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第4章 幼女、孤児院に恩返しする

幼女、地震の原因を突き止める

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「えっと……あなた方が冒険者協会から派遣された方たち……?」

 てくてくと村へ入ってきた私たちを見て、村長はきょとんと棒立ちになった。
 かなり若い女性の村長だ。

「びっくりすると思うけど、私たちが派遣された冒険者だよ。冒険者カードもこの通り」

「え、ええ。確かに」

 私たちが冒険者カードを見せると、村長はぎこちないながらも頷いた。
 まあ、これまでにないほど地震が頻発しているというのに、派遣されたのがちびっこ2人では不安にもなるよね。

「大丈夫だよ。実力に関してはちゃんと保証があるから」

 リリスが村長へ紙を手渡す。
 そこには、私たちが盗賊討伐で大きく貢献したことが、冒険者協会の公式の判とともに記されている。
 万が一にも信じてもらえなかった時のことを考えて、ララが持たせてくれたものだ。

「確かに冒険者協会公式のものですね。改めまして村長のヘミリナです。どうぞよろしくお願いします」

「ミリアです」

「リリアだよー。よろしくー」

「立ち話ではアレですから、どうぞ私の家へいらしてください」

 ヘミリナの案内で彼女の家へと向かう。
 3人が席に着くなり、ヘミリナが口を開く。

「すでにお聞きの通り、最近この辺りで地震が頻発しています」

「頻発って1日にどれくらい?」

「少しお待ちください」

 ヘミリナは、立ち上がって本棚から紙の束を取り出す。
 リリスをそれを受け取ると、ぺらぺらめくり始めた。
 どうやら地震が起きた日時の記録みたいだ。

「最低1回、多い日だと3回以上。うわ、この日は6回も起きてる」

「地震が最初に起きたのは、確か2か月ほど前です。その時は特に気に留めなかったのですが、何度も起きるうちに不自然に感じて、2週間目くらいから記録を取り始めました」

「なるほど……」

 リリスの横から私も資料を覗き込む。
 日によって回数や時間帯はばらばら。
 揺れの大きさにもかなり差がある。

「冒険者の方には一度来ていただいたんですが、全く原因は分からずじまいで……」

「らしいね。リリス、どう思う?」

「これだけでは何とも言えないかなぁ。自然現象なのか、人間、あるいは他の生物の活動が影響しているのか。何にせよ、地中に何かあるってのは間違いなさそうだけど」

 私もリリスと同意見だ。
 地中に何かあるのは間違いない。
 だけど何があるかまでは、現時点で判断できない。
 まあ、それを調べるのが私たちの仕事なんだけど。

 ふと、グゴゴゴゴゴというこもった地響きが聞こえてきた。

「地震が来ます!」

 ヘミリナが叫んだ直後、突き上げるような揺れが村を襲う。
 村の南から北へと、縦に激しくうねるような揺れだ。
 十数秒後、揺れが収まり地響きも聞こえなくなった。

「いやー、なかなか大きな揺れだったね」

 地面に這いつくばっていてリリスが、立ち上がって服のほこりを払う。
 確かにかなり大きめの揺れだった。揺れ方も特徴的だし。

「今のは大きい方の地震でしたね。ここ1週間では最大かもしれないです」

 うーん、こんな揺れが1日1回、時には3回も4回も来るとなれば、村人の生活は大変だな。
 ただ私自身、この揺れ方には少し心当たりがある。
 リリスの方を見ると、彼女も何かを察したような表情をしていた。
 さて、この仮説を確信に変えるためには……

「ヘミリナ、この辺りにあまり人の通らないだだっ広い場所ってない?」

「村から南へ少し行ったところに、平原があります。道があるわけでもないので、その平原へ行く人はほとんどいませんね」

「南側か。ちょうどいいね、そこにしよう。案内をお願いできる?」

「分かりました」

 ヘミリナは不思議そうな顔をしながら、私とリリスを連れて村を出る。
 南の方角へしばらく道のない原っぱを歩き続けると、初めはまばらにいた人もいなくなり、すっかり私たちだけになった。

「ミリア、この辺でいいんじゃない?」

「そうだね。ヘミリナ、ありがとう」

「これくらいお安いご用ですけど……。ここに何かあるんですか?」

「私の予想が正しければ、地震を起こしている主がここを通るはずなんだ」

「ぬ、主?」

「そう、主。わお、何てタイミング。早速お出ましだね」

 再びグゴゴゴゴゴという音が遠くから響き始める。
 不安そうなヘミリナに対し、リリスが声を掛けた。

「だいじょーぶだいじょーぶ。ミリアがいれば、たいていのことは何とかなるから」

「は、はい……」

「ミリア、私は喋れないからね?交渉は任せた」

「はいはい。じゃあリリスはヘミリナをよろしく」

「任されたー」

 のんきに敬礼してみせるリリス。
 対してヘミリナはおどおどしてしまっている。

「あの、交渉というのは……?」

「ミリアが今から交渉してくれるんだよ。例の主に、地震を起こさないでくださいって」

「そんなことが可能なんですか?」

「私は無理だよ。ヘミリナにも無理。多分、この辺りで主と交渉できるのはミリアだけじゃないかな」

「ミリアっていったい何者……?」

 ヘミリナの視線が私へ向いたその時、地響きがより大きくなる。
 主が近いな。

「見てて、ヘミリナ。ミリアが今から主を呼ぶから」

「その主って……?」

 2人が注目するなか、私は何もない平原で大声を上げた。

「シバンシュガルデアーラ、アデリケエレーセ!」

「な、何て?」

「今ミリアが叫んだのは竜族の言葉。たいていの竜は人語を解すけど、念のためにね」

「りゅ、竜族の言葉?ということは主って……」

「「そう、竜だよ」」

 私とリリスの声が重なる。
 その瞬間、轟音と共に地中から緑色の巨竜が飛び出してきた。
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