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アルマ
答え
しおりを挟む「言っていいのか分からんが、クオはあなたのことがずっと好きだったんだ。10年近く前からずっとだな。」
「は?」
10年前?そんな昔に俺はヴィーに会っていたのか?全然覚えていないんだが。なぜコスタ王国の貴族の子供であるヴィーがこの国にいるのかも分からなかった。
「まだその頃のクオは子供で、髪も長くて華奢で女の子みたいだった。」
「そうか。」
「髪を短く切って、強くなりたいから仲間にしてくれと言って、随分熱心に鍛えていたんだが、留学期間が終わると一旦国に戻った。」
「留学か。」
「学校を卒業してから、またフォンテの王都に戻ってきて俺らと共にハンターの活動をしていた。」
「そうか。」
「あなたが嫁を探していることを知って、その時は酷い落ち込みようだったが、続々と断られているらしいと聞いてパーティーを抜けて実家に戻って行った。たぶん親に交渉しに行ったんだろうな。あなたの嫁になりたいと。」
「そうだったのか。」
「嫁にしてもらえることになったと、一度手紙をもらって、それからは幸せに暮らしているんだと思っていた。何があった?クオを泣かせるようなことをしたのか?クオを捨てるのか?」
「捨てる気はない。しかし、彼を傷つけたかもしれない。」
「貴族の家庭の中のことは俺らには分からんし、口を出す気はない。しかし、クオには幸せになってほしい。」
「あぁ。分かった。」
幸せに・・・その男が発した言葉は俺の胸にするりと入り込んでカチリと最後のピースが嵌ったような気がした。
いい。俺の嫁は女の子じゃなくていい。ヴィーでいい。いや、ヴィーがいい。
俺はヴィーを笑顔にしたいし幸せにしたいし、ヴィーと共に幸せになりたい。
なんだ、俺もヴィーのことが好きなんじゃないか。
モヤモヤするのも、隣にいなくて寂しいのも、手を繋いで温かい気持ちになるのも、キスをして気持ちいいと思うのも、寝ているうちに無意識に抱きしめてしまうのも、ヴィーが好きだからじゃないか。そう気付いてしまったら、彷徨っていた気持ちは爆発するように熱く燃え上がっていった。
「貴族様に不躾なことを言ってすまなかった。」
「いや、構わない。教えてくれてありがとう。」
酒場に着くと、ヴィーは店の1番奥の席の机に突っ伏していた。
顔を覗き込むと、涙が流れた跡があり、泣いたというのも本当のようだった。俺のせいだな。
距離を置こうと思ったが、突き放すような態度だった。今から考えても酷いことをした。
サラサラの青い髪を撫でるとピクリと動いた。
「アルマ様、何で?」
「迎えにきた。帰るぞ。」
飲みすぎて力の入らないヴィーの体を起こすと、ヴィーを横抱きにした。
少し抵抗をしたが、額にキスしてやると大人しくなった。
店の者には、あの席の代金は辺境伯に請求するよう言って店を出た。
・・・なぜ俺は歩いてきたんだろうか?迎えにいくんだから馬車で来ればよかった。
軽くはないヴィーを横抱きにしたまま歩いていく。
「これは夢かな?」
「は?」
「夢でもいい。アルマ様がまた私に触れてくれるなら。」
そう言って嬉しそうに微笑みながら俺の首に腕を絡めて抱きついてきた。
そんなことをされると、ヴィーのことが好きだと気付いてしまった俺は我慢ができなくなるんだが・・・。
屋敷に連れ帰ると、ヴィーを寝衣に着替えさせベッドに横たえた。
俺が横に寝ると、擦り寄ってきて俺の胸の中に収まった。
決して華奢ではない筋肉質のその体を抱きしめて、髪を撫でた。
「ヴィー、ごめんな。俺も好きだから。一緒に幸せになろう。領地に戻ったら結婚式しような。」
穏やかな顔で眠っているヴィーにそう告げると、俺も目を閉じた。
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