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再会
しおりを挟む落胆したまま、戦後処理を終えて俺は自分の部隊を引き連れて王都へ戻った。
失恋なんて、そう珍しいことではない。きっと時間が解決してくれる。戦場という極限の状態で優しくされたから逆上せ上がっただけかもしれないとも思った。
しかし、テオを失ったことでぽっかりと空いた心の穴が埋まることはなかった。
手掛かりはない。出身地も分からない。あの娼館がそのままどこかの街でやっているのか、それとも解散されて他の娼館にいるのか、それとも男娼を辞めているか。
探すあてもない。
俺はテオのことを何も知らない。
何も手掛かりがないまま時だけが過ぎていく。
遠征に行く度に、街の娼館を回ってみたが、テオの手掛かりは無かった。
もう男娼は辞めたのかもしれない。
普段はスラムのいざこざを処理するのは俺の部隊ではないんだが、その日は他の部隊が出払っており、仕方なく俺が部下を引き連れてスラムに行くことになった。
大したことのない喧嘩だったし、病院へ行かなければならないような怪我をした者もいなかったので、間に入って両者の話を聞いて軽い怪我にはヒールをかけてやって解散してもらった。
スラムなんて初めて入ったな。
崩れかけた家が立ち並び、道端や路地裏で寝ている者もいる。老人や子供もいた。
汚く薄暗い路地裏に、ボロ布をかけて寝ている者がいたが、その髪色がテオに似ていて目が離せなくなった。
俺はその者がどうしても気になって、部下たちには先に戻るよう告げて、その者の元に向かった。
「ちょっと君、」
「は?何の用だ?金も食いもんもねぇぞ。」
振り向いた顔は、窶れてはいるもののテオだった。間違いない。
「テオ!こんなところで何をしている?」
「・・・キース、懐かしいな。僕を買ってくれるのか?それは無いか。キースは僕を抱かないもんな。色んな男に抱かれたような男娼なんか汚くて抱けないか。」
「そんなこと言ったことないだろ。」
「抱かないってことはそうなんだろ。揶揄って遊んでいたのか?僕がいつキースに落ちるかの賭けでもしてたのか?」
「違う。俺は本当にテオが好きで、今でも好きだ。もう一度会いたくてずっと探していた。もし嫌じゃなければ一緒に暮らさないか?今は寮に住んでいるが、すぐに部屋を借りる。それまでは宿に一緒に住もう。」
「は?僕は男娼だ。色んな男を相手してきた。今はスラムで落ちぶれている。そんな奴を騎士様がなんで構うんだよ。何が目的だ?」
「・・・娼館にいた時と全然違うんだな。こっちが本当のテオなのか?そうだとしても俺がテオに救われたのは本当のことで、俺はテオを好きでいることを止められない。
テオ、好きです。俺の恋人になって下さい。」
「あんた戦争で頭がおかしくなったか?」
「どうしたらいい?どうしたら分かってくれる?とにかくこんなところにテオを置いておけない。住むところだけでも用意させてほしい。」
「目的が分からないが、住むところをくれるのか?僕は何も返せないよ。僕にはこの体しかない。」
「何も要らない。できれば俺のことを好きになってほしいが、そんなに多くは望まない。ただテオには健やかに生きてほしい。
いや、やっぱり、俺のことを好きになってほしい。今すぐでなくていいから、いつか・・・。そして恋人に・・・。」
俺はすぐに宿を取った。
部屋も探し始めた。
一緒に住むなら、やはりテオの意見も聞きたいと思い、次の休みに一緒に探しに行こうと思ってワクワクした。
「テオ、仕事が終わったらすぐに戻るから、一緒に夕食を食べに行こう。」
「分かった。」
宿に一人で残しておくのは心配だったが、騎士団に連れて行くわけにはいかないから仕方ない。
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