転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

文字の大きさ
29 / 117

外伝3 新たなる経験値

しおりを挟む

「ンーっ! ンーっ!」

 少女は、頭に袋を被せられた状態で地面に転がされていた。

 哀れな少女の周りを、二人の怪しげな人間が取り囲んでいる。

「……もう良いぞトワイライト。取ってやれ」

 黒衣を身に纏った男が隣に居るシスターに向かって言った。

「……ッたく、なんでアタシがガキのお守りなんてしなきゃなンねェーんだよクソッ!」

 聖職者としてあるまじき悪態をつきながら、シスター――通称黄昏トワイライトは、少女が被っていた袋を引き剥がす。

 すると、茶色い髪を後ろで一つに結んだ少女の素顔が露わになった。

「んーッ! んんんーッ!」
「……目隠しと口かせもだ。外せ」

 男は続けて指示を出す。

「チッ、めんどくせェなァ!」

 トワイライトは、乱暴な手つきでそれらを解いた。

「んぐっ、けほっ、けほっ! ……あんた達……一体何なのよ! わたしにこんなことしてただで済むと思ってるのッ?!」

 言いながら二人のことを睨み付ける少女。しかし、その目には涙が浮かんでいた。

「こいつは驚いた。随分と気の強え嬢ちゃんだ。昔のお前みたいだな、トワ――」
「うぜェ。黙ってろノックス」

 トワイライトは、男――通称暗夜ノックスの股座を蹴り上げた後、少女に近づき髪を引っ掴む。

「な、何よ! 言っておくけどわたしのパパは――」

 そして、思い切り顔を殴り付けた。鈍い音が鳴り響き、地面に血が飛び散る。

「ぇ…………?」
「うっせえンだよッ!」

 鼻血を出している少女の首元に、短剣の刃先が押し当てられた。

「ひ…………っ!」

 一筋の血が流れ落ち、さらに地面を汚す。

「ぁ……ぃや…………!」
「泣き喚いたら今すぐその首掻っ切って大好きなパパの隣でおねんねさせてやるよ。それが嫌だったら大人しくしてやがれッ!」
「…………ぁ!」

 少女は、痛みと恐怖で何も話せなくなっていた。

「……待て、そこまでだ……クソアマ」

 暴走するトワイライトを止めたのは、痛みから立ち直ったノックスである。

「……ンだよクソッ!」
「もう俺達の目的を忘れたのか? 身代金を受け取る前に人質を殺してどうする。クールに行こうぜ兄妹《きょうだい》」
「……テメェの妹《シスター》になった覚えはねェぞ。気持ち悪りぃこと言うな」

 女は腹立たしげにノックスのことを払い除ける。

「と、いうわけだ。悪かったな嬢ちゃん。――だが、大人しく俺達に協力してくれりゃ無事…………かどうかは分からねぇが、生かしたままパパのところに帰してやる」
「ひっ……ひっ、ひぐっ……」
「…………おい、やりすぎだ。テメェの奇跡で治療してやれ」

 そう言われたトワイライトは舌打ちをした後、少女の傷を治し始めるのだった。

「あーあ! せっかく綺麗だったのに治してしまうのかい?」

 するとその時、そんな声と共に白衣姿の青年が現れる。

「……どこに行ってやがったホワイト」

 通称白夜ホワイト、二人の仲間である。

「見回りをしていただけさ。大事なことだろう?」
「こんな場所に人なんか来やしねェよ。勝手な行動は慎んでくれ」
「そうかい? それは悪かったね」

 ホワイトはあっけらかんとして答えた。

「――そんな事よりトワイライト。その子の傷を治しちゃうなんてもったいないよ!」
「……あ? アタシだって好きでやってるワケじゃねェんだよ。殺すぞ」

 そう答える女だったが、青年は止まらない。

「僕はね、その子の天使みたいに白い肌には、生命力溢れるとびきり鮮やかな赤が似合うと思うんだ。せっかく美しく生まれたのに、綺麗にお化粧しないだなんて罪だよ。……トワイライト、君もそう思うだろう?」
「――死ね」
「酷いなぁ。死んでしまったら命は輝かないよ。何でもすぐ死んだり殺したりしようとする奴には美学がないね」

 そう言いながら大きめのナイフを取り出し、ゆっくりと少女へ近づいていくホワイト。

「い、いやぁ…………!」
「怖がらないで。殺しはしないさ。見違えるくらい綺麗にしてあげる……!」

 その時、ノックスが背後から飛びかかりホワイトのことを取り押さえる。

「クソ……まったく嫌になるぜ。どうして俺はこんなクソどもと組んでるんだろうな」

 そして、うんざりした様子で呟くのだった。

 *

 盗賊団の首領『ノックス』
 常夜《ニクス》を始めとする様々な盗賊団を統べる裏の存在であり、その出自は謎に包まれている。

 白衣の殺し屋『ホワイト』
 凄腕の殺し屋でありながら人を殺す事を好まず、生かしたまま出来る限り多くの血を流させることに心血を注ぐ異常者。

 慈悲なきシスター『トワイライト』
 拷問のスペシャリストであり、相手が殺して欲しいと懇願するようになるまで何度も奇跡の力で治療し、苦痛を与え続ける。

 ――『レジェンド・オブ・アレス』モンスター図鑑より引用。


 彼ら三人は、ゲーム本編開始時に史上最悪の犯罪者として各国から指名手配されている賞金首達だ。

 決まった拠点を持たないが、現在は『メラス地下坑道跡』を中心に活動している。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...