上 下
22 / 56
第3章 幼女、王都へ行く

幼女、自分と助手の銅像を見る

しおりを挟む
ラーオンを出発してから3日目。
ダラからさらにもう1つの宿場町を経由し、私たちはとうとう王都に到着した。
やはり国の中心なだけあって、他のどこよりも人が多く活気にあふれている。

「まずは『賢者たちの広場』に行こうか」

イリナは何度もここへ来たことがあるようで、人ごみの中をすいすいと進んでいく。
私とリリスもはぐれないように2人で手を繋ぎながら、イリナの背中を追った。

「ここだよ。ミリアにはぜひ見てもらいたくて」

イリナが足を止めた広場には、中央に目立つ形で1体の銅像が置かれている。
そしてその後ろでは、半円状に取り囲むようにして7体の銅像が並んでいた。

「おおっ、私だ」

中央にそびえ立つ凛々しい女性の銅像は、まさしく2000年前の私の姿。
台座にも「大賢者リスターニャ像」と彫られている。
うーん、ボディラインの再現も完璧だな。
どこの変態がこんなにスリーサイズまで精密な銅像を造ったんだろうか。

「懐かしいねー。私、ミリアがこの姿になったのを見て記憶を取り戻したんだよ」

リリスが私の銅像を見上げながら言う。
そういえばあの時、遺跡の屋上でそんなことを言っていたな。
私が【外形擬態】を使ったことで、リリスの記憶が戻り作戦を成功させられたんだ。

後ろに並ぶ助手たちの銅像もよくできている。
左からダノン、ユーゲル、メリュン、ニノ、アビラス、バゼン、ルーガティウス。
いや、やっぱりルーガティウスだけ美化されているか。

「この7人が、ミリアの部下だった人間たち?」

「そうだよ。そういえば、リリスは誰とも会ってないもんね」

私は順々に助手たちを紹介していった。
もちろん、ルーガティウスが本当はどんな顔か教えることも忘れない。

「コイツらがいなかったら、大賢者リスターニャは存在しなかったよ。この7人のおかげで、リスターニャ、そして今の私がいる」

「じゃあ、彼らがいなかったらミリアが【森精回帰】を開発することは……」

「なかったと思う。そもそも、私がアレイアと出会うこともなかっただろうね」

リリスは私の像の前に立つと、私、そして後ろの七賢人たち一人ひとりと目を合わせた。
そして頭を下げる。

「ありがとうございます」

少し震えた声で、リリスはそう呟いた。

どうだ、私の助手たち。
2000年の時を経ても、お前たちに尊敬と感謝を示す人がたくさんいる。
サイマンしかり、ダラの人々しかり、そしてリリスしかり。

私が心の中で語りかけると、7人の銅像の顔が少しだけ微笑んだ気がした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:6,054

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:584

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:3,013

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,212pt お気に入り:92

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。