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2人の関係
しおりを挟むしかし、そんな時間は長くは続かなかった。
「キース、僕はやっぱり男娼としてしか生きていけないのかもしれない。」
帰宅してテオの様子がおかしいことに気付いて問い詰めてみると、そんな答えが返ってきた。
何があったのかなかなか話したがらなかったが、ベッドに横になって抱きしめて髪を撫でていると、ポツリポツリと話し始めた。
昼の忙しい時間が落ち着いた頃に雇い主である食堂の店主に呼ばれて部屋に行くと、体の関係を迫られたのだとか。しかしテオはそんなつもりがないので断ると、男娼のくせにと暴言を吐かれ解雇されることになったと言った。
「そんなふざけた食堂なんかで働かなくていい。」
「うん・・・。」
「テオ、無理して働かなくていいんだ。俺が稼ぐから金の心配はしなくていい。」
「でも、僕はキースに何もしてあげられない。僕にはこの体しかないのに、キースは抱いてもくれない。」
「そんなこと気にしなくていい。俺がテオを守りたいだけだ。」
「お願いキース、僕のこと抱いてよ。それとも本当は嫌なの?」
「そんなことはない。嫌なわけない。」
「じゃあ、抱いてよ・・・。」
泣きそうな顔で俺に縋り付いてくるテオをこのままにしてはおけないと思った。
いや、それは言い訳かもしれない。
「俺がテオのこと抱いたら、テオはここにずっといてくれるか?」
「うん。ずっとここにいる。」
「分かった。俺はテオも知っている通り経験がないから下手かもしれない。下手すぎて引かないで欲しいんだが。」
「ぶはっ、もう、なんなのキース。結構真面目な感じで話してるのにさ、笑わせないでよ。」
「俺はいたって真面目に話をしてるんだが・・・。」
「真面目な顔してそんなこと言われたら余計笑えるし。なんか落ち込んでたのがバカみたいに思えてきた。」
張り詰めた雰囲気が一気に霧散して、可笑しそうに俺を見つめるテオをギュッと抱きしめた。
「テオ、好きだよ。大好きだよ。」
「うん、知ってる。」
「そうだ、俺に気を遣って演技なんてしないでほしい。これは仕事じゃないんだから。」
「え?あ、うん。なんでそう思ったの?」
「宿でその、テオが仕事しているのを見てしまった時に演技なのかと思って。」
「演技だよ。よく分かったね。分かった、演技はしない。それでいい?」
「あぁ。」
俺はテオと初めて、触れるだけではないキスをした。
テオが俺に覆い被さって唇の隙間から舌を滑り込ませてくると、俺は舌をどこにやったらいいのか分からなくて舌を一生懸命引っ込めていた。
すると、テオの舌が俺の口の中のいたる所を舐め回して、いつ息をしたらいいのかも分からなくてずっと息を止めていた。
テオの舌に触れられるのが気持ちよくて、これは触れるだけのキスとは全然違うのだと初めて知った。
「は、、ぁ、、はぁ、、、ん、、、、」
気持ちよくて少し声が漏れてしまったけど、その声が気持ち悪いと思われていないかが心配になった。
そしてずっと息を止めていたから、段々と苦しくなってきて、テオをグイッと引き離した。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、、、
「え?もしかしてキースずっと息止めてたの?」
「あぁ。」
「何それ可愛い。しかもなんかちょっと甘い吐息が漏れちゃうの可愛かったよ。」
「そ、そうか・・・気持ち悪くなかったか?」
「うん。可愛かった。ってキース顔真っ赤だけど大丈夫?」
「恥ずかしいから見ないでくれ。」
俺は咄嗟に両手で顔を覆った。可愛いなんて初めて言われた。
そんなこと言われたら恥ずかしいに決まっている。
「ヤバイ。キースのこの反応は予想外だった。そんなに可愛い反応されると僕がキースのこと抱きたくなっちゃうんだけど。」
「それでもいい。俺、上手くできるか自信ないし。下手すぎてテオに嫌われたくない。」
「んーでもそれだと僕も経験ないから、やっぱりキースに抱いて欲しいかな。
僕なら別に何しても耐えられるし。とりあえず脱がすね。」
「あぁ、分かった。」
やはり慣れているんだな。テオは俺がどうしようか迷っている間に俺の服を脱がせて自分の服も脱いでいた。
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