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9.お家に帰ろう(misaki視点)
しおりを挟む「ごめんね、みさき。僕の体、痩せてるし手術の跡もあるし、見苦しいよね。色気もない。」
「細すぎて心配になるが、見苦しくなんかない。綺麗で愛しい。
でもやっぱり心配だから、次はあと10キロ太ったらな。」
「うん。頑張って太る。」
朝になると俺たちは手を繋いで病院に戻って退院手続きをした。番になるとこんなに回復するものなんだな。まだ体力も筋力も無いから支えながらゆっくり歩いてはいるが、朝には歩けるまでに回復していた。
悔しそうな顔の高村先生だっけ?の顔を見て、ユキは言った。
「番は愛する人となるものですよ。クランケはドラッグのおもちゃじゃありません。」
俺はユキと二人でゆっくり電車で帰ることにした。
「ユキ、一気にそんなに食べたら苦しくなるんじゃないか?」
「いいの。たくさん食べないと太れないし。」
「ユキ、そんなに俺に抱かれたいの?」
「うん。抱かれたい。」
「そ、そうか。」
ちょっと揶揄ったつもりが、何の躊躇もなく抱かれたいなんて言われて俺の方が動揺してしまった。
ユキは毎日楽しそうだ。ずっと病気で入退院を繰り返し、生活も制限されていたのだとか。少し走るだけで、太陽の下を歩いたり雨の日に外に出るだけで、子供みたいに楽しそうだ。
まだ細い体で土木のバイトを見つけてきた時はさすがに止めたが、健康な体が嬉しくて仕方ないみたいだ。
「ユキ、こいつって……」
「あ、高村先生だね。なんか、やっぱりって感じ。」
テレビに映し出されたニュース番組にはユキを治療をせず苦しめた医者が逮捕されたと映し出されていた。
クランケやノーマルを複数家に監禁して、病院で無理やり自分の血を飲まそうとしたとか。
うん、もう犯罪だよな。
いくらドラッグが貴重であっても、犯罪者まで優遇されることはないってことだ。
どこから情報を得たのか、俺の元には何度も医療関係者が連絡をしてきたが、それは全部社長が対応してくれた。
「misakiまだだめ?もうあの時から8キロ増えたよ。あと2キロはオマケして?」
「仕方ないなー」
仕方ないなーと言いつつ、細くて折れそうだったユキが肉も筋肉もついて色香を放ち始めて、俺も限界だった。
好きなんだから愛してるんだから、抱きたいんだ。キスは毎日しているが、キスだけじゃ足りない。
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