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何か不満か?2* 【アルリエタ】

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だからあの日、ラビィが現れなければ。
『食べられたいです』などと俺を煽らなければ、今までどおりに発情期をやり過ごすことができただろう。
ラビィが発情期を迎えるまで、今までどおり欲を堪えることができただろう。

―――ラビィにああして煽られてしまえば、理性なんて脆いものだが。

雄をぐっぷりと奥に嵌め込んだまま、丸い頭を撫でてやる。
尖った耳はないけれど、それも含めて愛おしい。
子供じみた小さな牙も、ちょこんとした飾りのようなちまい尻尾も。片手で掴めそうな細い腰も、言葉より雄弁な大きな瞳も。
『俺の家族になってほしい』とかき口説いて家に連れてきたのに、『俺の唯一』だと、『何もせず、振り子時計のねじだけ巻いて、俺を待っていてくれたらいい』と言ったのに、自分を使用人だと思い込み、全力で尽くしてくれるところも。
虐げられても罵られても、懸命に前を向く姿も。
俺をひと目見たとたん、全身から発する喜びのにおいも。

地下室に囚われていたラビィと出会ったあの時から、その存在に惹かれてやまない。

「ずっと、お前と、こうしたかった」

弾かれたように顔を上げたラビィが、瞳いっぱいに涙を溜める。
睫毛を涙の雫で飾り、ひたむきに俺を見つめてくる。
痩せこけていた頬は今はふっくらとして艷やかで、唇もぷっくりと男を誘う。
小ぶりな鼻も、さらさらと指通りの良い髪の毛も、極上と言って差し支えない。

ラビィが『耳なし』でさえなければ、誰ひとりラビィを放っておきはしないだろう。
道を歩けば人が群がり、視線を巡らせば誰しもラビィに惚れ込むだろう。
『耳なし』という存在について、ラビィにはこんこんと教えてきた。ニンゲンの血が混じったくらいで、差別するのは馬鹿げていると。
……だが、ラビィが『耳なし』で救われているのは俺かもしれない。
ラビィが『耳なし』だからこそ、俺たちはこうしていられるのだから。

きゅ、と、絡めた指に力が籠められた。
小さな鼻を赤くしたラビィが、困ったように眉を下げる。瞳を揺らし、時折きゅっと唇を噛んで、何かを逡巡しているようだ。
もしかして、いやでも、と聞こえてきそうな姿だが、いったい何をいうつもりだろう。
静かに言葉を待っていたら、ラビィがおずおずと俺を見上げた。

「お、……お慕いしていても、良いのですか?」
「ああ」
「このままここに、暮らしていても?」
「そうでないと困るな」
「ぼ、僕が、『耳なし』でもですか? 役立たずで、どんくさくて、ご主人様のお名前を、穢すことしかできなくても……っ」

ぼろぼろと泣き出したラビィには悪いが、言い募る唇を唇で塞ぐ。
興奮を宥めるように舌を絡めて、ついでにナカもかき混ぜてやる。
それだけで言葉を失って、うろたえてきゅうっと縋り付いて―――ラビィのすべてが欲を煽る。
もう発情期は終わったというのに、脳髄が興奮で焼き切れそうだ。

「それ以上言うと、怒るぞ」
「ですがっ、」
「俺はお前を愛している。……何か不満か?」

驚きすぎて固まるとは、おそらくこういうことを言うんだろう。
涙に濡れた目を大きく見開き、瞳いっぱいに俺を映す。俺だけを映すその瞳を見ると、喜びに胸が熱くなる。
数年前のあの日、仄暗く湿った地下室で、俺が手を差し伸べたあの時からずっと。
ただ俺だけをひたむきに見つめ続けるこの生き物を、もっと可愛がってやりたくなる。

不満はないと判断して、ラビィの上に伸し掛かった。華奢な両脚を肩に担ぎ、細い腰を引き寄せる。
途端に深まった結合に、ラビィが弓なりに背を反らせる。
ナカをかき混ぜると悲鳴を上げて、がくがくとその身を震わせる。
話している間もゆっくりとナカをかき混ぜていたから、きっと絶頂が近いんだろう。瞳を虚ろに彷徨わせ、ぁ、ぁ、と小さな喘ぎを漏らす。
繋いだままの手に縋りつき、ぽろぽろと涙の粒をこぼして、ねだるように俺を見つめて。

「孕め、ラビィ」
「あぁっ、ぁ、ごしゅ、……まっ……! すきっ……! すき、です……っ」

ごつんと強く突き上げてやると、ラビィの身体がびくりと跳ねて、剛直をきゅうっと締めつけた。
精を搾り取ろうと襞を動かし、その間もびくびくと絶頂を極める。小ぶりな性器から透明な涙だけをとろとろとこぼし、吐精しないままにイく。
清純な見た目に反した淫靡な姿に、堪らず精をぶちまける。

「ぁ、ぁ、……いっぱい、」

まだ幼い顔立ちを淫猥にとろかして、ラビィがぶるりと身を震わせた。ラビィの全身から悦びがぶわりと匂い立ち、くらくらと思考を奪っていく。
孕めと俺が言うときと、最奥で精をぶちまけるとき。そのときひときわ強まる香りに、悦びにきゅうっと絡みつく襞に、欲がどんどん煽られていく。
いっそラビィが孕むまで、ずっと繋がっていたくなる。

赤く腫れた唇に噛み付き、ちいさな牙を舌先でなぞった。
ぶちまけた精をぐずぐすと塗り込め、ラビィの好きな最奥の襞を、カリでぐりぐりと擦り上げる。
くぐもった悲鳴をひとしきり愉しみ、つんと尖った乳首を摘んで、硬いままの欲望をずるりと抜いてゆるゆると埋め込む。焦れるほどゆっくりとした動きでも、先程イったばかりのせいか、きゅうっと爪先を反らして快感に耐える。

「ラビィ。次はお前が、気持ちいいことだけをしよう」
「…………ぇ……?」
「『耳なし』だとかどうとか、くだらないことを考えられなくなるように」
「っ…………ぁ、あ、ふか、……っ! ふか、ぁ……」
「俺の元から離れようなどと、二度と考えないように」

じりじりと抜いたものを深く突き込み、最奥をぐぷぐぷとかき混ぜた。敏感な襞がきゅうきゅうとカリ首を締め付けて、もっとというように誘(いざな)ってくる。
うろたえてしがみついてくるラビィの心と裏腹に、身体はすっかり俺を受け入れている。
内壁で淫らに雄を締め付けては、ときどきがくがくと身体を震わせ、小さな絶頂を何度も何度も極めている。

毛の生えていない耳を舐めて、そこにやさしく牙を立てた。
それだけできゅうきゅう締まる襞の感触を味わいながら、耳の凹凸に舌を這わせる。ぴちゃぴちゃと唾液の音を響かせて、強い羞恥の香りを愉しむ。
余裕のなかった先程とも、発情期の獣のような交わりとも違い、五感のすべてでラビィを味わう。

牙も、尻尾も、羞恥に赤く染まる肌色の耳も。
ラビィがラビィである証にそっと舌や指先を這わせ、ゆっくりとラビィを可愛がっていく。

「可愛い耳だ」

耳に吹き込むように囁くと、ラビィがぼろりと涙をこぼした。



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