超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

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第63話 心配性のオリヴィア

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「ぶひ、この町に居る間は、自由にお屋敷を使っていただいて構いませんわ」

 ドレースさんは、僕とオリヴィアにそう言って頭を下げた。

「あの……もしかしてその間って、僕とオリヴィアは一緒の部屋で寝るの……?」
「はい。……その、リーン様達が手を出してしまった方々を全員メイドとして雇用したので、もう部屋に空きがなくて……」
「そ、そうなんだ……」

 魔族の人がすることは色々とすごいな……。

「大変ですね……ドレース……」
「ぶひぃ……そうなんですわ……! リーン様達は、お気に入りの娘《こ》が大勢居るこの別荘を気に入ってしまって、もう国には帰らないとおっしゃるんです!」

 あれ? それって家出なのでは……? 僕達に構っている場合ではなさそうだ。

「と、とにかく、無理はしないでくださいねドレース」
「ぶひ……分かっていますわ。ありがとう、オリヴィア」

 疲れきった様子のドレースさん。こんなにおっきい人でも手に負えないなんて……やはり、あの三姉妹は侮れない相手のようだ。

 僕が感じた気配の正体って……もしかしてあの人達……?

 いずれにせよ、この屋敷にいる間は、妹達の周辺で怪しい動きがないか気にかけておかないといけない。

 ……本当は誰かに相談したいけど……まだこの屋敷に悪い奴が居るという確証を何も得られていないし、無駄に不安を煽るのは良くないだろう。

 それに、闇魔法を見られたらまずいし、原因を処理するなら僕一人で行動した方がいい。

 ……何か大きな騒ぎが起きる前に、僕がなんとかするのだ。

「アニ様」
「ふぇ?」
「誰にも見られていない時はこう呼んでも構いませんよね? 
「う、うん。そうだね」
「ところで……少しぼーっとしているようですが、大丈夫ですか? 疲れているのであれば、ちゃんとベッドで休んでくださいね」
「ぼ、僕は大丈夫だよ!」

 考え込んでいたら、オリヴィアに心配されてしまった。

「本当ですか? 少し熱があるのでは?」

 そう言って頭をくっ付けてくるオリヴィア。僕は、急激に自分の顔が熱くなっていくのを感じた。

「熱い……! やはり無理をしていたのですね!」
「だだだだいじょぶだからっ!」
「大丈夫ではありません! まったく……アニ様はいつもそうです。頑張りすぎなんです。しばらくは安静に過ごしてください!」

 オリヴィアは、眉を吊り上げて怒る。

「それを言うなら、オリヴィアの方こそ休むべきでしょ? 一回倒れちゃったんだから」
「私のことは関係ありません! とにかく、アニ様には安静にしていてもらいますからね!」
「ひゃあっ?!」

 僕は突然オリヴィアに抱きかかえられ、ベッドの方へ運んでいかれた。

「ぶひぃ、邪魔になるといけないので私はこの辺で失礼させていただきますわ。何かあったら呼んでくださいまし」
「そんな……待ってドレースさん! 助けてっ!」
「アニ様。お姉ちゃんの言うことは聞いておいた方がいいですよ!」

 ドレースさんはにっこりと笑った後、部屋から出て行った。

 僕はいつもの心配性を発動させたオリヴィアと二人きりになってしまったのである。

「おやすみなさい、アニ様。夕食の時間になったら起こしますね」
「まだ眠くないよ……」
「風邪はひき始めが勝負なんです。早期に決着をつけなくてはいけません!」
「うぅ…………」

 風邪なんかひいてないんだけどな……。

 それに屋敷の内部を調査したいし、こんな所で立ち止まっている場合ではない。

 何とかして、ここから抜け出す方法はないだろうか?

 作戦を練っていると、オリヴィアがうとうとしていることに気付いた。

「……オリヴィア」
「ふぁいっ! ね、寝てませんよ!」
「一つ……お願いしてもいいかな……?」
「何でも言ってください! アニ様の為なら、どんなことだってしますよ!」
「前みたいに……隣で寝て欲しいんだ……」
「隣で?!?!」
「駄目かな…………?」
「そ、そんなことはありませんよ! 一度やったしまった以上、もう引き返せません! アニ様が求める限り私は何度だって隣で眠ります!」

 オリヴィアはそう言って覚悟を決めた後、僕のベッドの中へ潜り込んできた。

 なんでだろう、罪悪感がすごい。

 ――けど、我ながら良い案を考えついたと思う。

「……私の顔に何かついていますか、アニ様?」
「ううん、何でもないよ。オリヴィアも一緒に寝ようね!」

 オリヴィアを先に寝かしつければ良いのだ。
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