神に例えたせいか、昼間の太陽は”猫の目”。

「そういえば――」

 りりんの世界の太陽は、直接目にすると失明することもあるのだったな、とふと思い出す。
キトゥンガーデンでは、黄金色に輝く太陽は眩しくはあるものの失明するほどには光は強くない。
月も、大気の影響で赤くなったりすることはあっても、基本的には白いと聞いて驚いたものだ。

 着きを見上げて歩きつつ、そんなふうに物思いにふけっていたのが悪かったのだろうか。
不穏な空気を撒き散らしながら、行く手に立ちふさがる男達の姿に足を止める。

「へへへ」
「兄ちゃん、随分と羽振りがいいみたいじゃねーか」
「ちょっと俺らにも分けてくれよ」
「なぁに、素直に出しゃあ、痛い思いもしなくて済む」

 大柄な者から小柄な者まで取り混ぜて、全部で六人。
種族も様々な彼らのあまりにもアレな発言に、思わず目を瞬く。
これは、アレだ。
そう、りりんが言っていたてんぷれーと!
てんぷれーといべんとを、まさか私が体験することになるとは……!

「おおお……」

 うっかり、口をついて飛び出した声を勘違いしたのか、男達は嘲り笑いを浮かべる。

「なんだ、怖くって言葉にならないってのか?」
「こんな細っこい兄ちゃんだからな、しかたねーだろ」
「はは! ちがいねー!」

 ああ、だが、りりんが言っていたのは冒険者ギルド(こちらだと探索者ギルドか)初登録時や、女性と町歩き中、それから旅の途中に起こるものだったはず。
これは?
当てはまりそうなのは町歩き中ではあるが、私は一人きりだ。
そう思いいたり、舞い上がりかけていた気分が消え失せる。
もしも、りりんがここに一緒にいたのなら。
この四人のならず者を華麗に撃退して『アル、守ってくれてありがとう! 大好き!!』』なーんて、言ってもらえたりするのかもしれない。
もちろん、異なる世界にいる彼女はここにいない訳だが。
――うむ、もう夜も遅い。
叶わぬ夢は横に置くことにして、宿に戻ろう。

「おい、無視してんじゃねぇよ!」
「君はなんの薬にも立たぬのだから、黙りたまえ」

 歩道は塞がれているので馬車道に降りた私の肩を掴む男の目に向かって『閃光』を閃かせてやる。
大げさな悲鳴を上げて転げ回るのをチラッと眺めて、他の者に目を向けた。
りりんといちゃいちゃする役に立たないのだから、私のことは放って置いてほしい。
怒りの声を上げて腰のナイフを抜こうとする者には、足元の男と同じように『閃光』をプレゼント。
目を押さえて転げ回る者が、三人になった。
まだいたような気がして視線を巡らせてみたものの、どうやら一人は逃げたらしい。
遠ざかっていく気配に背を向けて、私は夜の道を宿に向かって歩き出す。
せっかく良い気分だったというのに、BGMがこれでは興ざめだ。
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